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厳しく叱りたいとき、「強い言葉」は却って逆効果になります
人を育てるうえで「叱る」は非常に重要です。
ただし、「叱る」ことの目的はあくまで行動変容であり、相手が不適切な行動を取ってしまったときに「この行動は不適切だったので、次は行動を改めよう」と思っていただくことが叱ることの本質です。
ところが世の中には相手を凹ますだけで行動変容には全くつながっていない「叱る」が多く存在しています。(そもそも「叱る」ではなく「怒りをぶつける」だけとも言えます)
例えばこんな事例です。
部下がうっかりミスで重要な書類をお客様に送付するのを忘れてしまい、お客様から苦情が入ってしまった。しかもこの部下は過去にも同じようなミスを犯していた。
上司「何で送付するのを忘れた!」
部下「申し訳ございません…」
上司「この書類がないとお客様は困ってしまうんだ!わかっているのか!」
部下「はい、もちろんわかっています…」
上司「前回も忘れただろう!何度言ったらわかるんだ!」
部下「本当に申し訳ございません…、以後気をつけます」
さて、この「叱る」で部下の行動が改善されるかというと、残念ながら「改善されない」と言わざるを得ません。
というのも、叱っているときの上司の頭の中は「これだけ強い言葉で言えば、いくら何でも自分がやらかしたことの重大さに気づくだろう」と思っていますが、部下は反省している態度は見せても心の中では「この場が早く終わってほしいから反省の態度を見せよう」と思っているからです。
本来は部下には「なぜミスをしたのか」に目を向けてほしいのですが、強い言葉を使ってしまうと部下は「自分が責められている」と感じてしまい、むしろこの状態から早く逃れようと考えてしまうため、自分の行動には目が向かなくなります。
だからこそ、「強い言葉」は却って逆効果になるのです。
もし厳しく叱る必要がある場合、むしろ丁寧な言葉を使いながら相手には徹底的に自分の行動に目を向けていただいたほうが効果的です。
上記の例を言い換えるとこんな感じです。
(まずは相手の行動についての事実を確認する)
上司「お客様に送付するこの資料だけど、約束した期日までには送っていないよね?」
部下「すみません、完全に忘れていました」
(相手が自分自身の行動をどう認識しているか確認する)
上司「期日までにこの書類が届かないことで、お客様にどのような影響があると思いますか?」
部下「うーん、お客様も手続きが遅れてしまいますよね…」
(どうすれば改善できるか一緒に考える)
上司「このようなミスを防ぐためには何をすればよかったのですか?」
部下「さあ、もうちょっと気をつけることですかね」
上司「気をつけるためには何が出来そうですか?」
部下「今まではやるべきことをスケジュール表に書いていなかったけど、これからは必ずスケジュール表に書き込みます」
「叱る」で最も重要なことは「行動を改めること」ですので、相手が反省の態度を見せて「申し訳ございません」と言うよりも、ヘラヘラした態度でもいいので「次は○○をします」という具体的な行動を確約してくれることが大事です。
相手の取った行動が不適切であればあるほど、むしろこのように相手の「人」を一切責めず、やった「事」だけを徹底的に目を向けてもらうことが本当の意味での「厳しい叱り方」になります。
とはいえ、相手が酷いことをやらかしてしまうとどうしてもより「強い言葉」を使いたくなるのが人情です。
ただいくら「強い言葉」を使っても相手の行動が変わらなければそれは「叱る」ではなくただの自己満足になってしまいますので、やっぱり人を育てる立場の人は気をつけたほうが良いかもしれません。
今回もお読みいただきありがとうございました。
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