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映画『フッド:ザ・ビギニング』感想

予告編
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 明日5月5日に Hulu にて配信開始予定の本作。

 公開当時の感想文なので、時勢・時節柄とはズレた内容もありますが、お気になさらず。2019年当時の話なので。


 意外と楽しい映画だったんですけどねぇ……。なんか主演俳優が本作のことをそんなに気に入ってないみたいで……。まぁネット記事情報なんですけど。
続編を期待させる内容でしたが、多分次回作については望み薄だと思います。~残念。


危険因子


 『キングスマン』の頃はどこかあどけなさが残っていたような印象だったけど、声も低くなり体格もがっしりとしてきてさ、タロン・エガートン(メディアによっては ”タロン・エジャトン” とも)がどんどん俺好みになってきたんです笑!  話題性で言えば『ロケットマン』とかのイメージの方が今年は強いかもしれないけど、もう個人的にはトップクラスのアクションスターという認識です。銃やら傘やら色んな武器で暴れてきた彼が今度は弓を得物に華麗に闘う。それも、あのロビン・フッドとして。

ロビン・フッドはディズニーアニメとリドリー・スコット版しか観たことが無いから原作に関してはさっぱりだけど、おそらく皆がイメージするロビン・フッドの根底は変わっていない。正義の無い体制に虐げられ苦しむ民衆を救うべく立ち上がり、そのためには自身へのレッテルや危険をも厭わない。その雄姿は僕の大好きなロビン・フッドそのものでした。



 人並外れたアクションや弓捌き、国や時代設定等のためか、これまでロビン・フッドの物語を単なるおとぎ話や英雄譚、ヒーローモノとしてしか認識していなかったけど、反体制派の中心人物として為政者に楯突こうと言うのだ、いくらでも政治色の濃い作品にはシフトできたはず。そんな考えを頭の片隅に置きながら観ていると、フッドの存在に駆り立てられた、或いは彼の言動に焚き付けられた民衆が街のあちこちにフードを掲げる様子は、若者がマスクをしていた香港のデモを殊更に彷彿とさせる……

なんてね。映画はその時代を物語ることが多いから、ついついそんな風に今の社会と結び付けたくなるけど、きっと多分、ロビン・フッドはそういう物語じゃない。人類の歴史が始まって以来、この構図——為政者、ないしは力を持った者が持たざる者を私欲のために支配する社会——は、世界のどこかに常に存在している。そしてそれは同時に、ロビン・フッドが長きに亘って愛されているのが、人々の中に彼のような存在を求める声が常に溢れて止まないことにも繋がる気がしてなりません。いつの時代にも体制への不満は生まれる。いつの時代でも変革を求める人々はいる。その希望の権化とも呼べるジャンヌ・ダルク的存在を英雄視してしまうのは、今思えば必然に他ならないのかもしれません。


 ただまぁ「実のところその英雄視は “ロビン・フッド” というネーム・バリューのおかげかもしれない」という懸念を持つ方も居るかもしれない。ジャンヌ・ダルクにせよ天草四郎時貞にせよ、後々になってその正義や無実が証明されたというだけで、当事者(=当時の人々)からすれば異端以外の何ものでもない。ましてや民衆を煽動し革命を起こし、世の体制を文字通りぶっ壊そうと言うのだから、為政者にとってはなおさらだ。過激なカリスマは英雄にもA級戦犯にもなり得ることを示している。

じゃあ何故「そんな危険因子を好きになれるのか」ということだけど、それは本作が『フッド:ザ・ビギニング』、つまりロビン・フッドの始まりの物語で、ロビン・フッドになる前からの彼が描かれているから。主人公・ロビンは「敵だから」という理由ひとつで残忍な行為には及ばない。正義や慈愛に満ちた心を以て人に相対する。これは愛する者のためには大嫌いな高位官僚にも成りすまし、国民のためならばお尋ね者にされることも厭わない姿にも繋がりますが、彼は肩書きや屋号といった外面だけにこだわらず、常に本質を見る。その才能がある。物語の冒頭から描かれるこの誠実性や正義感が、彼が正義のヒーローだと観客に知らしめる最速最善の手法。……まぁ彼自身は正義のヒーロー扱いは望んでいないっぽいんですけどね笑。

また、その本質を見抜く人柄と、寸分の狂い無く弓矢で標的・目標物を射抜く姿が、非常にマッチしているように思えてかっこいい。



 アクションやBGMなど、あまり小難しいことを考えずに楽しめる痛快な作品です。リドリー・スコット版を彷彿とさせるラストも良かったし、特にエンドクレジットになって流れる曲が最高なんです。

『シャザム!』(感想文リンク)や『スパイダーマンFFH』等、近頃のアメコミ映画のようなポップなヒーロームービー感を醸す曲調も素敵なのですが、曲終盤の、最期の歌詞の直前の ”間” が絶妙なんです。凄くノリの良いテンポだったのに突然、不自然なほどの無音が訪れ、「え、こんな変な感じで曲終わんの?!」と思ったぐらいのタイミングで、最後の一言が流れるっ!  散々煽って煽って、スッと一歩退いて、皆が耳を傾けた途端に決め台詞……。これはもう、まるで民衆の心を引き寄せるロビン・フッドのカリスマ性を体現しているかのよう。この演出はもしかすると映画版のみの仕様なのかな?  今流行りのポスト・クレジット・シーンなんて無かったけど、どうかエンドクレジットになっても席を立たずにいて欲しい。きっと最期の最後まで楽しめるから。


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