見出し画像

JAIST社会人セミナー「明日からクラウドファンディング」

JAIST社会人セミナー2018 地域人材育成セミナー。
2019年2月12日「バレンタインウィーク特番」として開催されたのは、

明日からクラウドファンディング
 ~優れた社会的事業への賛同を集めるための戦略~

講師は、株式会社ACT NOW・代表取締役の穴田ゆかさん。北海道を中心に、地域で生活・活動する人々による「地域活性化」「自己実現」を支援するクラウドファンディングサービス事業を展開されています。

講師:穴田ゆかさんの略歴

小樽商科大学大学院卒業、地元コンサルティング会社での勤務を経て、革製品製造販売会社で営業・マーケティング・販促企画の事業責任者を務められた後、2015年よりACT NOWの立ち上げに参画されて現在に至ります。
北海道全域でクラウドファンディングを活用したプロジェクトに携わり、多くの実績を上げておられます。

地元の北海道が大好きで、地元の活性化に関わること、また、地域に根ざして独自のプロジェクトを興して活動される人々を応援することに強い喜びを感じておられるとのことです。ちなみに、穴田さんが北海道外でクラウドファンディングのセミナーを実施するのは今回がはじめてだったそうです。

クラウドファンディングとは

不特定多数の人がインターネット経由で財源の提供や協力を行うことで、自身のプロジェクトを実行したい人やグループが資金調達の支援を得るために活用するしくみ。それがクラウドファンディングです。

集まった資金が目標金額に達するなどしてプロジェクト実行の運びとなった際には、資金提供・協力をした人々へ何らかのお礼を返します。このときの見返りとしては、プロジェクトの成果物(制作物、生産品、それらに支援者の名前を掲載すること、その他サービス)とすることが多いようです。

こういった返礼を設けない、いわゆる「寄付」の形態もあり(寄付型)、事業寄りの、株や事業の利益配分でリターンを提供する形態(金融型)もありますが、一般的にクラウドファンディングと言うときには、前段の「購入型」と「寄付型」の2つを指します。

日本では、2011年3月の東日本大震災をきっかけにクラウドファンディングの認知度が高まったとされており、それ以来支援者数は急速に増加していますが、一方で、このような資金調達のあり方は、何も今の時代に始まったことではないようです。

鎌倉時代の勧進帳や、お寺の建設・改修・修復のために檀家さんから寄付を募ること、また、世界的にも、アメリカで自由の女神の台座部分を建設する資金、フランスではルーブル美術館の収蔵作品を修復する資金、17世紀初頭の書籍出版資金など…すべて今で言うところのクラウドファンディングに当たるものであるということです。昨今ではインターネットを利用して行われているに過ぎず、実は古くから世界で行われてきたことだったのです。

ちなみに、インターネットを利用するだけに「クラウド」が「雲(cloud)」を指すものと思われがちですが、正しくは「群衆(crowd)」を指します。

クラウド = 群衆(crowd)
ファンディング = 資金調達(funding)

インターネットの有無には関係なく、古くから行われてきた「群衆による資金調達」。こうしてみると、クラウドファンディングを知らなかった方にとっても案外身近なものだという感じがしてくるのではないでしょうか?

クラウドファンディングの精神

・誰でもちょっと試せる。気軽に挑戦ができる。
・皆で助け合おう! 皆で応援しよう!
・東京などの大都市に出なくともやりたいことを実現したい!

地域活性化につながる独自のサービスを提供して地方を盛り上げたい、人々や社会に貢献したいといった思いがある…
あるいは地域のことには限らずとも、やりたい事業・社会貢献・創作活動、それらによって広めたいものごとや届けたい思いがある…

 だけど資金がない…足りない…
 資金どうやって調達すんの…
 思いや掛け声だけで終わりそう…

そういうときにこそ、クラウドファンディングによる資金調達が適していると言えます。特に、金融機関の商品や融資ではカバーできない・しきれない活動に挑戦しようというときにはうってつけの手段でしょう。

一方では、ある活動を応援したい人がいて、また、活動に共感する人が出てきて、それぞれできる範囲の支援をする。

資金提供をした支援者への見返りは、資金返済などの金銭以外の手段(返礼品など)によって提供することが可能で、そのことが、支援者の応援する気持ちや共感をさらに大きくしていく。

それこそ「多様性」と「助け合い」の精神と言えるでしょう。

また、調達された資金が確実に目的通りに使われるという透明性が、資金の使途が問題になりがちな「募金」とは異なる点であるということも特色で、お金を差し出した支援者にとっては大きな安心感にもなります。

クラウドファンディングの事例

セミナーの中では、北海道での実績を中心に多くの事例が紹介されました。

・島の景観を保持したい
  →海岸のゴミ撤去
・地元に名物を
  →特産品を応用した洋菓子の開発、飲料商品の開発
・町おこしに
  →町の食品や工芸作品の生産者を商工会が応援
・ご当地コスメを作りたい
  →コスメ製品の開発
・お茶文化を広めたい
  →茶店をオープン
スポーツの知名度UP、アスリートの支援
・町とアートの架け橋を次世代へ
  →劇場舞台装置の購入

