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ついに全く知らない人に手売りできた。

――ターゲットは、マスターあるいは奥の席の彼女。どちらかだけでいい、1冊だけでいい、小説『Message』を手売りすることができれば――。


人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「ついに全く知らない人に手売りできた」というテーマで話していこうと思います。


◆誰とも会う予定がなかった日


先日、僕は小説『Messageを出版しました。

成人の日の夜に亡くなった青年が遺した「110」というダイイングメッセージの謎を解くヒューマンミステリーです。僕の20年分の思いを込めた力作です。現在、全文を無料公開しておりますので、以下の記事を覗いてみてください!あと1週間限定です!


小説『Message』はAmazonで販売しているわけですが、まだ無名の僕の本など見つけられるはずもないので、端から手売りすることを考えていました。最近は毎日、誰かに手売りしています

そのために誰かと飲みにいく予定をつくったり、バイトの子にも声をかけたり、いろいろ試してきました。

なんだかんだ3週間くらい毎日手売りが叶っていたわけですが、昨日、人と会う予定が何もなくて、手売り先が見つかりそうになく頭を抱えていました。まあ、いつかは途切れるものだし、その日をついに迎えたということか……と半ば諦めかけていたんですが、「本当にそれでいいのか?」と自問する自分もいました。


とりあえず、動いてみよう。

動けば、売れるかもしれない。

動いても、売れないかもしれない。

でも、それは動いてみないと分からない。

だから、動こう。


そんな風に腹を決めたのです。結果はタイトルの通り。「全く知らない人に手売りする」という一線を超えることができました。


◆よく行く飲み屋さんにいこう


最近まとまった時間があるときは、近くのガストで数時間長居して創作に励みます。充電できるし、Wi-Fiは使えるし、ドリンクバーで飲み物には困らないし、涼しいし、快適な環境です。

昨日も午後はずっとガストにいました。動画の編集や、noteの記事の執筆、新作の原稿を綴ったり、いろいろやっていたんですが、しかしずっと頭の中にあるのは、「今日の手売りどうしよう」という焦燥感

もちろん、絶対に毎日手売りしなきゃいけないわけではありません。ただ、何となく自分でルールをつくったので、できれば守りたいなあと思ってしまうわけです。それに、手売りの様子を収めた写真をnoteの記事やインスタのストーリーに上げ続けてきたので、その更新が止まってしまうのが寂しい気がするのです。


しかし、こればかりは僕だけの問題ではありません。手売りする相手が必要になるわけです。相手がいなければ、成立しないことなのです。


創作の傍ら、ずっと考えていたんですが、僕が出した結論は、「とりあえずよく行く飲み屋さんを訪ねよう」でした。

「よく行く」とはいえまだ数えるくらいしか行っていませんが、安いし、お酒は美味しいし、インテリアも僕好みだし、めちゃくちゃ好きなお店なんです。マスターも良い人だし。

1人でいけばカウンター席に座ることになるし、厨房にいるマスターとお話することができれば、その流れで本の1冊売れるんじゃないかな、あるいは呑みにきた他のお客さんと仲よくなれれば……そんな希望を手にして、暮れ時、僕はガストを出ました。


◆カウンター席の彼女


恐る恐るお店の中へ入ると、マスターが案内してくれました。案の定、カウンター席。しかし、予想外にももう一人、カウンター席にお客さんがいたのです。奥の席で、同じ大学生と思われる女性が一人で飲んでいました。

カウンター席は3つしかありません。僕は彼女と一人分の席を隔てて、腰を下ろしました。これまでは誰かと一緒に来たことしかなかったので、カウンター席に座るのは初めてのことでした。


この時点で僕の戦いは始まっていたのです。ターゲットは、マスターあるいは奥の席の彼女。どちらかだけでいい、1冊だけでいい、小説『Message』を手売りすることができれば――。


こんな風に戦略家かのように書いていますが、少なからず緊張していて、コミュニケーションを取ろうにもなかなか上手くいかなかったのが現実です(笑)

しかし、マスターは気さくに話しかけてくれますし、飲み屋さんはお酒という共通話題があるのでお酒の話などをして、徐々に空気が温まってきました。

そんな中、沈黙が訪れたとき、彼女が卓上に置いていた1冊の本を手に取り、開いたのです。「隙間時間に本を開く人は、本当に本が好きな人である」という持論があるので、僕の口元は緩みました。


これはいける(笑)


ってなわけで、「本、お好きなんですか?」と質問を投げかけました。読書の話題から、どうにか僕が本を書く人であることを伝えました。

そしたらなんと、その話にマスターが食いついてきてくれて、掘り下げてくれました。どうやら若い頃、マスターも創作に携わっていたらしいのです。自分でコンテストに応募したこともあったとか。


追い風に追い風が吹いてきて、背中を押された僕はカバンから小説『Message』を取り出しました。

「実は、最近本を出したんっすよ……」

どんな風に本を出したのか、どうして書こうと思ったのか、そんな話の後、ついに小説『Message』を彼女に手売りすることが叶ったのです。

実際のところ、彼女は最後まで渋っていました。金額のせいなのか、初対面の人から本を買うという状況のせいなのか、定かではありませんが、少しかわされている印象がありました。しかし、そこに3度目の追い風を送ってくれたのは、マスターでした。


マスターは厨房から身を乗り出して、カウンター席に千円札を置いたのです。

「僕が払うよ」

そう言ってくれたのです。


やはり彼女は常連客だそうで、そのお礼の意味を込めて彼女の代わりに払ってくれるとのことでした。また、さっきも触れたように、マスターもかつて創作に携わっていたという過去を持っていて、学生時代にそういうことをやっている人を応援したくなる気持ちがあるそうです。


以上の理由から、マスターは彼女のために小説『Message』を買ってくれたのです。ついに、全く知らない人に手売りすることができたのです。


カウンター席の彼女


◆とりあえず動くこと


当初はどうなることやら不安しかありませんでしたが、「とりあえず動く」をやってよかったなと思いました。

あのまま諦めていたら、小説『Message』の毎日手売りの記録は止まっていたし、初対面の人に手売りするという経験をすることはできなかったし、カウンター席の彼女と話すことも、マスターの過去を知ることもなかったわけです。


とりあえず動く。

それだけで出逢える人がいるし、

手にできる経験があるし、

知られる物語がある。


手売りに限った話ではありませんが、迷ったときに行動に移す勇気をすぐに振り絞れるような人になりたいなと思いました。

最後まで読んで下さりありがとうございました。

20220725 横山黎


小説『Message』手売り36冊目!
同じ学科の子!


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