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5冊読了(3/24〜5/1)

1『くっすん大黒』町田康

2『かけら』青山七恵

3『警察官白書』古野まほろ

4『巴里マカロンの謎』米澤穂信

5『工学部・水柿助教授の日常』森博嗣


今回の5冊は、文庫本4冊と新書1冊です。
文庫本4冊はすべて小説です。
普段から小説もそれ以外の本も読んでいますが、この時期はなぜか小説を多く読んでいたようです。
特に意識していたわけではないですがそうなりました。
僕は比較的、小説の方が読み終わるのに時間がかかるので、この5冊をそれぞれ読み終えるのに1ヶ月以上かかったみたいですね。
普段は2、3週間で5冊読了するペースですかね。

引っ越しの物件探しをしていて読書時間が減ったということもあるかもしれません。
3月4月は物件情報をサイトで見たり、引っ越しの手順を調べたりすることに時間を費やしていました。
そう、引っ越すんです。
今住んでいるところの更新のタイミングで引っ越すことに決めました。

物件は無事に見つかりました。
引っ越しはもうすぐです。
5月中です。
最近もその準備に追われています。
賃貸契約とか役所への届け出とかインフラ関係の解約・契約とか各種登録住所の変更とか引っ越し業者の手配とか、住居を移す際は色々やることあるんですね。

それぞれやり方を調べて、お手軽だったり料金の安く済む方法を選んだりするのに時間がかかりますね。
最近はウェブ上でサッと出来ちゃうことも多くて、少しずつ便利にはなってきているみたいですけどね。
でもやることは多いから、早くから準備しておいて良かったなぁと思う今日このごろです。
一応引っ越し前にやることは全部済ませて、あとは荷造りのみという状態です。
これがまた大変そうだけど。

全部が理想通りとはいかないし住んでみなきゃわからないけど、今のマンションよりは良いところであるとは思います。
なので新生活はそこそこ楽しみです。

あ、だから写真が変わるかもしれないですね!
かもしれないというか絶対変わります。
記事の見出しの、本5冊並べてる写真です。
床と壁の感じが変わります。
この床と壁の感じでずっとやってきましたからねぇ。
それがおそらく次の記事から変わることになるんですねぇ。

めちゃくちゃどうでもいいですね。
こんなにどうでもいいことありますかこの世で。
なかなか無いんじゃないかと思う今日このごろです。


さて、
1は町田康さんのデビュー作です。
表題作の『くっすん大黒』と、『河原のアバラ』という2編が収録されています。

町田康さんはいつか読もうとずーっと思っていた作家さんです。
この度初めて読みました。
やはり面白かったですねぇ。
面白いんだろうなぁとは予想していたんですけどねぇ。

『くっすん大黒』は、仕事を辞めて妻に出て行かれて自堕落な生活を送っていた男が、部屋に置いてある大黒様の置き物が気に入らなくなって捨てに行く、という物語です。

あらすじだけでもう面白いのですが、その文章や言い回しがまた面白くて、文芸におけるユーモア表現を自在に形にしているようです。
作者が自由にのびのびと書いているなぁ、と思えるのは読者にとっても心地よくて、読みながら、この調子でどんどん進んでいってくれという気持ちになります。

随所に汎用性のない難しい言葉が使われていて、結構その意味を検索して調べながら読み進めました。
その難しい言葉の使い方もわざわざという感じで面白くて、そういう言葉選びの面白さは作者のセンスというしかありません。
文体も独特で、この人にしか書けないものだろうなと思わせます。
そういうオリジナリティは信者的な読者を生みそうですよね。
どんな物語でも構わないからとにかくこの作者の文章を読みたいという。

僕も今後も読んでいきます町田康さん。
次は何が良いかな。
文学賞をたくさん受賞されていますが、それにはこだわらずに色々読んでいこうと思います。
あの大長編の『告白』をどのタイミングで読もうかという感じですね。
最初にいきなり読んでしまおうかとも思ったんですけどね。
とりあえずページ数の少ないものを選んで読んでみました。
現代小説の他にも、時代小説とかエッセイとかも書かれていますからね。
色々読んでいきたいと思います。


2は青山七恵さんの短編集です。
『かけら』『欅の部屋』『山猫』という作品が収録されています。
全部で200ページもない1冊なのですぐ読めます。
僕は1日1編読んで3日で読み終えました。

