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映画『RRR』感想
予告編
↓
”最新作”ってわけでもないですが、まだまだ劇場で上映中みたいです。
かなり話題にもなっていますしね。そんな『RRR(アールアールアール)』の感想文ですー。
もはや神話かと
『バーフバリ』の監督の最新作……もしかしたら、これ以上の説明は不要なのでは? 外連味を味わい尽くすアクションアドベンチャー超大作に、考察や分析なんて野暮でしかないのかもしれない。そんな想いも入り混じりつつ、この全部乗せ超特盛映画の感想を述べていこうと思います。
本作で描かれる超絶怒涛の物語によって何故か想起させられてしまったのは、神や神話の成り立ち。凄まじき武勇で、その土地の民を脅かす存在を次々に蹴散らし、救済へと導く……。この展開だけでも勿論なのだが、その見せ方がとにかく素晴らしい。
下半身に袈裟のような装束をまとい、銃火器を使ってくる敵軍を弓矢一つで悉く鎮圧するラーマ。
人並外れた剛腕と、その膂力から放たれる剛槍の嵐で、敵を片っ端から薙ぎ払うビーム。
本作の作風だからこそ納得の、とにかくビジュアルにこだわりまくった美しい姿勢や動きでの戦いぶりが、もはや伝承などで語られる神々の逸話を彷彿とさせるに申し分ない。
星座に神や人の形を想起する時の絵とか、どこかしらの壁画に描かれた神々の絵画など、だれしもが見たことがあるに違いない。「そんな空中姿勢で矢が真っ直ぐ飛ぶワケがない」とか、「そんな構え・持ち方で槍で突き刺したら逆に力が入りにくいんじゃないか」とか、リアリティで物事を観察してしまえば不自然の塊なのだが、そんな不自然な姿勢だからこそ、人並外れた感じ、ともすれば超人、延いては神様っぽさを際立たせてくれる。
しかもここぞとばかりに各アクションをスローモーションで描くから、尚さら一挙手一投足に厚みが加わり、神格化されていくような重みが生まれる。
背景に焦土や爆炎を背負うという画力(えぢから)、挙句の果てには陽の光を背負うことで後光のように見せてくる瞬間までも存在する。
そんな超人の如き姿も然ることながら、その土地の民衆たちの反応が重なることで相乗効果が生まれていた印象もあります。
・序盤に描かれた『FIRE』の章では、ラーマがたった一度だけ地を踏みつけることで、それに慄く群集たちが映される。
・ビームが鞭打ちを喰らわされるシーンでは、決して敵に屈さぬ頑強な精神と美しい歌声で民衆たちの心に火を灯す。
・クライマックスには、戦果を上げて悠々と帰還するその姿に村人たちが歓喜する……。
もちろん他にも幾つもあるけれど、たとえば一つ目のシーンは神への畏れを、二つ目は神の啓示のごとき奇跡を、三つ目では歓喜や感謝による信仰心を、それぞれ表現しているようにも見て取れる。
過剰な形容なのは重々承知だけど、例えるなら本作はまさに、ヘラクレスやプシュケー(←漫画等の知識なので間違っているかも)など、元々人間だった者が神格化するまでの物語、 神話が生まれ出づる成り立ちにも似た話を、インド映画史上最高額と謳われる製作費を投じ、『バーフバリ』にも劣らぬ外連味抜群のスペクタクルで見せてくれる映画。
また、ラーマとビームの関係性も非常に良い。信頼や敵対を経て生まれた強靭な友情が物語をより一層盛り上げてくれる。二人が抱える葛藤や大義がドラマチックであればあるほど、乗り越えた先にある絆が美しくなる。
ある時、敵国の将軍と握手を交わすラーマ。 何の変哲もない握手。だからこそタイトルロゴのイラストにもあるような、ラーマとビームが交わした ”互いの手首を掴み合う” 握手の深さが浮き彫りになる。
インド映画らしい歌&ダンスのシーンで、背景に手首を掴み合っている彫像が置かれていたのは、この二人の強固な絆を象徴していた何よりの証。
もっと言うと、少し話を戻すけど、敢えてバカでかい彫像にしているというその光景自体が、二人のことを人々が神格視していることを表現しているようにすら感じられてくる。
インドの植民地時代をベースに描かれ、英国を明確に悪として描き、敵の根城を視覚的にもわかりやすく徹底的に崩壊させるような描写や、インドの神を讃え、崇める本作は、まるで戦時中の国威発揚映画にも匹敵するパワーがあります。
無論そんな意図は無いとは思いますが、それほどのパワーが溢れる本作は、大声を上げて楽しみたくなる面白さがある。インド映画お馴染みの歌とダンスのシーンも、とにかく観て楽しむことを第一に作られている感じがして気持ちが良い。
そりゃあ、ツッコミどころはいっぱいある笑。でも、それを ”アリ” にしてきたのが本作の監督、そしてインド映画の歴史。整合性とか科学考証とか宣いてどうするんだ。難しいことなんか要らない、頭を空っぽにして全力で楽しめる。長尺を物ともしない、飽きの来ない展開と見応え十二分のアクションが詰まった圧倒的な179分でした。
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