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人生初、父親とサシで飲んだ。
――きっと僕が父親にできる最大の親孝行は、父親が遺し伝えてくれた才能を僕がいかんなく発揮する、つまりは圧倒的な物語をつくることなので、とにかく創作と向き合おうと思います。
人生は物語。
どうも横山黎です。
今回は「人生初、父親とサシで飲んだ」というテーマで話していこうと思います。
◆父親と昼飲み
前回、僕の父親の話をしました。
簡単にまとめると、僕が小説を書いているのは父親の影響であること、僕も父親も一歩を踏み出せず腹を割って話すことがなかったこと、僕が「言い訳」をつくってサシ飲みに誘ったこと、を物語りました。
さて、今回は「人生初、父親とサシで飲む」という経験を通して、思ったこと、考えたことを話していきます。
東京北区赤羽の昼からやっている飲み屋さんで飲みました。父親は翌日の月曜日は朝から仕事なので、昼間に飲むことになったのです。
店に入り、最初に頼んだのは瓶ビール。父親のグラスに注いでやりました。不思議な感覚でした。ついにこのときが来たんだな、と思いながら僕は父親と乾杯をしました。
とはいえ、何せ初めてなものですから、話の切り出し方に困り、無言の時間が続きました。運ばれてきたつまみをお互いに頬張り、ビールで喉を潤し、を繰り返していました。
沈黙を拓いたのは、僕。
「最近は何を調べているの?」
そう質問したのです。
◆何も語らない背中が遠くて
以前、家族みんなとご飯を食べにいったとき、父親は自分がそのとき興味を持っていた古代史について語りました。邪馬台国がどうとか、神武天皇がどうとか。僕は高校で学んだ乏しい日本史の知識を思い出しながら相槌を打っていましたが、やっぱりちゃんと理解するのには、そして話題に対してコメントするには不十分なものです。
そんなわけで最近の父親は本やらネットやらで情報収集に時間をかけていることを何となく知っていたので、じゃあ、今は何を調べているんだろうという疑問にいたったわけです。
質問した結果、そのあとはずっとお互いにしゃべれていました。
返事の内容をまとめると、以前語ってくれた古代史から派生して、哲学や宗教、宇宙などについて調べているそうです。いろいろと調べた結果、死の世界とはいかなるものか、自分とは何か、愛の正体は……いくつもの疑問に自分なりの答えを出したらしく、それを語ってくれました。
もちろん、僕は語ってくれたことの1割もちゃんと理解することができていないと思うんですが、一つだけめちゃくちゃ共感したことがあります。
どうしてそれを調べているか、その理由です。
父親がなぜ勉強をしているのか、それは自身の作品のためです。
飲みの席の中で、父親が書こうとしている小説について聴かされました。以前ちらっと聞いたことがあったんですが、まさかその作品のために勉強を長く続けているとは思っていませんでした。
詳しい内容は割愛しますが、圧倒的な物語でした。
たとえこれから時代がいくつ変わろうと、いつの世にも響く普遍的で、壮大な物語だと思いました。凄みを語ってといわれたら困りますが、何も言葉が出てこないくらいに心が動かされたのです。
僕は改めて気付かされました。
父親の背中は、遠くにありました。
◆あなたを超える作家になりたい
僕は先日、小説『Message』を出版しました。
成人の日の夜に亡くなった青年が遺した「110」というダイイングメッセージの謎を解き明かすヒューマンミステリーです。
一言でいうと、「成人したことをいい機会に家族に手紙を書く物語」で、それに乗じて家族に感謝や愛情を伝えることもできました。作品の内容も今の自分の全てを出し切った力作だと思っていて、出版も果たしたし、やっとこれで父親と肩を並べられると思ったのです。
でも、実際は違いました。
父親は仕事のかたわら、時間をかけて勉強をして、人生をかけてひとつの物語をつくろうとしています。一度閉じようとした夢を、もう一度、追いかけているのです。
ちなみに、小説『Message』への感想ももらいました。文章については素直に「上手い」と褒めてくれましたが、内容については「手を抜いたな」と言われました。もう少し具体的なことをいうと、ミステリー要素に関してです。
『Message』の肝となるのは、「110」というダイイングメッセージ。このネタに関しては自信があったから、それを殺さないためにも、他のミステリー要素を薄めるべきだと判断しました。ですから、青年の死の真相に関わる謎要素は大したものではないし、壮大なトリックもありません。
くどいようですが、妥協したというより、この物語においてミステリーを追求する必要はないなと判断したのです。しかし、結果的に「妥協」と捉えられてしまう可能性があることは分かってしまうので考えものです。
これくらいの濃度がちょうどいいって人もいるし、薄いと思う人もいるだろうし。
今回の場合、他の人がどう思うかは問題ではなくって、父親がどう思うかが問題なので、これからもっと勉強して、圧倒的な物語をつくって、また読んでもらいたいなあと思いました。
時間は少しかかるかもしれないけれど、きっと僕が父親にできる最大の親孝行は、父親が遺し伝えてくれた才能を僕がいかんなく発揮する、つまりは圧倒的な物語をつくることなので、とにかく創作と向き合おうと思います。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
20220719横山黎
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一緒に再創作してくれた大谷八千代さん!
2冊買ってくれた!
圧倒的な人生に胸を打たれました。
また呑みましょ😁
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