全裸の呼び声 -60- #ppslgr
「ハァ?」
レイヴンはとうとう、相方がこの異常空間におけるSAN値チェックに失敗し、狂気に陥ったのかと相手の顔をマジマジ覗き込んだ。だが、アノートの瞳はこれっぽっちの曇りも淀みもなく、理知の奥ゆかしい輝きがあるばかりだった。
そうこうしている間にも光と闇の全裸露出エネルギーのせめぎあいはジリジリと広がり、少しずつ彼らのもとへインディージョーンズ防壁めいてにじり寄ってきている。もはや一刻の猶予もない。このままでは全員まとめて露出力にすり潰され、すりごまめいた肉片になるばかりだ。
「ええい、ままよ!お題は!?」
「なんでもいい、質も問わない」
「しかし虚無からじゃ何も思いつかん!」
「ではドブヶ丘テーマで、とにかくなんでもいいんだ、なんでも!」
かくして、全裸露出アーマゲドンを目の前にした死の胡乱大喜利大会が始まった。何も思いつかず言いよどめば、圧縮ごみ処理めいた死に様を晒すことになるだろう。
「ドブヶ丘にある夢の山の一角には 未知の放射線を放つ汚染物質が秘匿されており、悪用を恐れた発見者が封印したが、その場所はドブヶ丘の重胡乱ヨタモノ達の全身に入れ墨暗号として分散保管されている」
「それゴールデンカムイでしょ!」
「最近読み終わったんだ……!」
「見る相手は編集のプロでもなければ、商業誌に載せる訳でもない、とにかく早く!」
アノートの声はつとめてシリアスだった。お社の正面石畳では二人の全裸中年男性が今も露出ポージング行為に励み、そのすぐ横では大の大人が必死な顔で胡乱な与太話に向き合っている。何たる末法めいた光景であろうか。これが聖書にも記されているゼンラポカリプスだというのだろうか?
「ドブヶ丘の名物銭湯では醤油とみまごうほどの黒湯に、廃棄物の発酵熱で生じた天然サウナ、目も覚めるほど美しい青色の水風呂が人気だが、入浴後は奇行に及ぶほど調子が良くなる」
「絶対それ入っちゃダメなやつ!?」
「ドブヶ丘共立女子校で最も部員が多いのは唐揚げバレー部だけど、煮玉子ドッジボール部と熱々おでんアメフト部も人気の部活」
「食べ物を粗末にしないで!?というか女子校でアメフト!?」
「試合終了後はドブヶ丘の名物ドブュッシーがおいしくいただくので実際SDGsにも配慮されており何も問題はない」
「問題しかないですわ!?」
「ドブヶ丘にもSGDsの波は来ていて、今のトレンドは廃品回収パルクール。限られた時間内に、廃棄自動販売機、廃墟、自律稼働移動販売機などから未回収の資源をどれだけ回収できるか競うクールなスポーツで、毎日新横浜ダチョウの卵や武装ミノムシの抜け殻などが大量回収されるんだ」
「SDGsとは……宇宙とは……」
いい加減突っ込みが追いつかなくなりSAN値チェック失敗し始めた宇宙カピバラ顔の祭神をよそに、二人は胡乱与太話のギアを上げていく。それは露出対胡乱の、イッポも引かれぬ死闘であった。
【全裸の呼び声 -60-:終わり|-61-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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