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映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』感想

予告編
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 昨日に引き続き、アマプラの月替わりセールの中から一本。

 本日は、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の感想文を投稿しますー。

 セールは5月31日までだそうです。


幸せのカタチ


 白状すると、この映画を観に行こうと思ったのはアカデミー賞ノミネート・受賞だとかはあんまり関係なくて、ただ単純に大好きなシアーシャ・ローナンが出ているから、前々から観に行こうと思っていただけなんです。それともう一つ白状すると、本作の原作小説『若草物語』は読んだことがありません。名前ぐらいは聞いたことあったけどね。でも読んでいたら本作をもっと楽しめたのかも……まぁ未読でも充分に面白かったのですが。


 むしろ知らなかったからこそ、本作の作りには驚かされました。時折「ん?」となることがあったのは、事前情報を全く持たなかったが故に “原作の『若草物語』を映画化したものだ” と思い込んでいたから。『若草物語』は原作者であるルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説。そしてその物語の主人公として描かれる、マーチ家の次女ジョー(シアーシャ・ローナン)とは、原作者であるルイーザのこと。そして本作は、その原作者の本当の物語……。実のところ本作は、『若草物語』と原作者の半生を行き来する物語でした。先述した通り鑑賞中に「ん?」となった理由は、原作小説に綴られているであろう物語を、ルイーザの実際の半生と共に同時進行で描いていたから。要するに『若草物語』は、リアルではなく脚色が加えられているということ(って認識で合ってるかな?)。この脚色の理由について映画内では、“小説という売り物にするため” であるかのように語られていたけれど、「もしかしてこっち(脚色された内容)にこそ、ルイーザの本音が隠されているのでは?」と思えてくることもあり、面白かったです。少なくとも僕にとってはね。



 マーチ家は四姉妹。予告編でも語られていた通り、お金が大切だったり結婚することが一番だったり、性格も感性もバラバラ、でも仲の良い姉妹。そしてジョーにとっては小説家になることが夢だった。結婚だけが女性の幸せではないと口にする彼女(なんだったら「結婚したら終わり」とすら言っていた)同様、それぞれが重きを置いているものが違うからこそ「幸福の定義とは何ぞや」と考えさせられることが度々ある。(物語の中で、ティモシー・シャラメ演じるローリーと良い雰囲気になり始め、「これもうロマンス確定じゃん」だなんて無粋なことを考えていた自分は、ベタとか王道といった多数派に毒されている証拠なのかもしれません。)


 特に、屋根裏でジョーが本音を口にするシーンは印象的。「結婚だけが女性の幸せだとは思わない。そんなの絶対に間違っている」という自身の考えの後に続けて、それでも満たされない想いを溢す。このセリフこそ本音だと思えたのは、想い出がいっぱい詰まっていて、且つ閉じられた空間である自宅の屋根裏という、劇中で最も本心をさらけ出しやすい空間でのセリフだったからというのもあるのかな? もしかすると彼女は、お金や結婚といった “信じられるもの” を持つ他の姉妹とは異なり、「信じられる幸せの形を見つけられていなかったのかもしれない」などと過剰な憶測までしてしまう。

もしも本当に屋根裏という場所が “本音が垣間見える空間” であるならば、同じく屋根裏から、窓越しに外に居る姉夫婦の幸せそうな姿を見つめていたジョーの姿と、窓から姉夫婦の姿が見える画角(=ジョーの視点)は、ジョーにとって “結婚” というものが自分の外の出来事というか、リアルなものとして認識できていない心情を表したシーンだとも思える。このシーンに限らずですが、こういうシーンの度に冒頭のテロップ——「悩みが多いから、私は楽しい物語を書く」という原作者の言葉——がフラッシュバックしてきますよね。そして原作小説の物語と原作者の半生を行き来する内容だからこそ違和感なく存在するメタ的な発言が、ルイーザがどういう想いで『若草物語』を執筆したのかということまでも深読みさせてくれる。



 そしてラストシーン。遂にハッピーエンドを迎えられた自身の小説が製本されていく様子を眺める彼女の表情で終幕するのです。最期までルイーザの本心は明確にはされません。本作を観た者それぞれがどう感じるかに任せているかのようなラストには痺れました。さて、ルイーザのあの表情はどっちなんでしょうか。是非ご覧いただければと思います。


 三女のことについて反復と変化で描いていたり、他にも細かな描写がいっぱいで色々な見どころがある本作。かなり都合の良い解釈で好き勝手に述べてしまいましたが笑、原作を知っているだとか、もっと詳しい方、間違っていたら教えて下さい。……まぁ個人的には、シアーシャ・ローナンを拝めたから既に満足していますけど。


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