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映画『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』感想

予告編
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 ベトナム戦争下。空軍落下傘救助隊のピッツェンバーガーは、敵の奇襲を受け孤立した陸軍中隊の救助に向かうが、激戦のためヘリが降下できず、その身ひとつで地上へ降りて救出活動にあたる。

……しかし彼自身は銃弾に倒れ、帰らぬ人となる。


これが、1966年の今日——4/11の出来事

本作は、実在の米空軍兵ウィリアム・H・ピッツェンバーガーの知られざる真実を描いた映画です。

2年ほど前の感想文ではございますが、もしよろしければ読んで頂けたら嬉しいです。


最後の全力を尽くして


 30年以上もの間、名誉勲章を請願され続けてきた、ある兵士の実話。ネタバレはしていない(うっすらしてるかも?)のですが……なんか余計なこと書いちゃってる気がする。もし読むなら本編観てからの方が良いかもです。



 自分なりの「王道」っていうかさ、はたまた「ベタ」や「鉄板」みたいな呼ばれ方をするものって、皆それぞれ持っていると思うんです。世間の流行り廃り、時代の潮流なんて関係無く、どれほど単純で明快でチープなものだったとしても、何故か心の琴線に届く。幼少期から触れてきた作品がそうであったり、特に理由もなく胸に響いたり、形は様々。僕個人で言えば、映画『アルマゲドン』のクライマックスのような勇気と慈愛に満ちた自己犠牲とかにめっぽう弱かったりするし、映画『遠い空の向こうに』のような幼少期のドキドキやワクワクを大切にしてくれるような展開にも弱い。

まぁ挙げれば切りが無いのですが、この度、その “僕なりの王道” に当て嵌まる作品が一本増えました笑。もぉね、なんですか? あのクライマックスは。起こる全ての出来事が僕の涙腺を刺激してくるというか、次から次へと襲い掛かってくる感動のギミックの数々。こんなん卑怯よ、全っ然スマートじゃない。“泣かせに来ているんじゃないか” とすら思わされているのに涙が止まらなかった。

父母の間にある名誉勲章、そしてその名誉勲章なめ大観衆という構図。さらにそこから始まる敬意・称賛の嵐、サバイバーズギルドに苦しんできた者たちの心の浄化……etc. ああ、なんて気持ちの良い後味だっただろうか。



 苛烈を極めるベトナム戦争下、空軍兵のピッツェンバーガーは、戦場に取り残された陸軍中隊の救助に向かうが、予想以上の激戦のために救助ヘリは戦地から引き上げざるを得なくなる。しかし彼は、一人だけ戦場に残ることを選び、負傷兵を救出し続けていく。けれど最期には敵の銃撃に倒れてしまう……。

 そんな男の名誉勲章が30年以上もの間、却下され続けてきた、つまりその事実を認めると都合が悪くなる人間がいるということ。本作の主人公・ハフマン(セバスチャン・スタン)は、その請願の精査を担当することになったキャリア官僚の男。

物語の大半は、その精査のためにハフマンが様々な人達に話しを聴きに奔走するというもの。ピッツの両親や、同僚だった元空軍兵、戦地で彼に命を救われた者たちなど色々な人たちに会いに行くんですけど、その顔ぶれが、、、
ウィリアム・ハート、エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン、クリストファー・プラマー、ダイアン・ラッド、ピーター・フォンダ……

っておいおい、何だこのイカつい面々は……!!

とは思ったんですが、実はエンドロール中に、彼らが演じた役のモデルとなった方々のインタビューが流れてくるんです。「そっか、このインタビューに答える人々を演じる、その想いを本人たちに代わって忠実に、真摯に、そして敬意を持って表現するためには必要不可欠な豪華キャストだったんだ」と、納得です。

リアルに負けない迫真のリアリティを生み 出すには、これほどの猛者たちでなければ務まらないと言わんばかりだ。もっと言えば、それこそベトナム戦争があったような頃から、それほど昔から活躍していた彼らだからこそ、その老いた姿に ”時の流れ” のようなものを観客に感じさせ得る効果もあるから尚良い。



 確かに本作はちょっと難しい。それは別に物語が難解だとかそういうことではなく、描こうとしている、或いは伝えようとしている核心部分に、若干の曖昧さを感じてしまうから。もちろんシンプルに良い話ではあるけど、淡々と語られていき、けれどもなかなか真実が見えてこない展開が続くことに、人によっては退屈感を覚えてしまうかもしれません。考えれば考えてしまうほどに。とはいえ、それを補って余りある名優たちの演技は間違いなく本作の見所の一つ。


 個人的には、「ラスト・フル・メジャー」っていうタイトルにこそ核心部分が詰まっているように思います。これってリンカーンの演説の一節で、戦死者の栄誉を讃えた言葉から取ったらしい(『池上彰の 映画で世界がわかる!』記事より)。他者のために最期まで全力を尽くしたピッツを表した言葉でありながらも、先述の名誉勲章なめ大観衆のカットから始まるクライマックスシーンによって、その言葉が指し示す対象が大きく広がる気がしてなりません。

 名誉勲章(=ピッツ)に向けられた喝采の後、会場に居た兵士たち、友人等々、拍手の波が連鎖的に広がっていき、最期には会場に居た全員が立ち上がり大きなスタンディングオベーションへと昇華したラスト。まるでそれは、ピッツのことだけを指したかのような言葉(タイトル)が、全ての人々に向けられたメッセージ、或いはある種のスローガンのようにもなり得る瞬間。

 本作の公式ホームページに載っていた押井守監督のコメントの受け売りだけど、本作は、人間にとっての “誠実な行い”、その重要性がとても大きくなっている今の時代にこそ刺さる映画なのかもしれません。


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