ヒトよ、ネコと和解せよ -12-
金色の巨人ともふもふした文福茶釜が同時に放った拳撃が双方の顔面に全く同時に食い込むと、アスファルトを火花と共に削りながら後方へと吹き飛ぶ。
絶え間なくたかってくるメカネコ兵器の群れをやぶ蚊を払う様に徒手空拳で叩き払いながら、俺は勝負の行方を見守った。
「フギャアアアアアアアオオオオオオン!!!」
クロスカウンターで距離が離れた双方の内、ネコマゲドンはその丸い瞳から再度紅い魔眼光線を放つ!真正面から受け止める金色のセクト・マキナ!傷ついた胸部の獅子が咆哮をあげるとそのアギトから剣の柄が飛び出す!
夕日の様にその身を輝かせるセクト・マキナは獅子の口から剣を引き抜くと真っ向から面妖なる文福茶釜型兵器へと突貫する!
「獅子王雷刃剣!稲妻斬りいいいいぃぃぃぃっ!!!!」
ネコマゲドンの強固なる茶釜装甲に、真横一文字に夕光めいた軌跡が走る。光をまとって駆け抜けたセクト・マキナが振るいし、金色の雷撃まとう斬撃がこの恐るべきネコ妖怪の胴体を切り裂いたのだ。
『バカなっ!人間の、ただの一匹も始末できないままに……敗れるのか、私は!』
「ただの一人だってやらせないぜ!そしたら取り返しはつかないからな!」
「ふにゃーおーん!」
Fuちゃんの勝利の雄たけびと共に、ネコマゲドンの巨体は小爆発を繰り返し一時の夢幻の様に光が崩れ落ちて消滅した。同時に執拗に俺の機体に噛みついていたメカネコ兵器達も姿を消し、後には数えきれないネコの群れが残った。
しかして、それらのネコの群れも正気に返るとすぐさま走り去っていき、後には一匹の白いネコマタが遺された。腹だし降参ポーズのまま呆然とするネコマタに、セクト・マキナの胸部コクピットを開いてM・NとFuちゃんがエスカレーションワイヤーによって大地に降り立つ。
死んでいるのかと思うほどに動かないネコマタの顔にFuちゃんの肉球パンチが食い込む。反射的にネコパンチし返すネコマタだったが、すぐさまふてた様に腹だし降参ポーズに戻った。
『……私の負けだ、好きにしろ』
続いて機体顕現を解除し駆け寄った俺の目の前で、M・Nは観念した白猫を前にかがみこんでその体をそっと抱き上げてやった。
『何の真似だ?』
「好きにしていいんだろ、ならこれからお前と同じ思いするネコが増えないよう手を貸してくれないか」
「ふーにゃー」
抱き上げられた白猫は前足を伸ばしてM・Nの頬をむにむにとこねる。
『本気で言っているのか』
「俺は本気も本気だって、なーFuちゃん」
「にゃう」
白猫は頬こねをやめると降参したかのようにM・Nに身をゆだねた。
『お前には負けたよ、人間。私の負けだ』
「にゃーあー!」
「だってさ、R・V」
何とか丸く収まったのを確認すると俺も肩をすくめた。ネコの誘拐がとんだ大騒動になったものだ。いつしか夕日に変わった陽光が、白猫を黄色く染めていた。
ーーーーー
既に夜に入った時間帯、バーメキシコはパルプとビールを求める仕事上がりの社会人たちでごった返していた。
「ヨーシヨシヨシヨシ、ほらコイツが欲しいかヨシヨシヨシヨシ!」
俺達が大立ち回りを演じている間、すっかり仲良くなったのかJ・Qは保護した黒猫相手に手からキャットフードを与えていた。黒猫の方もがっついて食べているので随分と懐いた物である。と、彼の方から白猫を抱きかかえてきたM・Nと俺の姿を認めて出迎えてくれた。
「おーっと、無事解決したか?」
「おう、思ったよりこう……おおごとだったがな」
「ただいま、J・Q」
白猫はM・Nの腕からテーブルに降りるとぐるりと丸くなってこちらを醒めた眼で見つめてくる。俺も撫でてみようとしたらふいっとよけられてしまった。
『雑な手つきで触ろうとするな』
「ちぇー」
「なんとまあ、コイツ、テレパシーが使えるのか!?」
追加でついてきた白猫の念話を受け、興味津々で覗き込むJ・Qとその姿を見て苦笑するM・N。続いてアフロからFuちゃんも飛び出すと、テーブルの上でごろんと脱力した。さらに大あくび。
「ふにゃ~……」
さらにはM・Nも力尽きたのかネコが寝ているテーブルにアフロを投下して大いびきを立てて寝始めた。そこに黒猫も混ざってもふもふバイキングだ。
「随分と難行だったようじゃの、ほれCORONAじゃ」
「サンキュー、まあ丸く収まったんだからよしとするさ」
テーブルに盛られた毛玉の山を見ながらCORONAを呷る。どうかこの白猫に今後は良き時間が与えられますように、って奴だ。
【ヒトよ、ネコと和解せよ -12-終わり】
作者注記
本作はNoteに投稿しているパルプスリンガーをモチーフに小説を書く、という企画の六作目だ。参加者は23人?いるので後17本だ、ガンバレ俺。
と言う訳で今回の主役はこちらの方。
ネコちゃんのあるじ、牧野なおき=サンだ!ワオワオ!
アイコンからしてこう、アフロでふーちゃんの飼い主、という事でパルプ映えするような感じにアフロにネコが住んでいるような感じになった。どうしてこうなった。彼は既に三作も小説をしっかり完結させているすごいおとこでもある。スゴイ!
ストーリーもネコちゃんを基軸にしてとことんネコまみれになってしまったのであった。
乗機である『セクト・マキナ』はエジプトの猫科の神であるセクメト神と機械仕掛けという意味のマキナを掛け合わせてもじった、『機械仕掛けの猫神』というニュアンスで名づけ、呼ぶと来る、王道のスーパーロボット装備と勇者ロボの装備を掛け合わせたような感じの機体でデザインしました。
以上、ご参加、ありがとうございました。
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