ある作文に感動して書いた小説⑥
だっこ⑥
このこうえん、むかし、ママとよく来たな。なつかしいな。
「さっきのはなし」ユウナがブランコにすわりながら、あらたまっていう。
「うん」
「ほんとは、あるんじゃないの?パパとママにしてほしいこと」
「…うん、あるよ」
「なあに?」
「…わらわない?」
「わらわないよ」
「ぜったい、わらわない?」
「うん、ぜったいに、わらわないっ!」
ユウナがあまりにちからづよく言うので、ちょっとだけ、わらってしまった。
「あー、カナエわらった~!あたしには、わらわないでって言っておいてさ!」ユウナも、わらいながらそう言った。
「…わたしね、パパとママにだっこしてもらいたいんだ…」
言いにくかったけど、わらったあとだったせいか、するりと、ことばがでてきた。
「わかる!めっちゃわかる!」
ユウナが、さっきよりさらに、ちからづよく言ってくれた。
「ユウナも、そうだったの?」
「…うん、そうだよ。だからわかるよ、カナエのきもち」
ユウナのよこがおが、すこし、なきそうになっているようにみえた。ブランコが、きこきこと音をたてた。
わたしは、ユウナにそうだんしただけで、かなり、こころがすっきりとしてゆくのがわかった。
⑦に続く
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