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映画『フリーソロ』感想 

予告編
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過去の感想文を投稿する記事【6】

 今日投稿する『フリーソロ』の日本公開は2019年。感想文を書いたのが懐かしい……。
アカデミー賞®の長編ドキュメンタリーを受賞した本作の監督は、登山家・写真家で映像作家でもあるジミー・チン氏。

実は現在、毎週日曜の21:00からナショナル ジオグラフィックにて『崖っぷちからの挑戦状withジミー・チン』という彼の番組が放送中ということで、せっかくなので投稿することにしました。

〈番組詳細〉↓ ↓ ↓


実を言うと、もう初回の放送は終わっちゃっているんですが……💦
2月3日の26:00から再放送するらしいので、見逃しちゃった方も大丈夫です!笑

【2023年2月1日付】



蛮勇か 臆病か


 随分前に綱渡りに挑戦する男のドキュメンタリーを見た記憶がある(たしか映画だったと思うけど……もしかしたらTV番組だったかも?)。高層ビルの屋上から大通りを挟んで向かいに聳える高層ビルの屋上へ、およそ20mの綱渡りはヒヤヒヤもんでした。それと ”どっちが上か” なんて、人それぞれだろうけど、本作が映し出しているフリーソロ・ロッククライミング(以下:フリーソロ)には、一味違ったスリルがある。鑑賞直後だからかな? 今は綱渡りよりこっちの方が好き笑。


 本作は、ロッククライマーであるアレックス・オノルドが、高さ約1kmもある一枚岩 ”エル・キャピタン” にフリーソロで挑戦する様子がまとめられたドキュメンタリー映画。

そもそもフリーソロなんて競技(?)は知らなかったし、むしろ信じられなかった。命綱も無く、文字通り己の身一つだけで登る。それも、オリンピックの競技とは違い、手足を掛ける所が無い。「わずかな足場を頼りに…」というモノローグと共に彼の手元、足元がアップになっているが「……どこに足場が?」と思ってしまう。「もしかしてあのニキビ程度の出っ張りを “足場” だと言ってんのか?!」と……。


 実は途中で、彼の脳に関する情報が出てくるんだけど、常人とはだいぶ違うらしい。脳のある部分の反応が弱くて……、要約すると過度の刺激が無いと反応しなくなっているんだとか。

「ああそうか、この人はイカれているんだ」

と、その時点でひとまず納得するのだが、この勘違いが後々になってギャップに繋がってくる。それについては後述。



 遂に登頂本番の日を迎える。エンターテイメントとして生まれた(?)綱渡りと違うのはギャラリーの有無。ギャラリーどころか交際相手にすら事後報告のアレックスにとっては撮影隊の存在すらコンセントレーションを妨げる障害になっていたのかもしれません。
彼は一度、挑戦を途中で断念する。ある程度の期間、寝食を共にしていたとは言え、一緒にトレーニングしてきたロッククライム仲間とは違う。カメラや撮影クルーの存在で明らかに集中力を削がれたアレックスが、その事を言いづらそうに認めるシーンはとても印象的。この挑戦を志してからずっと一緒だった面々にとっては「お前らのせいで気が散る」と思われるのはつらい。逆にアレックスにとっては「自分の心次第なのに」と頭ではわかっているのに「“お前らのせいだ、 と思っている” と思わせてしまっている、或いはそれを言い訳にしている」と思われるのがつらい。しかしそれもまた逆に撮影隊にとっては「(撮影クルーの存在を)言い訳にしていると思われたくない」と ”彼に思わせること” も心苦しい……。

特に交わす言葉数は多くないけれど、互いの心の有り様、機微が沁みるかの如く理解できるのはドキュメンタリーだからこその魅力なのかもしれません。

 先述した脳の件だけを目にすると、ただ頭のネジが外れている男なのだとばかり思っちゃっていたけど、実は普通の人と同じでとても人間臭い表情を持っている。そんな彼が再び挑戦しようとするから、観ているこっちも一層に力が入ってしまうというものだ。



 とはいえ、フリーソロの失敗で実際に命を落とす者も居る。それでも登ろうとするのは、やっぱり頭のどこかがおかしい人なんじゃないかと思ったりもしちゃうよね。
でも、一歩一歩、一手一手を確かめながら、文字通り石橋を叩くかの如く彼が登り進めていった岩壁には、滑り止めの粉の跡が点々と続いている……。それは単に彼がどういうルートで岩壁を登っていったのかの跡というだけではなく、まるで、この岩一つを登り切るためにおよそ8年もの歳月を費やしてトライ&エラーを繰り返してきた彼自身の努力の軌跡にも見えてくる。他人には理解されない危険な行為、でも、彼はちゃんと臆病に、誠実に、愚直に積み重ねてきたことをわからせるシンプルな痕跡。だからこそラスト20分で映し出される彼の挑戦を観ている時に「いけるか?」という単調なドキドキ以外に「がんばれ」という想いが込み上げてくるのかもしれ ません。



 成功の喜びや驚き、達成感、無事に終えられたことへの安堵、心配や緊張からの解放……。ドキュメンタリーならでは、作り物ではない瞬間だからこそ起きる、ありとあらゆる感情が不都合に一遍に押し寄せるリアル大団円は格別です。皆の笑顔も良かった。登っている途中に目を背けてし まうクルーの姿も見ていたからかな? こっちまで感動しちゃったよ。



#映画感想 #映画感想文 #映画レビュー #ロッククライミング #ナショナルジオグラフィック #フリーソロ #映画


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