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TANKA

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現代短歌。過去や現在や未来のことを文字にする。漫然とだらだら書きたくなかったので、「素材:キャンバスにアクリル絵具」のような括りを文字の表現にも設けたいと思った。
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2021年11月の記事一覧

現代短歌 《なにが普通か》

現代短歌 《なにが普通か》

あの時ああしていればとかこの年齢になってやっと気付くこと

後悔はしないしたくないと言って生きてきたのに思わぬ事態

夢よ幻よ「すごいこと」って何ですか私はそれ出来てますか

アルファ波の力効いてくれ私を眠らせて窓の外は嵐

すぐに「ズルい」なんて言う奴ほど他人の出し抜き方知ってるものさ

ひらひらと手のひらをかざし今までの自分にさよならを告げる夜

抗うことのできない繋がりを温かくも窮屈にも感じ

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現代短歌 《もしも君が》

現代短歌 《もしも君が》

確かな熱量と惹きつける力があなたの絵にはある信じて

君の描く花は猫は人間は幸せだろうその筆跡に抱かれ

できるなら君を明るく照らしたいもしも君が嫌じゃないのなら

君の見つめる「どこか」を私も見ていたい同じ目線同じ気持ちで

涙には何がうつっているの色とりどりの玉が輝くように

心の揺れ動きこそ楽しめ面白がれ私を連れていって

波が来る大きな感情の波私をどこまでも飲み込んでいく

私の作品はいつ

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現代短歌 《青のような青でないような》

現代短歌 《青のような青でないような》

あなたのこと考えながら売り場を往復して選ぶレターセット

オーロラ色に輝く頂上何があるのそこから何が見えるの

この青のような青でないような色彩が君みたいそんな気がして

手紙などこのご時世にしては古風けれどもそれでいいじゃないか

軽やかに走り去っていきたいよあなたも知らない遠く遠くへ

この想い届けてください小さな封筒に託す時夢膨らむ

シャボン玉君を写してふわふわと飛んで弾けて消えてゆく空

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現代短歌 《真っ暗な部屋》

現代短歌 《真っ暗な部屋》

これらの言葉たちは一体どこへ行くそんなこと知らぬ構わぬ

言葉遊びいつまで続く誰も止めることの無い暗闇で一人

誰に届く何時届く私の想いここにたくさん溢れている

お星さまお願い私を照らしてください明るすぎない光で

暗がりが好きなんです安心できるんです放っておいておくれ

横になり小さな音で気に入りの音楽を流す真っ暗な部屋

見えないことは怖いこと?安心できること?答えなんか無いけど

こんなに

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現代短歌 《幸せのクリーム》

現代短歌 《幸せのクリーム》

君を逃したのは悪魔の手かそれとも私の心のずっと奥か

遮られた部屋をこっそり覗いてああ見るんじゃなかった時よ戻れ

風になびくカーテンよ不器用な私に生き方を教えておくれ

ひらひらかわいい服を着ていたあの頃知らなかった山ほどのこと

私のお腹の中にある知識大したものじゃない惜しくもない

腹を壊し何食った?幸せのクリームでできたケーキをたらふく

満足するまで食べさせてあげたい私の知らない君の好物

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現代短歌 《白い小鳥》

現代短歌 《白い小鳥》

神様に一つお願いをするのならこの私に体力をください

男は彼女を永遠に失い抜け殻誰か助けてあげて

私には務まらないのだその役は私では到底駄目なのだ

何を思って贈り物なんかくれたの机の上に置き去りのまま

あの日は私の誕生日だった今までにない誕生日だった

私が放した白い小鳥は今どうしていますかあなたの元で

女心は秋の空なんて馬鹿馬鹿しいとも言えぬ立場になり

「あの頃」はもう大分昔私は見つけ

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現代短歌 《幸せが何かなど》

