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椅子の聖地巡礼"東川町 せんとぴゅあ 織田コレクション展"

織田コレクションを見ずして椅子は語れない。

昨年開催されたフィンユールの東京での展示会では、織田コレクションからの貸し出しが多くあったり、私の愛読書「美しい椅子」にも織田さんが登場する。
いつか行きたいと思っていた、東川町の椅子の聖地巡礼を実現することができた。
織田コレクションは、椅子研究家で東海大学名誉教授の織田憲嗣氏が長年かけて収集、研究してきた近代家具や日用品群。椅子や照明、食器やカトラリー、図面や文献など近代デザイン史の変遷を辿る上で極めて貴重な資料だ。織田氏が30年前に東川町へ移住して以降町が支援し続け、2017年には東川町によって公有化され保全がなされている。
国内の家具展示会はもちろん、海外の展示会にもこの織田コレクションが貸し出されるという。いかにこれらが希少で世界中から注目を集めているかがわかる。

せんとぴゅあ外観

この織田コレクションが多く展示されているのが東川町にある「せんとぴゅあⅠ・Ⅱ」だ。ここは旧東川小学校校舎を活用した交流施設で、家具デザイン史の他写真文化等発信する場所でもある。

施設内は図書館も併設され、その一角に無防備にも名作からレア物まで椅子のコレクションが展示されている。旧校舎側にはギャラリーがあり、家具以外の食器や図面、道具なども展示されている。

せんとぴゅあ内展示
artekの家具
家具設計の再現

展示されているものは収集郡の一部だが、織田氏の近代デザインへの飽くなき探究心、執念を感じる。取り組みが評価され、ハンス・J・ウェグナー賞を受賞している。
正直ここまで収集するのにどれだけ投資したのかその資金があったのか不思議に思ったが、彼は若い頃からフィンユールなどと交流があり、まだ生前の家具の価値が上がる前に現地で安く調達してきたという。
そのコレクションの中には珍しいものや久々再会できるものもあった。


1.国内で見られる珍しいウィーンの椅子

ジッツマシーネ
ウィーン郵便貯金局の椅子

学生時代ウィーンに短期留学していたこともあり、ウィーンが大好きだ。音楽はもちろん、建築や絵画など西洋に東洋文化が溶け合い独特の世界観がある。
ジッツマシーネは「座るための機械」という意味。ヨーゼフホフマンがウィーンの療養施設のためにデザインしたもので、真っ直ぐな座面に対して、背板の傾きを両サイドにある丸い突起に合わせて変えられる仕組みだ。
そしてウィーンの建築といえばオットーワーグナーのウィーン郵便貯金局。天井のラウンドしたガラス屋根が特徴的だ。そこで使うためにデザインされた椅子。アームの表面や足元には真鍮が施され、黒との組み合わせがいかにもウィーンらしく再会に感動した。

2.家具デザインや素材への探究心

マグリッタ
右:ウームチェア

好きな画家トップ3に入るルネ・マグリット。彼の有名な青リンゴをスツール化したのが、ロベルト・セバスチャン・マッタだ。座り心地はそこまで重視されてなさそうだが、造形としての椅子だ。
また椅子は木や金属に代わりポリプロピレンなどの台頭により一体成形が可能となりデザインの自由度が一気に加速した。張り地も伸縮性があり身体の動きに追従し機能も高まってきた。

3.多彩なジャンルで近代デザイン史を読み解く

イッタラ バードシリーズ
ステーショナリー

織田コレクションは椅子を始めとした家具類の印象が強いが、それ以外の物がここまで幅広く逸品揃いなのは東川町に来るまで知り得なかった。
グラスやお皿で有名なフィンランドの食器ブランド、イッタラで、アーティストのオイバ・トイッカによるガラスオブジェのバードシリーズ。全てが手吹工法により精巧に作られている。美しい鳥の造形と鮮やかな色彩はいつかは自宅のインテリアに取り入れたい逸品だ。

ディズニーリゾートとUSJとジブリとハリーポッターと一気に制覇した感じの充足感。
建築から家具へ、また食器など身の回りのものまで、デザインと機能が世界中のデザイナーにより鍛錬され、影響し合いながら発展を遂げてきたその経緯がコレクションを通じて理解することができた。同時に織田氏の近代デザイン史の研究において世界中から評価、信頼されている所以もよくわかる展示だった。

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