実に多種多様な思いを実現するためにクラウドファンディングが活用されていることがわかりました。事例によっては、メディアに取り上げられたり、地方の行政からの物的支援が得られたりということもあるようです。

クラウドファンディングの効果

クラウドファンディングを活用することによる効果としては、資金支援の獲得以外の側面もあるということが紹介されました。

自分がやりたい活動や実現したいものごとをPRする手段としても、新規顧客や販路の開拓をする手段としても有効であるということです。

さらに、資金を出してまで応援してくれる人は間違いなく良客であるという判断ができること、それが支援に対する返礼やプロジェクトのプランニングにフィードバックをもたらす可能性にもつながり得るということ、また、活動や商品、果ては自分自身のファンの拡大…多くの効果が見込まれます。

実行するにあたって大切なこと

クラウドファンディングを活用したプロジェクトを実行するにあたって大切なことも、セミナーの中でかなり詳しく紹介されました。

プランニングの観点では、事例をよく研究した上で、これらのことをよく練りあげ、誰に向けたどんなプロジェクトであるかを明確にすること。

1. 問題提起(悩みはなにか)
2. 解決手段(悩みを解決するためにどんな取り組みをするか)
3. 解決後の姿・結果
4. ターゲット
5. メンバー

リソースの観点では、資金や見返り、プロジェクトの期間を、活動の規模や身の丈にあったものになるように設定すること。特に資金面では以下のことに留意すること。

・集めたい金額は、集められる金額とは違う
・目標金額の1/3は自分の直接の知り合いから集めることが必須である

これらをすべて引っくるめて「如何に共感を得るか」。その共感ポイントをストーリーとして見せられるかが非常に大切であるということ。

プロジェクトを開始したら、自分がメディアになって、あらゆる手段を使ってPRすること。

メールやSNSなど、ネットを活用して拡散
チラシ作成・配布による宣伝
コミュニティやイベントへの参加、あるいは開催によってクチコミで拡散

プロジェクトを立ち上げた人の顔が見えること、毎日のように活動を広報することが成功への重要なポイントになること、また、ネットを活用するだけではなく、オフラインの場や手元に活動の概要が残ることもとても重要であるとも紹介されました。

所感

セミナーに参加する前には、クラウドファンディングを活用したプロジェクトに資金支援を行ったことが一度だけありました。

知り合いのジャズミュージシャン(プロの、です!)がCD作成・ライブツアーをするためのプロジェクトを知って、北陸でのライブで聴いた非常にエキサイティングかつ繊細な音楽をCD作品として創作する活動に一役買いたいという思いで支援をしました。プロジェクトが成立してから制作されたCDを返礼品としていただき、期待に違わぬ素晴らしい音楽を楽しみ、さらにはそのCDに自分の名前がクレジットされているのを見たときにはなんとも言えない高揚感がありました。

そんな経験があって、クラウドファンディングで支援をする幸福感を少しは知っていた状態でセミナーに参加したわけですが、プロジェクトを支援をする側の視点だけではなく、プロジェクトを立ち上げて資金を調達する側の視点から見た特色や実行のノウハウを ~ここまで話してもいいのか?と思ってしまうほどの~ 解説によって知ることができました。

殊に印象的だったのはこのような点でした。

・地域のPR、地元の知名度UP、その他多種多様な活動に有効な手段。
・プロジェクトの全額を不特定多数から調達するわけではない(そう考えることは成功につながらない)。
・返礼品を設定する場合は、支援者との間の「売買契約」が成立しており、返礼の実行を守る責任が生じている。
・プロジェクトを立ち上げた本人が自らメディアになり、オープンになる。
・アイディア次第では、支援者の好みや嗜好を商品に反映できる。

クラウドファンディングを用いての活動に限らず、起業などの準備をするにあたっての基本的な考えかた、活動を興す本質も知ることができる内容だったと思います。

このようなことに携わる、あるいは興す経験には無縁だった自分にとっては、新たなものの見かたを多く知ることができた、非常に有意義なセミナーでした。

JAIST社会人セミナーについて

JAIST(ジャイスト)とは、北陸先端科学技術大学院大学の略称です。
この大学自体は石川県能美市にありますが、金沢駅前の日航ホテルに隣接する「ポルテ金沢」のオフィス棟の中に、金沢駅前オフィスとしてやや小規模な研修スペースがあります。

JAIST社会人セミナーは、毎月後半の水曜日に開催されています。
セミナーの趣旨は「社会課題の解決をデザインする」で、以下のようなニーズに応えるための人材育成・地域貢献です。

社会から:地方創生・地域再生したい
産業から:コラボできる専門人材が必要
個人は :自己投資として学び直したい

事前の申し込みは必要ですが、受講にあたっての前提知識や資格のようなものは特にありません。誰でも無料で参加できます。

自身の業務・活動などへインプットするための学びとしてのみならず、地域人材に関するニーズ、新しい育成方法など、最新の人材育成について意見交換する場として有益なセミナー、ぜひどうぞ!

北陸先端科学技術大学院大学ホームページ:
 https://www.jaist.ac.jp/index.html

JAIST社会人セミナー案内(事前申し込みはここからできます):
 https://www.social-jaist.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?