見出し画像

自分の付加価値はどこにあるのか、のヒントを得た日のメモ。

前に何かの本か動画で読んだフレーズ。

「自分が得意だと思っていること」じゃなくて、「みんな、なんでこんな簡単なことができないの?」っていうことに、ビジネスチャンスがある。

自分にそんな特技ってあるかなあ?と思いながら毎日の仕事に打ち込んでいたら、今日ふとそのヒントを得られる出来事が起こりました。

これってすごく大きな気づきな気がするので、忘れてしまわないうちに書いておきます。

少し前に、社長が新しい仕事を取ってきました。

日本企業の海外進出のお手伝いをする仕事です。

社会に出てからずっと何かしら海外と仕事をしている私にとっては、正直、その話を聞いたときの気持ちは、「それってお金になるのかなあ?まあ、言語とか輸出入の実務はハードル高いのかもなあ」くらいのものでした。

実際、日本でものづくりをしている会社が海外進出をするときにまずハードルになるのは、①言語の壁と、②輸出入の実務の壁、だと思います。

(※ここでいう日本企業は、超売上規模があって優秀な人がわんさかいるようなグローバル企業じゃなくて、中小・零細の規模感で社内に英語話せる人がいないくらいのレベルのザ・日本企業です。)

まあ、その土地に合わせたマーケティングとか色々課題はあるんだけど、その辺は海外の代理店を探せばやってもらえる部分はあるし、日本でしか仕事をしたことがない人にとっての最初の壁は、上記のふたつかなと思うわけです。

このふたつは、やっている人にとっては呼吸をするようにできるけど、やったことない人にとってはすごいハードルが高いことなんだろうなと。そんな風に思っていました。

それでですね。

その新しい仕事がスタートして、私たちは海外の取引先と日本企業の間に立って、話が円滑に進むようにサポートしていたんですけど、「日本企業の海外進出のハードルは、言語でもないければ、輸出入の実務でもないわ」と気づきました。

海外進出したいときに日本企業にまず必要なのは、

・ぐいぐい来られても負けない交渉力
・全員が納得する着地点に持っていく調整力

だな、と痛感したのです。

それぞれについてもうちょっと詳しく書いていきます。

【ぐいぐい来られても負けない交渉力】

国によって特徴は違うんですが、一般的に海外の人って、日本人よりもぐいぐい来ます。

自分の要望ばかり押し付けて相手のことなんか全然考えないし、都合の悪いことは返事しないし無視するし、日本とは違う時間が流れているから対応がいちいち遅いし、ダメ元でふっかけてきたりとかも日常茶飯事です。

でも相手の言い分ばっかり聞いていたら自分達が苦しくなるだけで、ちゃんと交渉しないといけないわけです。

そちらの言い分はわかるけど、それは望みすぎ。フェアじゃないでしょ。こちらができるのはここまでだから、それでやって。どうしてもそうしたいなら、そのぶん費用負担してよ、とか、

いやいやちょっとそれ最初から言ってたじゃん。メールにも残してるし。いや知らないじゃないから。書いてあるから。ちゃんと約束守ってよ、みたいな。

でも初めて海外と仕事をする人にとっては、このへんの交渉がすごく難しいんだと思う。

私の知る限り、日本人って基本的に相手との関係を悪くしないようにまわりくどい言い方をするし、断るときもはっきり断らない。

けど彼らはそういう日本人の特性につけ込んで、ぐいぐい要望を通そうとしてくる。

そういうときに、ちゃんと主張すべきことを主張して、相手のいいように流されないで自分たちとしても納得できる条件を引き出せる力、それが交渉力だと思うんだけど、この力を持っている人って意外と少ないのかもしれないって今日思った。

「私なら相手にそんなこと言われたらキレちゃう」と思っちゃうところで、ぐっと飲みこんで言えないみたいなこともしばしばあるわけです。

「なんでそこ遠慮するの?」って、ヤキモキしてしまう。「もっと主張しないと!負けちゃうよ!」みたいな。そういうときに代わりに言うのが今回の仕事なんですけども。

空気を読むとか、場の雰囲気を大切にするとか、行間を読んでもらうとか、日本のよさでもあると思うんだけど、海外と仕事するときにはハンデになるんだろうな、と感じました。

