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読書日記『生きてさえいれば』

”生きてさえいれば”何なんだろう。

“生きてさえいれば”の後に続く言葉、“楽しいことがある”か“楽しいことがあるもんだ”どっちを思い浮かべるだろう。それとも、”生きてさえいればいい”という言葉だろうか。
前者は今、楽しくないのだろう。後者は今、楽しいことがあったのだろう。”いい”にはいろんな感情が混ざっているように思える。
この本の紹介ページには、「生きてさえいればきっといつか幸せが待っている」という文字が並んでいた。

この小説は美人でモデルまでこなす女の子と平凡な男の子の恋のお話。家族に複雑な感情を持つ男女2人のお話。であった。

物語を読み進めていくと“生きてさえいれば”何なのかを伝えようとしてくれる文と出会う。

「生きていなくちゃ、悲しみや絶望は克服できないのよ。生きて時間を前に進めないことには、感動や喜びや恋に出会えないからね」

とある母親の想いであった。美人な女の子の姉の言葉だった。
私は、この言葉がこの人から出た言葉であることに驚いた。そして嬉しかった。安心した。
是非、この言葉に物語の中で出会って欲しいと思う。

この小説では登場人物の人物像がグルっと変わることがしばしばあった。申し訳なくなることもあれば、びっくりすることもあった。
そういう印象が変わった時の台詞や言動はやっぱり心に残る。

この台詞も印象を変えた言葉だった。私はこの母親をストレートに暖かい言葉を言う人ではない人物としていたから。


物語は家族への想いと好きな人への想いでグルグルしていた。

私は彼らを見て、人間って理性と感情を上手く絡ませている生物なんだなぁって呑気に思った。
上手く絡ませているから、その続きがなんであれ、“生きてさえいれば”って思えるんだなって思わされた。

だけど、家族と好きな人への理性と感情は特別なんだなとも感じた。
他の人への理性と感情より深く絡まり合っているし、どちらも同じぐらいの太さの糸だと思う。表現としては絡まっているというよりも、同じ太さに調整しつつ絡ませているの方が近いと思うぐらい気も使っていると思った。


≪銀河鉄道の夜≫が好きな登場人物達。「ほんとうの幸」という言葉が何度かでてくる。
≪銀河鉄道の夜≫を読んだことのない私。「ほんとうの幸」を考える。


あらすじ(文芸社:書籍詳細より)

「生きていなくちゃ、悲しみや絶望は克服できないのよ」──大好きな叔母・春桜(はるか)が宛名も書かず大切に手元に置いている手紙を見つけた甥の千景(ちかげ)。病室を出られない春桜に代わり、千景がひとり届けることで春桜の青春の日々を知る。春桜の想い人(秋葉)との淡く苦い想い出とは? 多くの障害があった春桜と彼の恋愛の行方と、その結末は?

『生きてさえいれば』

小坂流加 著


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