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映画『横道世之介』感想

予告編
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 書いたのは8年ぐらい前かな……? よく覚えていないのですが、でも本作が素敵だったことだけは覚えています。

 一応「ネタバレ」タグを付けようかと思ったのですが、予告編映像でも既にネタバレしていたので、本項には敢えてタグを付けませんでした。ネタバレが気になる方はお気を付けくださいー。


いいやつ


 例えば、ってなると『フォレスト・ガンプ/一期一会』とか『トゥルーマン・ショー』とかかな、個人的なことを言うとね。主人公の人間的魅力が物語や作品としての魅力を超えている、或いは、ほぼ直結してイコールになる作品って、とても素敵だけどなかなか巡り逢えない気がします。本作はそんな「素敵」と呼びたくなる類の映画でした、間違いなく。

 同監督の過去二作品もそうでしたけど、タイトルが洋画チック(?)というか、邦画に多く見られるような余計なワードに支配されている感じ(それが良さだったりもするけど……)が無く、凄くシンプルなことも作品の魅力を引き立たせる要因なんじゃないかな。


 ただ、そんな本作の主人公である横道世之介(高良健吾)は、いわゆる “普通の奴”。にも関わらず、「出逢っただけで得した気分」だなんて感じる加藤(綾野剛)のように、(本作が好きな者も含め)彼の周囲の人々はなぜ彼に惹かれてしまうのか。あくまで僕の見解でしかないんですけど、彼には、人の単純な部分がいっぱい詰まっている。というよりかは逆に、複雑なものが削ぎ落されている気がします。

それは自己顕示欲とか承認欲求とか、あとは見栄とかプライドとか。世の中の多くの人々からそういうものを全部引っこ抜いたら、みんな世之介みたいになるんじゃないかとすら思えるんです。極論だけど、要するに彼を好いている者は、本質的に人間を好きになれる人間なんじゃないかな(自分で言う事じゃないんでしょうけど)。


 160分という長尺を以てしても物足りなかったのですから。そんな彼の生き様をひとつの感想に収めるのはとてもじゃないけど大変。でも、サンバサークルでの「(倒れた)オレに構わず行ってください」と言ったという世之介のエピソードを聞いていると何となく掴めてくる気がする。

加藤に見せたその時のビデオ映像は、この物語の、延いては横道世之介という男の本質に相似していると言っても過言ではないのかもしれません。彼を置いて先へ進むサンバ隊の表情は須らく笑顔で……、それはまさに彼の生き様そのもののようで……。

彼が居ないことは酷く寂しいけど、どんな理由にせよ “横道世之介” を理由に周囲の人々が立ち止まったり暗い気分になることは望ましくないことである、とでも言わんばかりのシーン(勿論、当の本人はそこまで考えていないんようにも思いますが笑)。

 中には千春さん(伊藤歩)のように彼が居ない事実に気が滅入ってしまう人も居るかもしれないけど、そんな時は悲しくても寂しくても世之介の話をしよう。倉持(池松壮亮)ら夫妻のように、話していても大した思い出の一つも出てこないかもしれない。でも大丈夫、きっと笑顔になれると思うから。

 そういった彼への想いそのものが、本作の感想みたいになってしまう、不思議な魅力のある映画でした。


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