短編小説08「空っぽドラマチック」

 集合場所は決まっていない。いや、集合時間もほんとうは決まっていない。そうゆう時がたまにある。私の頭は空っぽなのである。なにも考えてないときに見る空は綺麗で見惚れていた。しかし本当のことを言うと彼女に今から告白するのである。
面と向かって言うのは恥ずかしいし、冗談にならないと困ってしまう、恋愛を言葉にするには還元率が悪い。
 たぶんこのビルの前で集合したはずなのだが、いくら待っても彼女は姿を現さない。たぶん、見透かされてしまった。ボーッとしてる。雲が淡い空と思えば、グラデーションの様な繊細な色彩を私に教えてくる。たぶんもう夕方なのだ。洗濯物が部屋に取り込まれていく。子供が走って家路を急いでいる。

 ビルはテトリスみたいに正しい不規則性を保ちながら灯りが少しずつ消えていった。あたりは真っ暗。
近くのものが見えずらいけど、ずっとここに座っていたおかげで、目を瞑っていてもわかるような気がする。少し眠い。

 足音が聞こえて、目が覚めた。
「ごめんね。たぶん反対側の椅子に座ってたの」

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