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賽を振るは、神か人か -14-

愛機に身を翻させて空を疾駆する俺と対照的にブラック・シックスは嵐の如き防衛兵器群の渦中にて遥か上空へと凄まじい勢いで飛び立った。

二手に分かれて俺達を追う敵の群体を意に介さずに、俺は中央管制塔ビルが可変した白い大型人型兵器へ、銃撃の火線をバレルロール回転機動で避け続ける。目の前のはあの管制塔ロボ。

真っ正面に掲げた大太刀を駆け抜け様に振り下ろせば一瞬のタイムラグの後で相手の巨大なる右腕が崩落。さらには身をひねりながら宙がえり跳躍から、左腕を狙って渾身の一合を繰り出す。手ごたえすらない鋭さで左肩関節を斬り落としては、更に着地から高々と跳躍し鉄仮面を模したような管制塔ロボ頭部を西瓜割りの如く両断。

集約センサーと主要火器を失って硬直する白い巨塔を、蒼光の鎖でもって大地とつなぎ、更には波導障壁でもって覆う。

「人様の亡骸抱いたままに暴れるもんじゃないぞ、と」

手早く次の事態に備えた俺が見上げた天の中央、イクサの高性能カメラがとらえた姿は、身を縮こませたかと思えば背中の六枚羽根を広げて自らの身を包むブラック・シックスの姿。

漆黒に金の目の入ったあの正六面体の姿は、まごう事無きダイスである。だが、6・Dはお遊びでわざわざ四角くなったわけではない。

天高く浮遊しながら徐々に回転速度を上げ、とてつもない速度で回転降下しだしたブラック・シックスはその賽の目から陶器色の光を一斉乱射。下方に寄せ集まっていた防衛兵器群は水に押し流されるアリのごとく光の中に消えていく。

一見見境のない波状攻撃に見えて、正確な照準が行われたそれは、見る間にあれほど募っていた防衛兵器を掃討していった。あまり近場にいれば俺も巻き添えになるとこだがそこはそれ、お互いに誤爆する様なマヌケな醜態はさらさない。

やがて恐るべき殺戮立方体は速度を落としてごく普通のダイスの様に落下。焼けこげた黒い痕跡の真っただ中に転がり落ちては、最終的に目を確定させた。

出たその目は『六』であった。

「管理AIの復旧を検知しました。これより本艦は防衛プログラムを解除し管理AIの管理下に戻ります」

動く物がなくなった浮かぶ瓦礫の島で、厳かに自動防衛プログラムの宣言が響き渡った。

――――――

徐々に黄昏が夜の闇に入れ替わりつつある中、かの侍従は変わり果てた自らが作り上げた船の様子を見て硬直していた。辛うじて船の機能にまでは手をつけずに済んだ物の、元の状態にまで立て直すだけでも中々時間がかかるであろうことは否めない。

「ほら、責任もって行ってこい」
「おい押すなって!」

説得するにしても余りの惨状に声掛けをためらっていた6・Dの背中を押してやる。

「あー、その、なんだ……」
「私は、諦めませんよ?」
「諦めろなんて言いたい訳じゃなくてさ、もっと時間かけて、穏便にやればいいだろ」
「でも、私にはマスターが、もう」
「俺が身元引き受けるから!それで気が済むまで迷惑かけないようにやればいいだろ!」

その言葉は想定していなかったのか、振り向けば驚いた顔を見せるセレン嬢。

「AIに罪を問う法律はまだ立法化されてないからな。事実上の無罪放免だ」
「そうそう、そういう事だから」

ぶっきらぼうに言い放った俺と、軽い調子で促した6・Dの方へと彼女は振り向いて、困った様に微笑んで見せた。

「よろしく、お願いします」

深々と会釈をするセレン嬢に、ようやく気が抜けたのか脱力する6・Dのこめかみに、クリスが食い込んだ。

「マスター、私にもアンドロイド躯体の供与を要求します」
「え!?いや、セレンのメンテナンス費用もあるしそこまではお金が」
「この甲斐性なし」

どうも最近のAIは結構進んでいるらしい。シンギュラリティとやらはもう間もなくかもしれんな。主人に体当たりを繰り返すクリスの姿を見て微笑むセレンの顔を月明りが照らしていた。

【賽を振るは、神か人か -14-:終わり】

作者注記

本作はNoteに投稿しているパルプスリンガーをモチーフに小説を書く、という企画の9作目だ。参加者は23人?いるので後14本だ、ガンバレ俺。

と言う訳で今回の主役はこちらの方。

むつぎはじめ=サンです。ラクーン!要素は髪だけにとどまりました。残念無念。普段は謎めいたオーパーツを主題にしたSFや性癖歪め歪めパルプとかを書いておられるぞ。

AIスキーとみて、ストーリーの流れをそんな感じにしつつなんやかんやあって三角関係に落ち着きました。彼らの関係の行方やいかに(他人ごと)
キャラクター性としてはダイスにすごい拘りがある面を感じたのでやはりそこもストーリーとキャラクター性に組み込む形に。

上記である『ブラック・シックス』もまた、ダイスに可変するウエポンコンテナ六個積みの黒い曲名装甲兵器としてデザイン。最後もしっかりダイスの目が決め手になる形に。

 以上、ご参加、ありがとうございました。

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