見出し画像

映画『フード・ラック! 食運』感想

予告編
 ↓


 本日、11月25日は、寺門ジモンさんの誕生日。ということで、本日投稿するのは寺門ジモンさんが監督を務められた映画『フード・ラック! 食運』の感想文ですー。


 ……まぁ、公開当時の感想文なので、「現在はコロナ禍~」と言っていたり、何より「お笑い “トリオ”・ダチョウ俱楽部~」と述べていたり……。

 そんなわけで、今の時勢・時節とはズレた内容も含まれていますが、よければ読んでくださいー。


イエスタデイ


 ——「食事をするという事をよく理解されている」——

 この言葉は、今やTVなどでも見かけることがあるイタリアン界の鬼才・小林幸司シェフが、お笑いトリオ・ダチョウ倶楽部のメンバーであり、本作の監督を務めた寺門ジモンを評した際に用いたもの。料理のプロに対してもなかなか厳しめなコメントをすることがある小林シェフにここまで言わせるって、凄すぎて笑っちゃいます。

 本作はジモンフリーク(?笑)ないしは、寺門ジモンについて多少の知識がある人ならきっと面白いと思えるはず。あくまで個人的にですが、『アメトーーク!』DVD29巻の特典映像をチェックしてから本作を観ると、より良いんじゃないかな。



 主人公・佐藤良人(NAOTO)は、焼肉奉行という言葉では収まらないほど、肉の焼き方、食し方にうるさい細かい。もっと言えば、肉に限らず食事全般についても同様。フィクションだからこそ面白いキャラクターですが、実際に一緒に焼肉を食べに行くかと問われれば断りたくなる人も多いかもしれません。

 しかし、そんな良人の姿は、もはや通常運転の寺門ジモン。この物語の主人公は、本作の監督・寺門ジモンの権化のようなキャラクターだと感じさせてくれます。本作は、「芸能界一の変わり者」とまで言われるジモンさんの食へのこだわり、食についての想いを、自身の権化を通して表現しようとした映画なのかもしれません。



 “寺門ジモン” は紛うことなきお笑い芸人。それ故に、“寺門ジモン” という存在で活動することは “お笑い” へと昇華されていく。笑いを外して真面目なことを言おうとすれば、本人の意思とは関係なしに、その姿勢そのものをコメディに変えられる。「やっぱり変わっている」「独特」「お客さんシーンとしてるよw」……etc.

 もちろんそれが面白いし、周囲も本人も楽しそうにしているからこそ “芸能界一の変わり者・寺門ジモン” であり続けられるのでしょうし、自身の信念を曲げてまで他人に迎合しないが故の凸凹感がダチョウ倶楽部の魅力にも繋がっているのかもしれません。

 しかし、そのことによってジモンさんの食への想いが認識されずに「こだわりが強い」「我が道を行く」といった、当事者をマイノリティにさせる形容で片付けられがち。だからこそ映画という手段を選んだんじゃないかと思えてしまうんです。

 この映画は、寺門ジモンによる焼肉版『イエスタデイ』(感想文リンク)みたいなものなんじゃないかな。ビートルズへの感謝や愛、リスペクトが込められた映画『イエスタデイ』と同様。焼肉、そして食への感謝、敬意、そして愛を語ったラブレタームービー。二時間前後のドラマを通し、観客に想いを共感・共有してもらい、セリフやモノローグで言語化した内容以上の想いを表現するという、これぞまさしく “映画だからできること” の一つ。めっちゃ良い映画だと思います。



 内容が内容だけにやたらと腹が減ってくる本作は、各所で細かな描写が活きている印象。混雑していて騒がしい店内にあったとしても、肉を焼くその時だけは周囲のボリュームが下がり「ジュー…」という、肉が焼けていく音ばかりが大きくなっていく。観客がそれに集中することと同時に、良人が肉の焼き具合に集中していることがよくわかります。

 今思えば、肉に限らず、本作の最初の食事シーンでアジフライが出てくるのを待つ際も同様でした。「この店は食べログで……」といった浅い会話が横で繰り広げられる中、それを物ともせず、アジフライが揚げられる音に集中する良人と、大きめに聞こえてくる「ジュワー…ッ」「パチッ…パチッ…」という揚げ油の音。初っ端から “お腹が減る”、“食事に集中する主人公” が表現されていたシーン。


 ラストシーンも素敵でした。子供の頃、良人が座っていた位置(スクリーン左側)に静香(土屋太鳳)が座り、良人の母(りょう)が立っていた位置(スクリーン右側)に良人が立つ……。誰が、誰のために、その食事を作ったかを、同じ構図を用いるだけで理解させてくれる素晴らしい演出。

 でも直後のカットでは、良人が再び左側に座り、前を見据えている。「これから頑張ってやっていくぞ」という気概の中に、子供の頃に母から学んだ大切なことを思い出す、或いは忘れないという心意気を浮き彫りにするかのような、原点回帰をも想像させる座り位置。

 そしてエンドロール後の “ぬか漬けの写真” も見事。劇中で「口の中をサッパリさせてくれる。だからもっと焼肉を食べたくなる」と説明されていたぬか漬けで終幕することは、もしかしたら「映画では満足せずに、実際に食べに行こう!」みたいな意味もあったのかな? まぁ現在はコロナ禍ということもあるから、色々と大変みたいですけどね泣。


#映画 #映画感想 #映画レビュー #映画感想文 #コンテンツ会議 #焼肉 #食事 #寺門ジモン #ダチョウ俱楽部 #アメトーーク #フード・ラック #食運


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?