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映画『女王陛下のお気に入り』感想

予告編
 ↓

PG-12指定


 明日、11月3日(金)よりアマプラにて配信開始予定の本作。

 随分と偏見に満ちた感想文になってしまいましたが、どうか大目に見てくださいましー。


怖い……と言いつつも楽しい笑


 時折遭遇するんだ、こういう「オンナって怖ぁ……」と思う映画に笑。もちろん「おもしろい」という前向きな意見と同義です。その度に毎回「自分の周りにこんな女性が居たらどうしよう」などと冗談めかすこともありますけど、そんな僕を見て心の中でこっそり嘲っている女性が居るかもしれない、と思うと一瞬で背筋が凍る。気付けぬ愚図は大概、男ばかりなのかもしれません。


 男は女性の視線や評価に一喜一憂し、その為に奔走しがちな節がありますけど、女性にはあまりそういった事への関心が窺えない。ああ、男のなんて愚かなことか笑。遠回しにそんなことを感じた映画です。浅薄な男には到底出来得ない女性特有(?笑)の美しい作り笑顔は、言語化できないものを表現できる映画だからこそ楽しめる面白さなんだなと痛感させられます。

 この笑顔は、気位が高い高貴な者たちを描く本作との相性が非常に良い。嫉妬や憎悪、特に女性が中心となる物語である本作には、日本特有の “ドロドロ” というオノマトペがとてもよく似合う。


 公開前から各メディアでも取り上げられていた豪華な衣装や撮影場所も面白さの一つ。作り物ではない、実物を撮影に用いている「うわぁ、本物だぁ」と思える贅沢さは、映画として箔が付くのもありますがそれ以上に、先述のドロドロを彷彿とさせる人間の奥底の醜さを浮き彫りにする、これ以上無いほど素晴らしいアイテム。しかも本物の建物での撮影なので(もしかしたら敢えてかもしれませんけど)照明の配置が難しく建物内全体が現代と比べて暗いのも印象的。外面は煌びやか、でも中身はドス黒くて……。面白さの構築と同時にこれほどまでに登場人物たちを皮肉ったメタファーもなかなか無いんじゃないかな。

 魚眼レンズか何かわからんけども、画角の広いカメラで撮ったのも良かったのかも。天井まで画角に収まっている作品なんてあまり思い付きません。普段、目にしている作品との違いで何となく不気味に感じるし、それに天井まで映すことでセットではない本物感が色濃くもなる。カメラがパンする時も、防犯カメラっぽいというか、あまりに無機質な感じが、彼女たちを傍から眺めている——本作で描かれている女のドロドロバトルを高みの見物を決め込むというか、安全圏から観察して楽しんでいる——気になれるのも一興。



 ちょっと話は戻りますけど、やはり女性(少なくとも本作の中枢人物)にとっては、本能より理性が優先されるのかもしれないのだと思わされます。性的な奉仕の描写なんか特に。アビゲイル(エマ・ストーン)が彼との初夜を迎える時は、頭の中に彼の存在など皆無に等しいまま、文字通り “片手間に” 済ませていた。それに対し女王(オリビア・コールマン)に対しては誠心誠意、口での奉仕をする……。当時の衛生事情からすれば口での奉仕は相当キツイはずなんだ。発展した現代でさえクサいと思うのに笑、当時の人々の陰部はとんでもない悪臭だったに違いない。

 それでも彼女は女王との繋がりを選んだのだ。正直、男は真逆と言っても良いんじゃないかな。異性(或いは性的な快楽)と高位の人間からの寵愛とを天秤に掛けた際に、果たして何割の男が後者を選べるのか。仮に理性的に選択しようとも、いざ目の前にした瞬間、何割の男が理性を保っていられようか。もちろん、全ての女性が本作のアビゲイルやサラ(レイチェル・ワイズ)と同様とは微塵も思いませんけど、女性の物語だからこそ首を傾げることなく観られたのは正直な所ですし、だからこそ「怖ぁ……」とも思えたんです。

 ついでに言えば、手で扱かれるだけで大きく息を漏らし果ててしまう男がみっともなく見えるのも対比として描かれているような印象で面白かったです。



 没落貴族で、嫌な奴に虐げられ、でも頑張って、ある時イケメンが彼女を見つけてくれて……。振り返ってみれば、少女向け作品の王道にもなり得る要素がてんこ盛りなのに、そのチャンスの度に唾を吐きかけ毒づくような物語。性的描写以上に、そんな世界観がPG指定の理由の一つなのかもしれません。


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