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ノースシ・ノーライフ(4-4)

「フジオ!何をしている!早く来い!」

 両面ガラス張りの通路を駆け抜けトーフ工場大ホールへとひた走るレインボーフードのニンジャ聴力にがなり立てる甲高い声が届く。合間に嵐の様な銃声、続いて野太い悲鳴。

 大ホールの二階吹き抜け部分へと駆け付けたレインボーフードの視界に入った物は、控えめにいって地獄だ。ツキジでももう少し穏便だろう。辺り一面にはネギトロめいた死体がいくつも散乱し、服の断片からアナキスト、見学先導労働者、ヤクザが混ざっているのが見て取れる!

「スッゾコ、グワーッ!」

 身を盾に護衛の務めを果たすクローンヤクザ!その背後に居るのはブロンドオカッパに身なりの良いスーツを白濁トーフエキスで台無しにされた少年である!そしてその少年を巻き込まんが如く暴走しているテツカカシめいたロボ!モーターヤブだ!

 レインボーフードは迷わず大ホール二階から飛び降りると落下の勢いをかりて全力のアンブッシュ・チョップを鋼鉄のドン・キホーテへと振り下ろす!

「イイイイイイヤアアアアアアーッ!!!」

カ~~~~~ン♪

 ナムサン!ニンジャ渾身のチョップと言えどモーターヤブの装甲を切り裂くのは一筋縄ではいかない!颯爽と現れて全くダメージの入っていないチョップを繰り出したニンジャに唖然とするラオモト・チバ!即座に叱責する!

「ぼくの前でなんだそのブザマは!大体誰だお前は!?」
「ボッチャン!今お助けします!」

 渾身の一撃が通らなくてもなおレインボーフードの闘志は衰えていない!なおもチバを狙わんとするモーターヤブのガトリングへとなけなしのスリケンを投げつけ狙いを逸らす!壁から天井へと行われるガトリング殺戮掃射銃撃!その時である!

「ピガーッ!!?」

 トーフ工場大ホール、トーフステンドグラスをぶち破り回転エントリーした漆黒のニンジャがモーターヤブの頭上に降り来てカタナによる刺突を行ったのだ!メイン回路を一撃で破壊され即座に停止するモーターヤブ!

 漆黒のニンジャはすぐさまカタナをガラクタから引き抜くとラオモト・チバの前に空中回転ジャンプからの着地!自身の装束がトーフエキスまみれになるのもいとわずに少年を抱きかかえて酸鼻極まる地獄大ホールより離脱していく!

「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ……!ハァー……」

 事態が収束したのを目の当たりにし、脱力してへたり込むレインボーフード。尻にぺちゃりとトーフエキスが付くがそんなことを気にする余裕は彼にはなかった。

「こ……コワカッタ……」

 ニンジャアドレナリンは既に彼の血中より消え去り、カラテも振り絞った今は笑ってしまいたくなるほどに足腰が震えている。一介のサンシタ・スシ職人ニンジャに過ぎないレインボーフードにとってここまで真っ先にたどり着けただけでも奇跡に等しい。ましてやモーターヤブと戦うなど自殺行為である、ダークニンジャの救援が無ければどうなっていた事やら。

 過度の運動によってあがる息を整えた頃には、辺りに散乱する労働者やクローンヤクザ、アナキストの無惨な遺体が目に映った。如何なる立場の元で生きようと、死んでしまえばみなブッダである。レインボーフードはふらつきながら立ち上がると奥ゆかしく両手を合わせた。

「ナムアミダ、ブッダエイメン……」

 既にトーフ工場には火の手が燃え広がり、徐々に建物全体を飲み込みつつあった。埋葬できぬことを詫びながらレインボーフードもまた、この地獄から脱出するのであった。

【ノースシ・ノーライフ(4-4):終わり:4-5に続く

レインボーフードエピソード第一話についてはこちら。

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