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賽を振るは、神か人か -8-

世の中には、盛況になるよう祈られて建築、しかるのち誰も住まなかった住居群というのは五万とあるという。そういった空虚なビル街は、人々が溢れ、盛況な時期があった都市とはまた違う雰囲気を持った廃墟となる。

俺と6・Dが降り立ったこの地下ビル街もまた、そのような全く誰も住む事のなかった建物特有の虚無感が漂っている。人の痕跡がないというのはその特徴の一つだ。

クリスが浮遊ランタンの役割をもって周囲を照らすと、うすぼんやりとこの街のうろを満たすべくうごめいている存在が認識できた。

ドローンだ。この街の外周部通路で遭遇したのと似たモデルの四足歩行ドローンがビルの建造を進めている。良く見ればビルの林は建築中の物が少なくない。という事は、この街は誰も住んだことがないままに建築が進められているのだ。

「豪邸の地下に未住居のビル群、か」
「つながる様なつながらない様な……あーっ!もやもやする!」

ざかざかとその特徴的なラクーンの髪を掻きむしった後、はたと6・Dが動きを止めた。

「どうした?」
「あー……あくまで推測って前提で聞いてほしいんだが」
「聞こう」

暗がりの中設置された、真新しいベンチに腰掛ける。今の所このエリアのドローンがこちらを気にかける様子はない。続いて隣に座り込む6・D。

「ひとーつ、大衆扇動プログラムとこの誰も住んだことがない地下街を結びつける理由が思い浮かんだんだ」
「どちらも、大勢の人間が対象だな」
「ああ、つまり俺達がかかわった暴動の発端は、この街に住まわせる連中を制御する為のテストの一環じゃないかってだな」

そこまで述べた6・Dの予想を裏付けるようにクリスが上下浮遊する。

「マスターの推論は65%の確率で正解と評価できます」
「微妙なラインじゃね?つかそれホメてんの」
「現状推定できる事由の中ではもっとも高い確率です」
「ボチボチだな」

ドローン達は相変わらずせわしなく建築作業を続けている。三角コーンに台形、球体に脚が生えているタイプもあった。

「仮にその線だとして、ホワイダニット、何故そんなことをするのか……まではどうだ?」
「んー、パッと思いつくのならそうだな。ここが緊急避難用のシェルターで、民衆コントロールは閉所での長期間生活のために大衆を暴走させないためってのは、どうだ?」
「戦争か、気象変動か、何にせよ地表に住めなくなったことを想定して、という事だな」
「そゆこと」

6・Dが今説明してくれた様な事を考える連中を、俗にプレッパーと呼ぶと聞いたことがある。上の豪勢な邸宅と合わせて考えると屋敷の主人も同類だと予想できる。もっとも、街を丸ごと一つ用意とは中々太っ腹なのかそれとも寂しがりが故か。

「しかし、仮に善意からだとしてリアルのネットワークで大々的に大衆コントロールをテストされるのは困りものだな」
「自覚はあるでしょーよ、現に門の前では追い払われそうになったし、玄関入ったら出口のない地下通路に送り込まれたし。だけど、んん?」

話し込んでいた俺達をいつの間にかドローンの群れが包囲していた。ガシャガシャと足音を立てて犯罪者を警戒する警官めいて円陣を組むドローンの向こうで、どういう訳か他のドローンがピラミッド組体操を始める。

人間には到底不可能な精度でどんどん高さを増していったドローン達はやがて、自らをパーツとして組み換え一体の巨大なサソリめいたドローンへと変形していった。

「なるほど、これはビンゴかもな」

【賽を振るは、神か人か -8-:終わり:-9-へ続く

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