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ヒトよ、ネコと和解せよ -9-

『昔話をしよう。私とかつての主人の話を』

 緊張が走る。このネコマタが理由を語るのは恐らくは、和解目的ではなく決意表明だ。うーうー唸るFuちゃん。泰然とした大物感と共にネコマタは自身の過去を語った。

『私はかつてタダの白猫であり、ある老婦人に飼われていた。当然だな?野良でネコマタに至る様な寿命を積み重ねることは困難だからな』
「ふううううううっ」
『水を差すな、どうせお前の言葉などこのろくでもない人間共には伝わらないだろう?』
「うにゃっ!」

 白いネコマタの昔語りに割って鳴くFuちゃんだが、その言葉の真意は確かに俺達には伝わらない。

『独り暮らしだった主人にとっては私だけが唯一の同居人だった。私にとっても主人だけが唯一の家族だった。私は自分の寿命が尽きるまで主人に寄り添うつもりだったが……そうはならなかった』

 黙ったまま続きを待つ俺と、この後の展開が想像できたのか先に涙ぐみ始めるM・Nと、そんな主人を舐めてなだめるFuちゃん。

『いつもと変わらない昼下がり、突如主人が倒れたのだ。主人が倒れた時はまだ意識があった。私はたまたま空いていた窓を抜けて必死に助けを求めたとも。だがただの白猫の訴えなどお前ら人間の誰が理解できる?誰にも分かってもらえなかったさ。途方に暮れた私が戻った時には何もかも終わっていた』

 ネコマタの情念に昏く、激しい憎悪が混じり念話を通して俺達にまで伝わってきた。このネコマタの行動理念は、そうか。

『それだけなら、それだけならまだ納得は出来たかもしれん。死は誰もが迎えるものだ。だが、息絶えた私の主人は誰にもかえりみられる事はなかった。その遺体が腐り、溶け落ち、半ば骨が露出した頃になってようやく初めて人間が訪れた。その位、主人はお前たち人間に関心を持たれることはなかったのだ』
「ふにゃー……」
『ふざけるな!幸福な環境に置かれただけの貴様に私の怒りがわかるものか!』

 青かったネコマタの瞳がレッドムーンめいて紅く輝く。

「お前が望んでいるのは、復讐か」
『そうとも!もはや主人が望もうと望むまいと、我が主人を見殺し、葬る事さえしなかった貴様ら人間は許しておけぬ!滅びの時だ!愚かな人間共め!』

 痛烈な罵倒と共にネコマタの姿が光の粒子となって掻き消え、同時に周囲にたむろしていたネコ達も同様に姿を消していく。やはりあのネコマタの過去語りは時間稼ぎであり、同時に宣戦布告でもあった。

 盛大な泣き声に振り返るとM・Nの方は今の話を聞いて号泣していた。目をこする主を肉球でもってぺしぺし叩き元気づけるFuちゃん。

「こんな、こんなことって……」
「おい、やれるかM・N」
「やれる、やるとも。あのネコマタにこれ以上罪を重ねさせちゃいけない。俺達で止めなきゃ」

 鼻をすすった後自ら頬をはたいて気合を入れるM・N。これなら大丈夫だと、俺も彼を信じる。

「先に行く。そっちもすぐに乗機を呼んでくれ」
「ああ、こういう時は呼び出し式ってふっべーん!」
「自分でそうしたんだろ」

 苦笑しつつ、俺は既に外にスタンバイさせていた乗機をスマホでもって起動した。

【ヒトよ、ネコと和解せよ -9-終わり:-10-へと続く

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