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楽笑ダイジェスト

学級経営や生徒指導に役立つ主だった知識やテクニックを簡単に紹介します。
気になるものがあれば目次から選んで御覧ください。
詳しく知りたいものがあれば、コメントでリクエストしていただければ、直近で記事にします。



生徒指導は善悪を語るな

問題行動を起こした生徒に、「なんでこんなことをしたんだ?やっていいことと悪いことの区別がつかないのか!?」という先生がいましたが、その指導は無意味です。

善悪・やっていいこと悪いことの区別がつくなら、そもそも問題行動をしません。
善悪の判断がつかない生徒に、「なぜその行為をしてはいけないのか」をわかるように教えてあげるのが教師の役割であり、指導です。

しかし、善悪の判断という概念を子どもに教えるのは非常に難しいです。
概念を身につけるにはとても時間がかかるからです。

ではどうするか?


善悪ではなく損得を語ればいいのです。


その問題行動をすることによって、その生徒自身にとって、どのような不利益が生じるのか
その事実と可能性を、ただ淡々と羅列し、その結果(自身の不利益)を望むのかどうか問うだけで、生徒の問題行動は止みます。

生徒に示す不利益の例としては、法律上罪に問われること、傷つけた相手から訴えられるとどれほど面倒なことになるかなどや、家族・友達などのその子が大事にしている人たちにどのような迷惑をがかかるか、などが挙げられます。
当事者だけでなく、他の子たち(第三者)の視点を示して意識させることも効果的です。

この時の注意点としては、「お前のせいでオレ(先生)がどれだけ迷惑しているかわかっているのか!」といったように、自分(教師)が迷惑していることを前面に出してはいけません
生徒に、「なんだ、オレのことを心配しているんじゃなくて、結局自分のことしか考えてないじゃないか」と感じられたら、その後の指導は全て入らなくなってしまいます

大事なのは、「その生徒のことを第一に考えている(心配している)」という姿勢で接することです。


要求することは指導・支援ではない

生徒に問題点や直すべき課題があったとして、その問題点を指摘して改善を促す先生がいますが、それは要求であって指導でも支援でもありません。

委員会の当番活動をサボった生徒に、
「当番をサボってはいけません。ちゃんとやりなさい!」
と注意するのは、間違った行いを指摘し、改善を要求しているだけです。

生徒がより良く成長できるよう助ける指導や支援には、コーチングの技術を使います。

コーチングの基本は、
①何がいけなかったのか、問題点を明らかにする
②なぜそうなってしまったのか、原因を分析する
③同じ失敗をしないために、具体的な対策を考える
④対策を実行できているか、折を見て振り返る
これを教師と生徒が共有する(一緒に考える)ことです。

当番をさぼった生徒に対しては、
①あなたがさぼったことで、「他の当番の生徒の負担が増えたこと」「周りからの信頼を失う行為であること」など、その行為の問題点を生徒にも伝わるように示します。できれば生徒自身に気づかせたいところです。
②なぜさぼってしまったのか、原因を一緒に考えます。「友達と遊びたかったから」とか、「めんどくさかったから」など、生徒の気持ちにより添って引き出します。
③にいく前に、①と②をふまえて「自分勝手な都合で集団内の責任を放棄することが、いかに自身の不利益となって自分に返ってくるか」を生徒に説きます。
③同じ失敗をしないために、次からどうするか、具体的な対策を考えます。まずは生徒自身に提案させて、不十分だと感じたら教師が補強します。
④対策を実行して当番活動をきちんと行っているかどうか、ときどきチェックして、できていたらほめます(承認します)。できていなかったら、共有した対策をもう一度一緒に確認し、再度取り組ませます。

「直せ」「できるようになれ」「○○しなければならない」
これらは全て一方的な要求です。
上から目線で現状の自分にダメ出しばかりして、一方的に要求だけ突きつけてくる。
そんな人を信頼する、ましてや尊敬するような子どもはいません。

横に並んで一緒に考え、具体的な道を示してくれる人になれば、信頼してくれます。



3者面談は△で攻略

懇談会の3者面談(教師、生徒、保護者)では座り位置が重要です。
対面で座ると「教師」対「保護者&生徒」という対立関係になってしまいます。
特に問題行動があったときの面談では、保護者と生徒を分断することが大切です。
なぜなら、子どもは自分にとって都合が悪いことは親に話さないからです。
そして、親は基本的に子どもの言うことを信じて面談に臨むので、「教師」対「保護者&生徒」という2者対立の構図になってしまいます。

その対立構図を、座り位置で崩しましょう。

3者面談の座り位置

図のように三角形で、教師・保護者・生徒がそれぞれお互いの顔が見える位置関係で座ります。
こうすることで、保護者からも子どもの顔が見えるので、表情の変化で子どもが隠していたことに気づけます。
子どもが隠していた事実を親に伝えたときに、親は子どもの顔を見て、それが事実だと察します。
子どもは言葉にして認めるわけではありませんが、顔に出てしまい、親はそれを見逃しません。
これが横並びだと親が子どもの表情を確認できず、前情報による先入観で子どもの保身に走ってしまい、話がこじれます。

だから、顔が見える配置にして分断することが重要なのです。

さらに、面談の内容も重要です。
現時点での生徒の問題点や課題を指摘して、改善を求めるだけでは、親子共に暗い気持ちで面談を終えることになります。
面談の進め方も△を意識します。
まず、生徒に「どうなりたいのか」、今後の目標や目指す姿を聞きます。
次に、それを実現するために現状足りない点や課題を一緒に洗い出します。
そして、その課題を解決していくための具体的な対策を提案して共有します。これはコーチングのコツと一緒です。

