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映画『映画大好きポンポさん』感想

予告編
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過去の感想文を投稿する記事【14】


Netflixにて、明日2/17(金)より配信開始の本作。

もう気付けば公開してから2年近く経っている映画なんですね。
例の如く、公開当初の感想文なので、今読むと「ん?」ってなっちゃうかもですが、何卒ご容赦を……。

特に感想文冒頭のあたりは、公開して割とすぐの頃の話なので、
「へぇ~、そんなことあったんだぁ」ぐらいに読んでもらえたら良いんじゃないかと💦


感化


 ぐっ…ぐぁあああ!!……なんという衝撃…!! いやマジで。

完っ……全に侮っていた笑。他の登場キャラクターはともかく、特にポンポさんのアニメ的というか漫画的なデザインに、”良い意味で” 騙されました。気まぐれで観に行ったけど、こんな面白い映画なのに、何故こんなに上映館数が少ないんだっ!
……とか思っていたら、上映館拡大決定だってさ!  実は僕が観に行った時、劇場特典で小さい冊子が配られていたんです。本作の前日譚となる物語が描かれた短い漫画。上映館が急遽拡大されるとして、こういった特典も間に合うのかな? という一抹の不安が……。これは読んでおいた方が本作を楽しめる気がします。


 まぁそんなことはさておき、もちろん本編オンリーでも超面白い本作は、タイトルからも分かる通り、“映画についての映画”


『ニュー・シネマ・パラダイス』『映画に愛をこめて アメリカの夜』など ”映画について” の映画、或いは『蒲田行進曲』や『ラ・ラ・ランド』(感想文リンク)等々、映画内映画が描かれる作品は数あれど、そんな名作たちに決して引けを取らない完成度。映画プロデューサーのポンポさんや、その制作アシスタントである青年・ジーンら映画製作に携わる人々の物語。

何かの実情を描く(もちろん様々な点で美化されてはいるが)タイプの作品は他にもいっぱいあるけど、本作の場合、描かれるもの、語られる言葉のその全てが本作に ”ハネ返ってくる”。批判も擁護も、否定も肯定も、全てがブーメランになっているのだ。これは物凄いリスク。でも面白い! 本作には、映画への愛、美学、実情などがたくさん詰まっており、それを映画製作という道程を踏まえながら掘り下げていき、且つその制作される映画作品が劇中劇としても素晴らしい魅力と機能を果たし、登場人物の心情ともリンクしている。
……おいおいオレ。まだ半分も書いていないのに、褒め過ぎなんじゃないか?笑

(わかってはいた……、いやもしかすると、”わかっていた気になっていた” だけかもしれないけれど、改めて思う。本作で描かれていること、映画の造り手の想いを理解した上で、僕は仕事をしなければならない。……ここで書くべきことじゃないんだろうけどね。)



 本作から感じた魅力の一つに、”共感” があります。コンプレックス、アイデンティティ、バックボーン、プライドなどなど、自分に何かある者も、何も無い者も含め、登場人物それぞれがその想いをセリフという言葉に形容し、多くの人が共感し易い造りになっている。それこそ劇中でポンポさんがジーンに諭した ”映画の中に見つけた自分” という考え方に呼応しているかのよう。

あれもこれもと、胸に刺さる名言の数々は、クリエイティブ精神を刺激し、人生に彩りをもたらし得る。登場人物においても「ここ良かったよね!」「あそこも良かったよね!」と語りたくなることのオンパレードだ。もう無計画に言いたいことだけ言うわ! だから未見の人には意味わからんに違いない。とりあえずネタバレだけはしないようにします!



 序盤、ジーンがバスからナタリーを見かけるシーン。下を向いているナタリーだが、それは落ち込んでいるからではなく、胸躍る気持ちに軽くなる足が、雨上がりの濡れた路面を弾くような感覚を楽しんでいるから、その足元に目線を向けていただけ。その輝く一瞬の一コマに気付くジーンの映画監督としての才覚の片鱗を描いているようでありながら、その時点ではまだ語られていないアランが、申し訳程度にさり気なく映っているのが忘れられないんです。

後々のシーンで描かれるアランの心情を暗喩しているかのように、アランは進行方向とは逆を向いて(つまり後ろ向きで)ナタリーの方を見ている。これもまた後々のシーンで描かれることなんだけど、学生時代、いわゆるイケてる部類の学生であったアランは、同時期にいわゆる陰キャ学生だったジーンに「下ばっか見ていないで前を見た方が良い」と声をかけていた。

そんな彼が時を経て、偶然見かけたナタリーに目を奪われている……。「下ばっか~」と言っていた男が、”後ろ向き” で、”下を向いている” 彼女の方を見ている(≓目を奪われている?)のだ。なんだこの含蓄ある風な一コマは!!
たった一瞬の描写だったけど、物語の中枢人物の心の在り様を表現したかのような素敵なシーン。



 本作は、映画についての物語。ただその裏テーマ(?)とも思える、一本、筋の通った精神みたいなものの一つに、”人に当てられる” というのがあると思うんです。……もちろん良い意味でね。本来の言葉の意味としては不正確なのかな? どちらかというと感化されるみたいなイメージ。

それは視点を変えれば、人の魅力だったり、その人自身の肯定。本作の物語は、ずーっと映画についての話が続くのに、結局最後は誰かしらのことを肯定している内容なんです。



 ロマンチックな雰囲気こそあまり無いけれど、それはある意味、恋愛的な構図としても成立し得る。本項の冒頭でポンポさんのビジュアルに関して「良い意味で騙された」と述べましたが、一人だけ明らかに世界観が異なる見た目だからこそ良かったと思えたんです。

ただでさえ現実味の無い見た目・設定であるポンポさんの存在は、本作の中ではまるで映画そのものを象徴しているかのような存在にすら見えてきます。”映画” という漠然とした広い意味合いの捉え方ではなく、”ポンポさん” という登場人物を通して物語を眺めることで、主人公ジーンの心情が、より読み取り易くなっていた印象です。まぁ恋愛的というと語弊があるかもしれませんが、ジーン青年の映画へのゾッコンっぷりがよりわかりやすくなった、という感じかな。



 他人事みたいだけど、映画好きな人ってこだわりが強いのよね笑。でも本作で描かれる映画の美学は、どんな人の美学をも否定したりしない。だからこそ映画が好きな人はもちろん、反対に別に映画が好きじゃなくても楽しめるのがこの映画。改めて映画を好きになるし、「好き」と言いやすくもなる。延いては、それは自分自身のことについても同様。とにかく言えるのは、本作が超素晴らしいってことだけ。


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