実は大切。子どもの「指さし」

うちの子どもの「指さし」が爆発的に増えてきました。

隙あらば、何かに(何もない空間も)指をさしています。

そこで、今回はこの指さしが何なのかについて考えてみたいと思います。

実はこの「指さし」、様々な能力、例えば言語を獲得する基盤になる、とても大切な行動なのです。

この記事を読むと、
✅️指さしの意味がわかる
✅️指さしの大切さが理解できる
✅️指さしに対する適切な反応が行えるようになる


「指さし」って何なんだろう?

そもそも、「指さし」って何なのでしょう?

色々な言い方ができますが、例えば非言語コミュニケーションの一形態とでも言い換えられるでしょうか。

子どもに限らず、大人でも「指さし」を使うことは多いです。

多くの場合、他者の注意や視線を指さしの方向に向けたいという意図を持って行われるのではないでしょうか。

大人が「指さし」を行う状況としては、相手に見て欲しい対象の名称がわからず言葉で表現できない場合、言葉で表現するよりもその方向を指で示した方が早い場合、咄嗟に相手の注意を誘導しようとした場合、などがあると思います。

子どもが行う「指さし」も同様で、相手、多くの場合は親の注意を対象に向けたいという意図で行われます。


「指さし」によって培われる社会性

生後半年くらいまでの子どもは、基本的に目の前にいる親との2人の間で関係を作ることしかできません。

親の顔をじっと見て、親が笑ったりあやしたりすると、子どもも笑う、という相互作用は多くの親が経験することだと思います。

このように、向かい合った親との2人の間の関係を『二項関係』と呼びます。

そして生後9ヶ月くらいを過ぎると、子どもは親の顔ばかりでなく、興味を持ったおもちゃなどに視線を向けるようになってきます。

子どもが視線を向けた方向や対象に親が気づき、それに対して反応(興味を持っているおもちゃを取ってあげるなど)をすることで、子どもはおもちゃを媒介にした他者(親)との関係を結ぶことを覚えます。

また一方で、親が見ている対象(おもちゃなど)に対して視線を向ける、親が指さした方向を見る、という行動も見られるようになってきます。

この、子どもー対象(おもちゃ)ー親という三者で作られた関係を『三項関係』と呼びます。


三項関係により急速に発達するコミュニケーション

『三項関係』の基盤には、『共同注意』というものが必要となります。

『共同注意』とは、その名の通り、他者と共同で注意を向ける能力のことです。

さらに『共同注意』には『反応型』と『始発型』の2種類があります。

『反応型共同注意』は、親が見た方向や指さした方向に対して視線を向けるという、受け身のものを言います。

『始発型共同注意』は、自ら視線や指さしを用いて他者の注意を誘導しようとする、能動的なものを言います。

知らない言葉が多くなってきたので簡単にまとめたいと思いますが、要するに、

『指さし』は『始発型共同注意』に基づくコミュニケーションの一形態であるということをご理解いただければと思います。

子どもが親や大人に対して、自分の興味を持ったものを伝えたい、そこへの注意を誘導したいと考え、『指さし』をします。

その行動によって大人の注意を誘導できた、という経験を積み重ねる中で、自発的なコミュニケーションの有用性や必要性に気付いていくことになります。


『指さし』は言語発達のために重要

ここまで『指さし』は非言語のコミュニケーションであると書いてきました。

『指さし』という行為を媒介にして、自分の興味の対象を相手に伝えたり、自分の要求を相手に伝えたりすることになるからです。

一方、言語によるコミュニケーションというのも、媒介となるものが『指さし』から『言語』に変わるだけで、同じような意図を持って行われるものだと考えられます。

しかも、子どもが『指さし』を行うと、大人は「あれは〇〇だね〜」と言ったりします。

これを繰り返す中で、言語と対象とが結び付き、より抽象的な概念としての言語を獲得していくことができると考えられます。

『言語』というものは、相手に意図を伝えたり、その場に存在しない物や抽象的な概念を伝達するために用いられる、非常に高度な伝達媒体です。

『言語』を操る能力の基盤には、『指さし』などのジェスチャーを用いて、その場で相手との関係を結ぶ、意図を伝達する、という能力が必要になると考えられます。

つまり、『指さし』は言語を獲得する基盤となる、非常に大切な行動だと考えられるのです。


まとめ

今回は、子どもの『指さし』を取り上げました。

『指さし』という非言語コミュニケーションの基盤には、共同注意と呼ばれる能力が必要であり、これは親や大人との信頼関係に基づいて育まれます。

そして、『指さし』という非言語コミュニケーションを発展させることで獲得できるのが、『言語』によるコミュニケーションです。

うちの子どもの場合は1歳を過ぎた頃からでしたが、何でもかんでも指をさします。

忙しい毎日で親御さんは大変ですが、できる限り子どもの『指さし』には反応してあげたいですね。


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