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映画『キャッシュトラック』感想

予告編
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 先月の下旬くらいからアマゾンプライムビデオにて配信中だった本作。
いやぁ、ホント……「ジェイソン・ステイサムって、いつ見てもジェイソン・ステイサムだなぁ♡」と、改めて彼の魅力を味わえる一本です。


ちなみにサムネイルのジェイソン・ステイサムのイラストは、「みんなのフォトギャラリー」内にて見つけたケンコウ様(kenkou1973)の画像を拝借しておりますが、本作のではなく『メカニック』の時のステイサムみたいです。


”ジェイソン・ステイサム” というマンパワー


 フランスの映画『ブルー・レクイエム』のリメイクである本作ですが、兎にも角にもジェイソン・ステイサムを味わい尽くせる映画。もはや “ステイサムが演じている” という事実そのものが、作品の面白さを格段に押し上げてくれています。この手の役どころにおいて、次代のステイサムというか、新たな適任者の登場も待ち遠しいものではあるけれど、殊、本作に限って言えば、『トランスポーター』『メカニック』『アドレナリン』等々、過去の出演作品などから生み出される、ステイサム自身のパブリック・イメージが観客の感度を左右する、ある種のメタ認知的な視点ありきの作品だと思っているので、彼を知らない方々が本作を観てどう思うかがとても気になるところ。


 ただそこに居るだけで漂う “只者ではない” 感。勿論、芝居や演出によってもわかるように作られてはいるんだけど、そんなのがあろうが無かろうが関係無く、「ジェイソン・ステイサムのことだから、どうせメチャクチャ強いんだろ?」などと思って観てしまう笑。だからこそ、想像を裏切る展開にまんまと引っ掛かるのだ。それがもう面白い・楽しいというより、なんか笑ってしまいそうになっちゃってww。「その感じで射撃の腕はフツーなん?」って笑。

まぁ当然、その時は真の実力を隠しているわけで、そんな展開に対して『能ある鷹は爪を隠す』なんて言葉が、一瞬……、ほんの一瞬だけ脳裏にチラついたけど、すぐに気付くんだ——「いやいや全然隠せてねーよ、眼光鋭すぎるわ!笑」って。


 初めは全く何も提示されない、ステイサム演じる主人公Hの素性……。それが物語が進むに連れ、少しずつ明らかになっていくのですが、「こいつ、やっぱり只者ではないぞ」 みたいな事が起きる度に、何故か “僕らが思い描くステイサム像” に徐々に近付いていくように感じられ、その都度「ィヨッ!待ってましたっ!」と言いたくなるような不思議な喜びに襲われます。これまた憎いもんで、一気に見せないから焦らされているような感覚があって、だからこそ「待ってました!」の瞬間が待ち遠しく、訪れた時の喜びも一入だったのかもしれません。


 この少しずつ真実が見えてくる展開について、(ステイサム×ガイ・リッチーという組み合わせからも想像された方は多かっただろうけど、)『ロック、ストック&トゥー・ス モーキング・バレルズ』なんかを彷彿とさせるような、物語内の時系列が前後するような描かれ方になっているのも本作の面白い魅力のうちの一つです。

あとは、人物やカメラの動きのタイミングに合わせて音を入れ込むことで、作り手が聞かせたい音を確実に意識させるかのような演出も良かった(なんとなくだけどMV的な見せ方に近いのかな?)。おかげで重低音が映え、かっこよさや、逆に不穏さなどを印象付けてくれる。終始シリアスな雰囲気で緊張感が続きっぱなしの中、飽きさせないような工夫が幾つもある印象です。



 物語の締め括りを考えれば、常にシリアスな雰囲気が物語を支配していたのは当然というか妥当というか……。唯一のヒロイン候補みたいな存在の女性すら無碍な扱いだったし、相手を煽るような文句はあるものの、ジョークらしいジョークも見受けられなかった。この重厚なテイストに負けない男となると、やはり ”ジェイソン・ステイサム” クラスでなければ務まらない。冒頭で彼を「味わい尽くせる」と形容したのは、そんな理由によるもの。


 この物語を傍から見てみると、ある意味、「猫の尾を踏んだと思ったら、実は虎の尾だった」みたいな話にも見て取れる。今はSNSや何やら、軽い気持ちで他人を叩いたり、言葉で傷付けることが可能になっている時代だけど、本作で描かれる主人公の「喧嘩を売る相手を間違えたな」と言わんばかりの凄味のある存在感は、「不用意にイキってると痛い目に遭うんだぞ」といった警鐘にもなり得るんじゃないかな。安易に他人に噛み付ける時代だからこそ面白い物語なのかもしれません。

YouTUBEとかネット記事に載っていた本作の予告編動画の一つに、「【悲報】襲った現金輸送車の中からステイサムが・・・」っていう見出しがあってさ、まさにって感じだった笑。



 世の人々に本当に認められている人間には、承認欲求など発現するとは思えない。認められていない事実に対して、「気付かれていないだけで、それに見合う凄い才能や能力があるんだ」という意識が承認欲求を生み出し、肥大化させているのだと仮定するならば、人々が真に憧れ得る人間像は、昨今流行りのヒーローなんかではないんじゃないか……? 今年公開の『Mr.ノーバディ』(感想文リンク)の時も思ったけど、シンプルな「すごい」より、「実はすごい」の方が魅力的なのかもしれない。人々に潜在する “実は凄い奴” 願望に合っている。一見するとヒーローのようでありながら、ヒーロー視されることには背を向けている感じも相俟ってか、そんなことを考えてしまいました。


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