僕は純文学系で好きな女性作家さんってまだ少ないんですけど、青山七恵さんは好きです。
これまでに5冊ぐらい読んでいます。
今回も大変おもしろかったです。

平凡な日常の中のちょっとだけ特別な日や日々を切り取ったような作品です。
自分の人生においてそれほど重要な出来事ではなかったにしても、主人公たちは後の人生の中で、何度かこの日々のことをふと思い出したりするんだろうなぁと思えます。

僕が勝手に感じている印象ですけど青山七恵さんの短編はどの作品も、短いお話の中で時々ハッとするような一行や一節が突然現れるんです。
それは物語に展開を加えるものというよりは、人物の何気ない行動や感情の揺れなどを描写したものです。
『かけら』の中にもそういう箇所があって、何度かハッとさせられて良かったです。

ミステリー小説でいうところの、謎解き終盤の衝撃の一行みたいな感じで、僕はそれが楽しみで彼女の作品を読んでいるようなところがあります。
たぶんそんなふうに感じている人は少ないので、これは個人の感想です。


3は、ミステリー作家である古野まほろさんの書かれたエッセイです。
ミステリー作家さんですので作品はミステリー小説が多いのですが、最近は新書で、こうした警察関係の知識にまつわるエッセイも多く上梓されています。
僕は古野さんの作品を小説もエッセイも含めて、この作品で初めて読みました。
ミステリー作家さんとしてよくお名前を見かけていましたが小説は読んでおらず、新書も書かれているのを発見して、ああこっちの方が読んでみたいかも、と思って読んでみました。

古野さんの描くミステリー小説の作品群には警察小説が多く含まれていて、その理由は古野さんが元警察官であるからです。
ご自身の職歴の知識を生かして書かれた物語の世界観はきっとリアリティがあるのでしょう。

元警察官というキャリアを小説以外にも生かして書かれたのが、警察という組織の実態を描いたエッセイです。
『警察官白書』はその中でも、プロトタイプの警察官、つまりは無理やり平均化した警察官を”警察太郎”として、それがどんな人物であるのかを描くことで警察官の実態を描くという内容のものです。
描き方がユニークなので面白く読むことができました。

警察小説を書かれる作家さんはあらかじめ警察組織や法律のことなどを勉強されていると思うのですが、そういう方が読むのにも良い本だなぁと感じました。
著者が実際に元警察官だったということもあって、教科書で勉強しているだけでは学べないような知識も多く含まれているから、現場のリアリティを出したいなら古野さんの作品を読むのがいいのかもと思います。
それにもちろん、単純に僕のような警察小説好きが読むのにも適した一冊だったと思います。


4は米澤穂信さんの「小市民シリーズ」の4作目の本です。
僕はこの「小市民シリーズ」が大好きで、全てのミステリー小説のシリーズものの中でもベスト3に入るのではないかと思います。
とにかくシリーズの全作が面白くてよくできていて、キャラクターも愛おしくて、ファンなのです。

「小市民シリーズ」は、優れた推理力を持つ高校生の男女が主人公で、学校生活や日常の中で直面する謎を解き明かしていく連作短編集です。
でもこの二人は、できれば事件に直面したり謎解きを披露したりなんかせず、とにかく平和で穏やかな日々を送りたいと思っていて、お互いが慎ましやかな小市民の生活を目指すための互恵関係を結んでいます。
にもかかわらず二人の日常には、事件や謎が次々に舞い込んできて、その度に見事な推理力を発揮して解決させてしまうのです。

今回の『巴里マカロンの謎』でもそれが遺憾無く発揮され、久々にこのシリーズを読んだ読者からすれば、これこれ!と言ってしまうほど期待に応えてくれる内容でした。
というよりこれまで以上に魅力がパワーアップしている印象でした。
シリーズ最高と思えるほど、なんかもう面白くてしょうがなかったですね。
読み終わるのが勿体ないと感じるほどでした。

「小市民シリーズ」は3作目が出てから、今回の4作目が出るまでかなり期間が空いたんですよね。
10年以上空いたみたいです。
その理由はわかりませんが、とにかくシリーズがまだ続いてくれているのだと知って嬉しかったです。
しかもそのタイトルも不思議で、これまでの法則を崩すものなんですよね。

前3作は、『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件』と続いてきました。
当然4作目は『冬季限定〇〇事件』と来ると思いきや、『巴里マカロンの謎』という謎。
甘いお菓子やスイーツの名前が入っているのは共通なのですが、季節限定でも事件でもなくなってしまいました。
その理由も明言されておらず、作品を読んでみてもわかりませんでした。

