ヒトよ、ネコと和解せよ -7-

　銃声が閉鎖した陰気なオフィスビルエントランスに反響する。威嚇射撃を行った途端、ネコ憑きゾンビーの注目が俺に集中。頭部に張り付いたネコちゃんの目が光り、俺を牽制した。

　既にM・NとFuちゃんは観葉植物から脱しておざなりにおかれたオフィスベンチに身を低めて待機している。どう見てもアフロがはみ出してしまっているが、ネコゾンビーはそこまで過敏ではないらしく気にされていない。

　見た所ネコゾンビーはさしたる武器は持っていなそうだが、平常と異なる状態にある以上はどのような脅威を持っているかは計り知れない。ゆえに俺は油断も慢心もしない。

　まずは目の前までにじり寄ってきた、掴みかかってくる半裸中年男性ネコゾンビーのぷよぷよしたみぞおちにボディブロー。やはり操られていても痛覚までは無かった事にならないのか、前かがみに苦しむ中年ネコゾンビの腕をつかむとスウィングから遠心力をつけて背後に迫ってきていたもう一体のサラリマンネコゾンビへと叩きつける。衝撃に頭部から投げ出されるブチネコとキジネコ。

　昏倒する二人と二匹を踏み越え掴みかかってくるさらなるJKネコゾンビの魔の手を飛び込み前転で回避すると、その腕は俺のそばにあった巨大観葉植物を掴んで若木をへし折るくらいあっさりと捻じ曲げた。

「やはりただのマトという訳ではないな！」

　とはいえさしもの俺もただ操られているだけの連中をバカスカ射殺するほどサイコパスに振り切ってはいない。時間がかかっても全員正気に返さなくては。

　再度天井に向かって空撃ちを重ね、俺に対して注目を集めている間にM・NとFuちゃんがベンチの影から飛び出す。彼らの立ち回りを把握しながらも掴みかかる中年女性主婦ネコゾンビに足払いをかませて転倒させる。

　M・Nは鞘に納めたままのカタナで持って受験生ネコゾンビの脇腹を強かに殴打。痛みに悶える受験生ネコゾンビへFuちゃんの前足が閃く。ネコパンチだ！

「ふしゃーっ！！！」
「グニャーッ！！？」

　その普段のふわふわした様子からは想像できないほど俊敏に、スキを見せた頭部ペルシャネコに襲い掛かったFuちゃんの前足は、的確に相手ネコの顔面を張り飛ばす。合体が解けてもろともに転倒する受験生とペルシャネコ。

　不意打ちに気づいた別の屈強な定年退職無職老人ネコゾンビーがM・Nの方へと向き直るが、その横っ面を空中前転跳躍から襲い掛かったFuちゃんがやはり頭部ミケネコを容赦なくひっかく！

「フギャーッ！！？」

　続けてM・Nが鞘でもってみぞおちを突くと無職老人ネコゾンビーはもんどりうって昏倒、ミケネコもその場で腹だし降参して降伏の意志を示す。残り四体！

　ここまで数が減った所でまだ健在だったJKネコゾンビーがポケットからスマホを取り出したところを、操作に至る前に軍靴の厚い靴底でもって蹴り抜く。蹴りの衝撃で画面が砕けたのを心中で詫びつつもつづいて頭のネコちゃんにデコピン、JKネコゾンビを無力化する。残り三体！

「ふしゃあーっ！！」
「フギャッ！？」

　ここに来て再びFuちゃんの威嚇がさく裂する。動きが止まった三角形に並んだネコゾンビ達にM・Nが振るった胴薙ぎが流れるように決まり、かつての時代劇の殺陣めいてバタバタとネコゾンビーは倒れた。合わせて腹だし降参するネコ達。

　まずはエントランスの警戒ネコゾンビーをクリア。次に上階を目指す。一体どのような奴が黒幕なのか。

【ヒトよ、ネコと和解せよ -7-終わり：-8-へと続く】

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