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パンドラ・イン・ジ・オーシャン -10- #ppslgr

「やあやあ!ようこそお客人!歓迎しよう!」

空洞の中央にあった水晶宮に通された俺達を水晶の玉座から立ち上がって出迎えたのは、一見少女の様に見える存在だった。

伸び放題に跳ね散らかした桜色の髪にこまっしゃくれた感じの不敵な笑みをたたえ、淡いピンク色のフリルで飾られたワンピースをまとったその存在は両手を広げて俺達を迎え入れる。

「二人とも個性的な出で立ちだね!今の陸はそういうのが流行りなのかい?」
「どちらかと言うと流行りに真っ向から逆らってる方だ」
「ふうん、それなら良かった。今の地上がそんな武器庫みたいな恰好しないと生きていけない所じゃなくてね」

自己紹介も後回しに俺を検分してくる少女へ、アハトが咳払いをからめたしなめた。

「姫様、久しぶりの客人にはやる気持ちはわかりますが、せめてちゃんとご挨拶を」
「アハトはそういうとこ本当に折り目ただしいよね。わかったわかった、アイサツから始めようか」

あきれ半分、親愛半分といった面持ちでアハトの指摘に従うと改めて不可思議な雰囲気の統治者はスカートをつまんで会釈して見せる。

「わたしの水槽へようこそ陸の客人。わたしはここを管理運営するモノ、呼び名はオトヒメとでも呼んでくれたまえ。わたしのご先祖様を君たちはそう呼んでるんだろう?」

さらっと明かされる浦島太郎しんじつ。もっともこうして水難した者を囲う街がある以上、竜宮城との関連性はいやがおうにでも結びついてくる物ではあるが。

「では、そのように。私は海洋学者のM・H、こっちはR・V。私達はマグロが出したSOSの真実を確かめにここまで来たの」
「シンディの直訴を受け取ってくれたんだね⁉それなら話がはやい、君達に助けを求めたのは実際わたし達さ」
「で、脅威はあの黒い影、と」
「そう、そう。アイツらは君たちの暦の上では半年前くらいかな?その頃からあの禁忌の大穴から湧き出してきたんだ。ヒドイ悪食でさ、魚達がのべつ幕無しに食い尽くされるもんな上にわたし達じゃ手も足も出ないって感じで詰んじゃって、ね。泣く泣く決死隊を募って助けを求めることにしたんだ」

早口でまくし立てるオトヒメは言葉の後の方になるにつれて声のトーンが下がり、先ほどまではしゃいでいた空気はしりすぼみになっていく。

「情けない話なんだけど、本当にわたし達じゃ、あの禁忌の怪物と戦う力はないんだ。そっちに伝承されてるみたいに凄い力があるって訳じゃない、こうやって拠点を作って引きこもるのが関の山で……どうか、助けてくれないかい?」

深々と頭を下げるオトヒメを前に俺とM・Hは一度視線を合わせて頷くと、彼女の方から回答する。

「協力させていただくわ」
「ああ、シー・ライフ・バランスの維持は俺達にとっても他人事じゃない」
「本当かい!ありがとう!ありがとう二人とも!」

俺達の申し出に感極まって手を握るオトヒメ。その背後で今まで無表情だったアハトがわずかに微笑んだ、ような気がした。

「ところで一つ気になるんだが」
「なんだい?」
「君の種族は、アハトと同じクラゲにあたるのか?」
「フッフーン、クラゲかもしれないし、サンゴか、あるいはヒトデ、もしくはイルカか、それともマグロかもしれない。でもそのものずばりの答えは教えないよ。だって原体を晒すのは君たちの感覚に例えると服を脱いで裸体を晒すみたいな感じですっごい恥ずかしいし、何より乙女は秘密がある方が魅力的だって、そうだろう?」

そんなふうに返されてしまってはにべもない。深堀するのは無粋というものか。

【パンドラ・イン・ジ・オーシャン -10-:終わり:-11-へと続く

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