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賽を振るは、神か人か -7-

「これは、どうも思ってたのとは違う」
「確かに、研究施設らしくはないな」

数度、四足歩行ドローンを排除しその都度施設の地形データを回収すること2時間。得られた地図が示した形はありきたりな地下研究施設の構造とは全く異なる物だった。

「長方形、俺達が降ろされたのが片方の短辺で、もう少しで反対側の短辺に着くか」
「通った通路には扉はなかったし、何のためにこんな形状をしてるんだろ」
「通路の内側に広大な空間が存在すると推定されますが、内部構造の詳細については今まで遭遇したドローン群のメモリーには記録されていませんでした」
「空間、ねぇ……」

クリスが灰色の味気ない壁に映し出したホログラムマップを指先でなぞり、構造を改める。侵入口と反対側の短辺に、意味ありげなへこんだ地形。

「入口があるとしたら、ここだと思うが」
「はい、私の推論も同様です。敵対ドローンのAIルーチンではそこをただの壁だと認識するように指示されていました」
「わざわざ周遊するドローンにも避けるように指示しているんであれば、重要な存在がある可能性が高いか」

行く先が明確になると、6・Dはクリスに指示しマップを閉ざす。クリスの放つ光量が下がり、元の様に辺りは迷宮の奥底のそれにも似た暗闇が支配する。

―――――

途中複数の歩行ドローンとの遭遇があったものの、さしたる障害とせずに突破した俺達がたどり着いたのは電子論理錠で閉ざされた巨大な扉だった。

「なるほど、あからさまだな」
「やっぱり研究施設、じゃあないにしてもなんなんだろうな、ここ」
「明確な回答を提示するためには情報が不足しています」
「なら、さっさと入ろうぜ」

6・Dは小手めいて左腕に括り付けられたハンドヘルドPCを開くと巨大なる扉、その電子論理錠へと有線接続する。幸いここは通電しているのか、電子論理錠のアクセスランプがつく。

「クリス、俺のPCをファイアウォール代わりにコイツをハックしてくれ。ヤバくなったら即通信遮断な」
「了解です」

より高度なセキュリティがかかっているのは見た目ですら感じ取れるこの扉を前に、取れる防護策を取るのは適切な判断だ。なにせクリスがいなくなればろくに光源がない状態で暗闇の中を出口もなく徘徊する事になる。

空気が張りつめる中、アクセスランプがグリーンの光を放った。ついで、重苦しい威圧的存在感の金属扉がゆっくりと奥へ開いていく。

「なんだ……こりゃ」
「フムン」

先行して進んだクリスがもたらす光がぼんやりと映し出したのは、一言で言うと、街だ。それも東京都心部を模倣したかのようにビルが立ち並んでいる。ビル街の中を何かがせわしなく動き回っている気配が感じ取れるが、暗さゆえにはっきりと何かを判別するまでには至らない。

「街、だな」
「待ってくれ、混乱してきた……俺達最初は暴動扇動犯の調査でここに来たんだよな?」
「そうだ。もっとも筋の通っていないちぐはぐな事象など世の中にいくらでもあるが……断定するにはもう少し情報が必要だな」
「いいぜ、むしろセコイインターネッツ扇動犯止まりじゃなくてワクワクしてきたってもんだ」

アサルトライフルのマガジンを入れ替え初弾を装填する6・Dに頷き、俺がフロントとなって空虚な模倣ビル街へとつながる階段を下りていく。造りを見ると元はエスカレーターの様だが、今は一切動く様子がなかった。

【賽を振るは、神か人か -7-:終わり:-8-へ続く

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