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映画『前田建設ファンタジー営業部』感想

予告編
 


 本作は、前田建設工業株式会社が、「アニメやゲームに登場する建造物を実際に作ったらどうなるか?」を本格的に検証するWEBコンテンツ『前田建設ファンタジー営業部』を実写化した映画。

 取り扱うのは「マジンガーZの格納庫を建設すると幾ら費用がかかるのか」というもの……。

 実は『マジンガーZ』の生みの親である漫画家・永井豪先生のお誕生日が本日9月6日なんだそうでして。

そんなわけで、本日投稿するのは映画『前田建設ファンタジー営業部』感想文ですー。
よければ読んでください―。


プライド


 いやぁ、“楽しかった”。面白いを超えて楽しい映画です。初めて観た時に「ふざけたタイトルだな」と思ってしまったこと、誠に申し訳なく思っております。まさか実話だったとは……笑。

しかし、大茶番劇を想定せずにはいられない(?)このタイトルに負けず劣らずの世界観は最高。昨年公開の映画『翔んで埼玉』感想文でも述べましたが、邦画特有というか、近頃は「日本国内だけに向けて制作されているからこそ許されているのでは?」と思える壮大な喜劇感(或いはコントっぽさ?)が、もはや愛おしいレベルで大好きなんですよね。

コメディ畑出身の俳優ではなく純粋なお笑い芸人をキャスティングすることや、マンパワーで押しまくる芝居などなどの醍醐味が存分に活かされています。過去の出演作での役どころのイメージが先行してしまう俳優とは違い、本人のキャラクターや人間味が十二分に世間に知れ渡っている芸人さんが演じるだけで「あ、こいつダメな警備員だな」「ふざけた上司だな」などと、台詞等の説明を用いることなく一瞬でキャラクター像を観客に理解させてくれる。大仰にすら感じる芝居も本作の世界観との相性はバッチリ。

当人たちにとっては一大事で危機的状況だったとしても、観客を置き去りにする程の熱い(≒クサイ?笑)演技をしてくれるから、観ている側にしてみれば一歩引いて俯瞰して観られる。だから必要以上に感情移入することなく、本作の “くだらなさ” を遺憾無く味わえる、つまり笑える!

あくまで “喜劇感”、“コントっぽさ” でしかないので、いわゆるツッコミ役は居ないのですが、主人公を含めた「え、ちょっとその熱量、着いていけないんですけど……」感を丸出しにして置いてけぼりを喰らっている人達が、観客の代弁者の如くギャップを埋めてくれていることも本作を楽しめる要因のひとつ。


 僕個人の偏見もありますが、前田建設だからこそ本作は愛される気がします。開始早々の自社アピールゴリゴリの前田建設礼賛シーンにしても、仮に大成建設だ鹿島建設だ清水建設だと言われるのとは印象がまるで違う。いや、本作を観て「へえ、前田建設って凄いんだなぁ」とは思いましたとも。でもやっぱり上記の三社みたいなところが映画を利用して自社ブランドをゴリ押ししてきたら、印象良くないと思うんです笑。

都心のビル建設やら人の目につき易いところが多い印象の彼らと比べると、ダムなどの大規模工事にも関わらずその苦労や努力が人目につきにくい前田建設はあまり認知されていないかもしれません。もちろん素人目の意見ですけど……。

しかしその華の無さだからこそ、グイグイ来る自社ブランドアピールを否定せずに楽しめる。本作で語られるダム建設等での人々の見えない部分での努力には、作り手としてのプライドを感じられたし、延いては建設業界全体のイメージ向上にも繋がる気さえする。こんなにくだらない世界観なのに「かっこいい!」と思える瞬間が幾つもあるのがイイ!



 最初は、悪ふざけだったのかもしれない。言い出しっぺの本意を知ることはできないけれど、このくだらなさに本気になる彼らの姿の奥に、建設業に本気で打ち込む人々の原動力の一つであるロマンが見える。

本作は、「マジンガーZの格納庫を建設すると幾ら費用がかかるのか」という素っ頓狂なテーマに挑む者たちの物語。積算を出し、広告の企画のひとつとして走り出し、けれど最終的には何一つ実らないものに全力で取り組む姿勢に興奮できるのは、熱い、クサイと先述した芝居に負けず劣らずの熱意が実際にあったからではないだろうか。

「俺たちでやってみよう」→「俺たちだけじゃ無理なんじゃないか」
……そうやって周囲に助けを求める時のくだりなんて本当に大好き。必ず「何を馬鹿なことを……」みたいな入口から始まるのに、「でもやるしかないだろ」と真剣な眼差しをぶつけてくるあの王道過ぎて古臭いくだり(褒めてます)。「自分達に助けを求めた、つまり自分達にしかできないことだ」という作り手のプライドに火を付けるプロセスが、初めて『マジンガーZ』等のアニメを観た時にも似た衝動を彷彿とさせてくれるに違いない。


そうやって苦難を乗り越え、迎えた格納庫のシミュレーションシーンの瞬間はテンションぶち上げ! 一昨年公開の『劇場版マジンガーZ INFINITY』での戦闘シーンBGMを思い出すような音楽が使われているのは超嬉しい。

アニメ映像を用いるなど、本作には原作へのリスペクトをしっかり感じます。特別出演にもクレジットされていますし、お気付きの方も多かったとは思いますが、“ある御方” のまさかの出演も見逃せません。


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