こうすることで、気がつくと教師と生徒と保護者が横並びになって、共に今後の目標実現に向かう関係がつくれます。

3者横並びで目標を目指す協力関係

もし両親で来た場合は、机を二つずつ並べて、両親には横並びになってもらい、子どもとは離します。
教師が二人いる場合も同様です。
進路面談などで、父親と母親とで意見が異なっている場合などは、座席を四角形にして、4者それぞれ顔が見える配置にすることも有効です。



謝罪させてはいけない

問題行動の指導の場合も3者面談と同じです。
「誰が悪い」や「どちらが悪い」という話ではなく、
「今回このような問題が起きてしまったが、今後どうしていきたいのか?」に話題をもっていき、それを実現するためにどのような取り組みをしていくかを考えます。

このとき最もやってはいけない最悪手は「誰かの味方になること」です。

AさんとBさんのトラブルだった場合、Aさんの主張を受け入れて味方になってしまうと、その瞬間に教師はBさんにとって「敵」になってしまいます。

どちらかの味方になるということは、もう一方の敵になるということです。
だから、簡単にどちらかに肩入れしてはいけません。

教師はあくまで中立で、双方の主張は聞くが片方の味方はせず、双方がより良い関係を築けるように、今後どうしていくのかを考え示すべきです。

トラブルがあるとよく相手に謝罪を求める親子がいますが、筆者は謝罪など必要ないと考えています。
100対0で一方が悪い場合ならともかく、子ども同士のトラブルでは少なからずお互い様や行き違いによるものがほとんどです。
にもかかわらず、あえてどちらかを悪者にしてしまうと、後々まで遺恨を残すことになります。

筆者の経験から行くと、今後どうしていくのかがハッキリした段階で、必要だと感じれば子どもは自分から相手に謝ります。
そういうときは相手も「私も悪かった」と謝り返し、それで前よりも仲良くなります。

中立の立場でいるはずの教師が、一方の主張を受け入れて、他方に謝罪を要求する行為は、その後の学級経営を想像以上に難しくする悪手であると知ってもらいたいです。


担任の役割は学級の秩序を保つこと

学級担任として最も重要な役割は「学級の秩序」を築き、保つことです。
「学級の秩序」とは、生活のルールなどとは異なります。
簡単に言うと、「このクラスではここまではやっていいけど、ここからはダメ」という線引きをし、その線を生徒が踏み越えないよう抑えることです。

筆者は大まかに次のラインを生徒と共有して、学級の秩序としていました。
・相手を故意に傷つけない(肉体的にも精神的にも)
・ルールを自分が破るのはいいが、他の人は巻き込まない
(自身の行動の責任は自分で負う。他人を巻き込まない)
・みんなと仲良くする必要はないが、特定の人をはぶいたりはしない
・他人のため、クラスのために動いてくれている人をバカにしない

どれも明文化したり、ハッキリと生徒に示したりはしていません。
日常生活の中で生徒の行動や会話に気を配り、ラインに触れるような言動に対して声がけをして、釘を刺していました。

子どもの感性は鋭いので、それだけでハッキリ言わなくてもおおよそのラインを判別し、「ここを越えるとヤバいからやめておこう」と控えるようになります。

このラインが窮屈すぎると、子どもたちは息苦しさから反発して、結託してラインを崩しにかかります。
枠に収めようとする担任と、はみ出したい生徒たちの対立が生まれ、学級が崩壊していきます。

ある程度自由にさせていながら、「これ以上はダメ」という境界線はハッキリと示して譲らない。
その境界線は「担任が安心できる枠組み」ではなく、「子どもたちが安心して過ごせる集団をつくるため」でなくてはなりません。
感性の鋭い子どもたちは、担任が自分の都合で生徒をコントロールしようとしてるとすぐに見抜き、反発してきます。
あくまで「生徒ファースト」
子どもたちのことを考え、子どもたちのより良い成長を優先していれば、生徒も境界を越えようとせず、集団が安定してきます。



みんな仲良くなんてできない

「同じクラスの友達なんだから、みんな仲良くしなさい」
そんな無理難題を押しつけてはいけません。
大人だって、絶対に仲良くなれない人は大勢いるでしょう?

義務教育で学校という枠に子どもたちを集めて、何年も集団生活を経験させるのは、社会性を身につけさせるためです。
ひと言で言えば、「他者との関わり方」です。

好き嫌いや相性の合う合わないは置いておいて、集団生活を行う上でどう協力関係を築くか、距離感を保つか、そうしたスキルを身につけることが重要です。
「嫌いだから話さない」「相性悪いから無視する」のではなく、嫌いなのはいいとして、集団生活を送るためや、共通の目的を達成するために、どう関わっていくかを考えさせなければなりません。
仲良くすることと、協力することは、似ているようでまるで違っています。

「まとまりのあるよいクラス」を作るためには、個々の生徒に手を入れるのではなく、「集団を育てる」ことが大事です。

日常生活でもクラスマッチでも、きっかけは何でもいいのでクラスの目標を決め、それを達成するために一人一人ができることを考え実行し、結果を出す。
そうすることで、「学級という集団に対する肯定感」が育ち、「まとまりのあるよいクラス」となっていきます。

筆者はこの考え方で、個性的な子が多くいじめ問題などもあった中学1年生のクラスを担任し、1年で生徒も保護者もみな「このクラスでよかった」と言われるまでにしました。
正確には「大嫌いで絶対仲良くなれない人はいるけど、このクラス、このメンバーでよかった」という感じです。

クラスをまとめるためにとはいえ、ちょっとやり過ぎてしまい、1年生にして体育祭で総合優勝をかっさらってしまうという快挙(暴挙)を成し遂げてしまいましたが・・・

とにかく、学級経営で大事なのは、個々の生徒の関係ではなく、「学級集団をどう育てていくか」です。


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