現代短歌 《幸せが何かなど》

幾度も脳内で再生される君の穏やかな声足音しぐさ

帽子から飛び出したくせっ毛の襟足に誘われ戻れずにいる

気配り上手で優しいが無駄に褒めることをしない君が好きで

正直者は報われるならあなたはきっと幸せになるかならず

誰かを愛するも愛することを愛するも私の自由じゃないか

他人の愛に口出しする余裕があるなら自分の愛を育め

幸せが何かなど探し回るのはダサい突き離して夢を追え

あなたの筆跡に見た

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現代短歌 《小瓶》

現代短歌 《小瓶》

深い海のような星が瞬く空のようなブルーがこぼれ落ちる

秋の新色予約注文だなんて自分のためなら多分しない

あなたなら何を描くのでしょうかどんな世界を表すのでしょうか

壊れるなガラスのように繊細じゃないと信じたい私の心

壊れるのならいっそ引くべきか自らの手で破り終わらせるべきか

何もしなければ尚更ガラスの破片は胸を切り裂くのだろう

拾い集めた破片をアッシュブルーの空に並べれば寂しい音色

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現代短歌 《鏡よ》

現代短歌 《鏡よ》

雲よ何故そんなに泣くの何か悲しいことでもあったの話して

窓の隙間からやってきた風と戯れゆらゆらと揺れ昼が来る

スチロールを削る音が部屋で密かに流しているジャズをかき消す

東京にいた頃に生で聴きたかったと後悔するも季節は行く

空の機嫌は直ったようだ明るい光がさしてきらきら輝く

そのままゴキゲンでいておくれ午後には外に出る予定があるのだ

好きじゃないが誰かがつけるので日々見てしまう君はテレ

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現代短歌 《「シロ」や「シロ」》

現代短歌 《「シロ」や「シロ」》

365日で人は変わるだろうか今日も寝て起き食べる

他人の誕生日を知っている当たり前が不自然と気付く時

誰がいつ起きているかが筒抜けなこの世の心地良い気持ち悪さ

いつまでも無くならぬ飴舐めまわし何処にも行けぬと嘆いても無駄

時の止まったハート型の掛け時計を眺めつつも行けない過去

冷たいチョコレート冷たいコーヒー自律神経かき乱されて

頭痛と熱ですこれは恋いいえ北風の到来です残念

散歩に出

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現代短歌 《きみの話す言葉》

現代短歌 《きみの話す言葉》

きみの住んだ街のことを知りたくてきみの話す言葉を知りたくて

雨宿り揺れる心にもきらきらと水玉に濡れ輝く視界

雨水を飲んで生きるも自由私は独り変わりゆく空を見る

スピードを落として探すあなたの姿はゆらゆらと水溜まりに消え

いつしか雪に変わるなど野暮なことを言い諦めもつかぬ気持ち

お山の上は寒いですかそれでもきっと私の心は熱い

枯れてゆく声に耳を澄まし目を瞑りあなたに会える日を待ちつつ

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現代短歌 《寂しさと友達でいれば》

現代短歌 《寂しさと友達でいれば》

毛糸玉小さくなるのを目で追って編み込まれる日々数えて待つ夜

夢心地想うだけでも幸せな愚か者ならいつでも飛べる

雨降りは好きになれぬが嫌いにもなれない虹の橋を眺めれば

寂しさと友達でいれば寒さとも仲良くできるかそうでありたい

孤独なら退屈しのぎも悪くない神様の嘘聞く地獄耳

赤い糸見えるか見えぬか目を凝らし鋏で切ったよ血が滲んでる

鳥籠に楽しさだけを詰め込んで鳴かせて眺めて時は過ぎゆく

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現代短歌 《炎上を売り物にして》

現代短歌 《炎上を売り物にして》

※20代前半に経験した絵の仕事に関するちょっとした騒動を下敷きにした十首。
実在する人物・団体とは一切関係ありません。

推測で生んだ不幸に共感を集めて売れても虚しいだけさ

着飾って媚を売っても無駄だからお前にされた全てを忘れぬ

優しさを踏みにじる時どんな気分あんたも味わえお気の済むまで

人間を見下し蔑み楽しいかご自由にどうぞ空っぽ娘

いつまでもどうせ満足できないさ劣等感と仲良くしてな

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