【全員が納得する着地点に持っていく調整力】

続いてこの調整力について。このスキルが必要なのは海外とのやりとりだけじゃないと思う。

海外とのやりとりのほうが時差とか距離があるから気を付けないといけないけど、大企業での仕事だったり、たくさんの関係者をとりまとめながら進める仕事でも必要です。

でもしっかりした調整力がある人って、あまりいない気がするんですよね。

担当部分の仕事をできる人はいても、全体を見通して抜け漏れないようにとりまとめて進めていく仕事をしている人が、相対的に少ないっていうことなのかもしれない。

「私の仕事はここまでなので、あとは良きように決めてください」みたいな雰囲気を感じる。わりと昔からある古い体質の企業とか、ザ・サラリーマン的な人が多い日本企業には共通してこういう、とりまとめる人がいない感じがある。

そういう人達ばかりの会社だと、取引先と自分達のやりたいことがずれたときに、どこで落としどころをつけるかをリードして決めていく人もいないし、ずるずると時間だけが過ぎていくのよね。いや、誰か仕切れよ!みたいな。

日本人相手の仕事なら、それでもお互いに空気を読みあって、いい塩梅の着地点に落ち着くのかもしれないけど。

海外相手だとぐいぐいくるし、舐められたら終わりだから、守るべきところはしっかり守って、そのうえで関係者が納得できる落としどころを見つけて、関係者全員に合意させて、という調整をしていかないといけない。

っていう、交渉力と調整力が、「やり慣れていない人にとってはものすごく高いハードルなんだろうな」と感じたのです。

正直、このふたつは、自分でも得意だという認識すら今日までなかった。

今日のミーティングが終わってからしばらく「この人たち、なんでこんな簡単なことができないんだろう?何がそんなに難しいの?」と悶々と考えて、ふと、そうか、これが例のビジネスチャンスの話なのか、と気づいたのです。

今でも、何がそんなに難しいのかはよくわかってない。でも、たぶん苦手な人にはすごく苦手なジャンルのスキルなんだろうな、とは思ってる、という感じ。

ちなみに私の場合、交渉力は2社目の中小企業(モノづくりの会社)で、調整力は1社目の大企業(モノづくりの会社)で身につけました。

交渉力のほうは、海外の会社と一緒にモノづくりをしていたときに、新しい商品の開発とか、厳しい条件での価格交渉とか不良が起こったときの対処方法とか、もうお腹いっぱいっていうほど色々経験したので、わりと鍛えられているということに気づいた。今日。

欧州の人が心動かされるポイント、アジア圏の人にささるポイントは違ったりするから、その特徴を理解したうえで話を進めたり。バックグラウンドの違う相手でも間違って受け取られないような言い方をしたり。彼らが納得しやすい話の持っていき方とか。

自分で気づいていなかっただけで、細かいノウハウをたくさん持っているんだな・・たぶん。

大企業時代に身についた調整力のほうは、当時は「マジでこんな仕事に意味あるんかいな、クソくだらない」と思いながらやっていたけど、「うわ、めっちゃ大事だったじゃん」と気づきました。今日。

たとえば会議の参加者が何十人もいて、それぞれ色んな思惑があるなかで、決めないといけないことがいくつもあったりして。

会議がスムーズにいくように根回ししたり、権限を持っている人は誰なのかとか、何がボトルネックで進んでいないのかを把握して前に進めるための手を打ったりとか、対立しているこの部署とこの部署の両方を納得させるためにはどういう言い方をした方がいいのかと考えたりとか、決まったことを決まってないと後から言われないように議事録を書いたり、すごい泥くさくて時間もかかって、でも目立つような成果でもないようなことを、地道にやり続けたから身についたスキルなんだろうなって、感謝の気持ちが芽生えました。今日。

大企業を辞めたときは「こんな仕事クソだ」と本気で思ってたけど、辞めてから10年くらい経ってもなお、自分の仕事の基礎が当時の仕事のおかげでできているんだとわかったら、大企業時代が無駄だったとは言い切れないな。最初の数年くらいはいてもいいのかもしれないと考えを改めました。知らんけど。

長くなったのでそろそろまとめると、

日本企業が海外進出するときにネックになるのは交渉力と調整力だと思います、という話。

語学力とか輸出入の実務よりもなんならハードル高いと思う。語学もできるにこしたことはないけど、わかりやすいことなら翻訳サイト使ってもなんとかなるし、輸出入の実務はやってしまえばできるようになるしね。

でも交渉力とか調整力っていうのは、一朝一夕で身につくことでもないし、正解がないからこそ、難しいんだろうなと思います。

そういう点で、今の自分には、その交渉力と調整力はまあまああるなと思ったので、今後の自分の仕事の付加価値のひとつにできるんだろうなと。

そんなヒントをもらえた一日だったのでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?