おそらくですが、これはこのシリーズがもっと長く続いていくことを示唆しているように思われます。
初めは春夏秋冬で全4作で完結するつもりで書かれたのかと思いますが、シリーズが好評だから4作で終わるのは勿体ないと出版社側から言われたのか、あるいは作者自身が思い入れが強くなって4作で終わらせたくないと感じたのかわかりませんが、おそらくもう何作かは続いていくでしょう。
ミステリーファンならご存知だと思いますが、エラリー・クイーンの書いた『ローマ帽子の秘密』『フランス白粉の秘密』などのタイトルが並ぶ「国名シリーズ」という、それこそ世界的に有名なシリーズがありまして、それになぞらえて付けたのが『巴里マカロンの謎』なのではないかと思われます。

日本の作家さんだと有栖川有栖さんバージョンの「国名シリーズ」もありまして、それもタイトルが「国名+〇〇+の謎」のようになっています。
『ロシア紅茶の謎』『スウェーデン館の謎』という感じですね。
「の謎」まで共通しているということは有栖川さんへのリスペクトの意味合いが強いのかもしれません。
僕はどちらの「国名シリーズ」も未読なので、内容的にどっちをモチーフにしているのかは探れないんですけどね。。
米澤さんの場合、世界の都市名を漢字で表記したタイトルなので「都市名シリーズ」とでも呼ぶんですかね。
まあ「小市民シリーズ」ですけどね。

なので、これはあくまで希望的な予測ですけど、今後は「都市名+スイーツ名+の謎」でタイトルが付けられていって、そして「小市民シリーズ」の最後の最後で『冬季限定〇〇事件』というタイトルで完結するのではないかと思うのです。
3作目から4作目の間が空いたのも、実はその間にもう『冬季限定〇〇事件』は書き上げていて、最後に相応しいものが書けたから、あとはシリーズの設定を崩さずに数を生産していくために新たな「都市名シリーズ」に突入したのではないかと、僕は推理するのです。

まあとにかく、4作目が「冬季限定」でなかったことと、新たなモチーフを思わせるタイトル付けであったことから、今後もこの「小市民シリーズ」は継続していくものと思われるのであって、ファンとしてこれほど喜ばしいことはありません。
それを直接明言するのではなく、作品のタイトル付けによって思わせるあたり、クールで洒落が効いててなんとも格好いいじゃありませんか。
次作がどんなタイトルでいつ頃発売されるのか全然わかりませんが、気長に待ちたいと思います。


5は森博嗣さんの小説です。
森さんの本は最近読む頻度が高いです。
とてもハマっています。
シリーズものや独立した作品もたくさんあるし、エッセィも多く書かれているのでどれを読もうか迷っちゃいます。
この方の本ならどんな作品でも楽しめると思うので、刊行順とかは気にせず興味をそそられたものから読んでいこうと思っています。

『工学部・水柿助教授の日常』はシリーズ1作目の作品で、『工学部・水柿助教授の逡巡』『工学部・水柿助教授の解説』と全3作あります。
なかなか異色なシリーズのようです。

ミステリィでいうところの、一応「日常の謎」という分野になります。
殺人とか法律が絡むような大きな事件は起こらなくて、でも一応日常の些細な謎が提示されて解決されるという。
一応、という言葉を使ってしまうくらい、それが作品の本筋や主題となっているのか怪しいところなのです。

主人公がN大学工学部の水柿助教授という男性なのですが、作品の中で、のちにミステリィ作家となる人物、として紹介されています。
明言はされていませんがこれはもう単純に、森博嗣さんご本人がモチーフとなっているのだろうと思われます。
ミステリィ好きの奥様も登場することからも明らかです。
なのでフィクションのミステリィというよりは、だいぶ私小説寄りな感じがします。
実話を元に描いているような。

文体が特徴的で、ユーモア要素をかなり取り入れて、括弧で囲って自分にツッコミを入れていたり、読者に直接話しかけるような砕けた口調の文章が目立ちます。
話の脱線が何度もあり、本筋がなんなのかもわからなくなります。
なのでそういった点で、かなりライトに文章を書かれているなぁという印象です。
それが面白いんですけどね。

なので作者が自分を主人公にして、自分の口調の文体で書かれていて、それこそがこの作品の面白い部分で、ミステリィ要素は二の次であるという感じです。
その意味でミステリィ小説というよりは私小説かなぁと。
もっと言うなら日記に近いかもしれませんね。
森博嗣さんが助教授だった過去を振り返る日記。

作者がライトに書いているから読者としても肩肘張らなくてよくて、難しいことを考えずに手軽に森博嗣さんの文章を楽しみたいという時に読むにはぴったりのシリーズだなぁと思いました。

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