見出し画像

映画『ミラベルと魔法だらけの家』感想

予告編
 ↓


“ギフト” が無くても


 ファンタジーとして描かれてはいるものの、本作に出てくる〈魔法のギフト〉は、いわゆる才能のことに他ならないと思います。日本とは少し考え方が違うかもしれませんが、欧米的に言えば才能とはつまり〈神様からのギフト〉であり、だからこそその力は世のため・人のために使うべきもの。それこそが正義。……まぁ他人から聞いた話の受け売りなんですが、そういった正義感の観念に近いものをデフォルメしたような物語という側面もあるんじゃないかな。

 近年のヒーロー映画の躍進ぶりに比例して、ヒーローら正義側の葛藤や悩みも知れ渡ったが故なのか、いわゆる日本的な正義感とは違うものの、とても感情移入しやすい物語でした。完璧な人間なんてどこにも居ない。強者にだって弱点はある。持つ者も持たざる者も手を取り合う、その美しさや素晴らしさが描かれています



 物語の舞台となる架空の町・エンカントがあるコロンビアは、とても多様な文化がある国。エンカントのカラフルな街並みも然ることながら、主人公家族たちもそれぞれ肌の色が違っていたり、服装も異なっていたりして個性的。こういった点でも非常に物語との相性が好い。もっと言えば動物の種類も豊富。

(ちょっと脱線するけど、そんな動物たちの中でも特にカピバラがめちゃくちゃカワイイ笑。ビジュアルももちろんなんですけど、間の抜けた表情でのんべんだらりというか、ボーっとして、時には見せ場となるシーンでも、物語とは関係無いのに見切れていて、「なんでお前がそこに居るの?笑」とツッコミたくなる場違い感がめちゃくちゃ面白い。)

 コロンビアということで言うなら何より、その歴史の存在が大きい。主人公の祖母アルマが経験した悲しい過去……。それと同じようなことが内戦時代に実際に起こっていたのだと思えば、その恐怖や、家族を守るという重圧のせいでアルマが盲目的になってしまったことにも頷ける。エンカントを、そして家族を守ってくれていたロウソクの火が消えてしまったのは、家族を守りたい気持ちが空回りして、〈家族〉を見失っていたから。ロウソクの火の正体は、家族を守りたいという祖父の想いが具現化したもので、もしかしたら問題の原因は、祖父が思う〈家族〉ではなくなってしまったことにあったのかもしれません。手を取り合えないようでは “家族ではない” のだと

 ヒーローも肩の荷をおろして良い、誰かを頼って良い。物語のラストには、最初と変わらぬ明るく平和なエンカントの姿がありました。唯一違うのは、最初に描かれていたエンカントの平和が、魔法を使えるマドリガル家の人間たちのサポートによって一方的に保たれていたということ。
 しかしラストのエンカントは、町の皆が互いに手を取り合い、助け合うことで平和が形作られていました。非常に素敵な着地。



 序盤から中盤にかけてかな……。人によってはかなり居心地が悪くなるかも。無論、そういう時間があるからこそラストの大団円が映えるのだけれど、思っていたよりも長かった。マドリガル家の子として唯一ギフトを貰えなかったミラベルに対する周囲からの言葉の中には、なんていうか、いわゆる親が子供に言ってはいけないことが幾つもあった。当人の可能性や才能を頭ごなしに否定することは、子供にとっては存在意義の否定に他ならない。(言葉の使い方が合ってるかちょっと自信無いんだけど→)ステレオタイプ脅威ってやつで、「ダメだ」「無理だ」と言われて育つと、本当にそうなってしまう。心配なのはわかるけど、合格を目指して受験勉強を頑張る子供に「無理して良い学校に入らなくても……」とか、「失敗しても大丈夫だから」というのも同様。本人の可能性を信じていない。そういう経験・トラウマがある人にとっては胸クソ悪く感じてしまうかも……ちょっと話が逸れ過ぎたかな?



 終盤、バケツリレーの時の俯瞰の画角、手を繋いでドアへ向かう二人の姿、家族写真などなど。畳みかけるように前出した構図や動きが反復され、それぞれが対比のようになり、本作で描かれたことの全てが心地良い後味へと消化していくような感覚になるクライマックスは気持ちが良い。明るい音楽の力による部分も大いにあるのかな?

 相変わらず同時上映の短編も素敵。単に良い作品ということ以上に、そこで描かれていることが、ちゃんと本編のテーマと重なっている気がします。親の想いを知っているからこそ、親のやり方自体は否定せず、且つ、子供の気持ちにも寄り添う。それぞれを理解しようと歩み寄ること、認めること、そして相手への伝え方が大事だということ。どちらとも本編の見方に影響を与えていたような印象です。


#映画 #映画感想 #映画レビュー #映画感想文 #コンテンツ会議 #ディズニー #アニメ #ミラベルと魔法だらけの家

この記事が参加している募集

#コンテンツ会議

30,711件

#映画感想文

66,387件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?