見出し画像

映画『フォードvsフェラーリ』感想

予告編
 ↓


 たまたま知ったのですが、昨日6月16日はフォード社(フォード・モーター・カンパニー)の創立日なんですってね。

 そんなわけで、本日投稿するのは『フォードvsフェラーリ』の感想文ですー。


 公開当時のものなので、「新宿にもIMAXレーザーが~」などなど、今の時勢・時節とはズレた文章も混ざっていますが、ご容赦ください。


ロマン


 ああ……クリスチャン・ベイルになっている……、っていうか戻っている。←意味わからないですよね笑、ごめんなさい。と言うのも(実際の撮影時期は知りませんが)『バイス』の公開から一年と経っていなかったこともあい、まずその変貌ぶりに驚いたわけなんです。これまで多くの名優たちが踏んできた役作りというプロセスは「役者魂だ」、「デ・ニーロ・アプローチだ」と簡単に言葉にして評されることがあるけれど、その中でもクリスチャン・ベイルは、これまで太ったり痩せたりムキムキになったり……。色んな表情を見せてくれるのは一映画ファンとしては楽しみの一つでありながらも「そろそろ死んじゃうんじゃないか……?」と心配になってしまったりもします。

事実、『バイス』の公開時に、身内からは「もういい加減にして」的な事を言われていたなんてネット記事も出ていた程です。まぁホッとしたような残念なような……笑。身勝手な意見だって、自分でもそう思います。




 本作は言うまでもなく、圧巻のレースシーンが見どころの一つ。その都度、曖昧な理由付けしか出来ない “映画館で観る良さ” について、これほど説明し易い要因は他にありません。大きなスクリーンで観る視覚的なインパクトは勿論、音の広さ——内臓や骨など、文字通り音が体の芯にまで響く音響の効果を存分に味わえる。IMAXなら尚更です(ようやく新宿のTOHOシネマズにもIMAXレーザーが導入されたので、早速IMAXで観てきちゃいました笑)。

無論、そういったエンタメ的理由も然ることながら、“7000回転を超えた世界” というあまりにも特殊な環境に臨むマイルズ(クリスチャン・ベイル)が味わうル・マンでの感覚を追体験出来ているような錯覚、或いはレースに臨むマイルズの感覚を唯一知り、感覚を共有出来るもう一人の主人公・シェルビー(マット・デイモン)に感情移入するための手段としても、IMAXで観るに越した事はないと思います。



 本作のレースシーンは何よりも、エンタメ性の中に “死が間近にある感覚” を色濃く残しているのが面白いのだと思います。レース前の練習中に事故を起こし危ない目に遭っていたり、レース中でも他の車がクラッシュしているといった瞬間が、レースの間中、何度も脳内にフラッシュバックするよう。先述の、音が体の芯に響く感覚が、心のゾクゾク・ゾワゾワといった緊張感に化けるような錯覚があります。車内に響く振動音やエンジンの回転音が、レース中に幾度も訪れる駆け引きの度に次第に大きくなっていく感じも、不安を煽るものでしかない。マイルズがアクセルを強く踏み込む度に観客は緊張し、上手く乗り越えた瞬間に緩和が訪れ安堵、或いは歓喜するというこの流れに “死の匂い” がエッセンスとなっている印象です。そのスリル感がとても心地よい。



 本作には、男の浪漫が詰まっているのかもしれません。それも、これ以上無いほどに美化されて

一瞬の判断ミス・操作ミスが死に直結する戦いに挑むのも、企業戦争に乗っかりながらも無粋な上役に従わない感じも、全てがかっこいい。そこまで人々を熱く翻弄する “ル・マンでの勝利”。それ、もしくはその先にある栄光は、およそ人には過ぎたるものなのかもしれない。スピーチをするシーンで希望を匂わすかのように夕陽が眩しく映っているのが印象的なのも、作中でやたらとサングラスをかけている姿が多いのも、その栄光があまりにも燦然と輝いているものであること、その光が目を眩ませかねない程のものであることを示しているようにすら思います。

 そんなことを考えている中でのあのラストは、「その光が示す答えの中の1つがこれなのか」と突き付けられたよう。今思えばレースの終盤、それまでとは打って変わって静寂に包まれ、陽の光が差している中をマイルズが走っていたあのシーンは、ラストの予兆だったんじゃないかとすら思えてきます。かと言ってこの言葉で片付けて良いものかは分かりませんが、ここに浪漫がある。とても抽象的で判然とし得ない形容でありながらも敢えて “浪漫” と呼ぼうかと。妻子の存在をちゃんと考え、レースとの比重が揺れ動いていたマイルズは、とても人間味のある男。そんな彼がリスクを負ってでもレースを選んだことを肯定するためにこそ、シェルビーとの友情も合わせて、“浪漫” として美化した仕上がりになっているように思えてならないから。


#映画 #映画感想 #映画レビュー #映画感想文 #コンテンツ会議 #フォードvsフェラーリ #ル・マン

この記事が参加している募集

#コンテンツ会議

30,708件

#映画感想文

66,330件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?