見出し画像

役に立たないものを役に立てる人になりたい‐ 羅呉美作家個展 - Floating Islands, Day for Night

《Floating Islands, Day for Night》より ⓒragoyan

「 作品活動をしながら、仁川の海についての話なども扱ってきましたが、今年は 海の神についての 話をしています。 資料調査をしていたところ、日本ではコロナの時、一時 アマビエが流行したことがあると聞きましたが·····」

 そのように 筆者に「アマビエ」に対する 資料収集調査を依頼したのが まさに今回の展示の主人公である羅呉美(ラオミ/ナオミ)作家だ。
彼女と 初めて会ったのは 去る2019年、筆者が在住する 旧市街・仁川(韓国)のミリム劇場で行われた 横浜の「シネマジャック&ベティ」との劇場交流事業の時だった。 彼女が ミリム劇場のあちこちに 展示した作品は、大小 多様で この古い劇場の歴史を感じさせる雰囲気に よく馴染んだ どこか懐かしさを感じるものだった。

《Floating Islands, Day for Night》の中の「アマビエ」ⓒ羅呉美

 後女は 洋画を専攻したが、映画美術や舞台美術などの仕事もしたり、文化財研究所で働きながら 復元模写家を夢見たりもしたが、自分だけの絵を描きたい気持ちが高まり、果てしない好奇心をもとに 大きな画面に 多様なイメージを展開したという。筆者も 今回の展示の 資料調査に参加したこともあり、そんな 彼女の 表現しようとする世界が とても気になり、今回の展示を訪れてみた。いったい 彼女が 今回の展示をどのようなきっかけで 準備することになったのか? 思わず聞き出せずにはいられなかった。

作品を発表して終わるのではない ずっと続く生物体のように···

展示場を眺める羅呉美作家 ⓒ羅呉美

-海に関する展示はどのようなきっかけで 始まったのか?
「2019年から 研究調査を開始し、<沿岸解放>プロジェクトをしました。 きっかけは 北城浦口の埋め立てを目途したことから始まりました。 そして、環境保護団体と 仁川市、商人らの衝突なども目にするようになりました。」

-今回の展示の '海の神'というテーマに行きついたきっかけは?
 「私たちが 眺める風景の要素(人、自然など)の中に 見えるものと見えないもの、見えないが 確かに 私たちの意識の中に存在することに集中しました。波市の風景も その多くのイシモチの群れも 消えつつあるのは目に見えるようですが、見えない存在も 消えつつありました。
その中でも 民間信仰に広がっていた 鬼(トッケビ)信仰に注目しました。
しかし、私たちが知っている 鬼のイメージが さほど 正確では ないことが 残念でした。 日本には 妖怪のイメージが多いようですが、韓国では 民間信仰をタブー視する傾向が強かったので、それほど発展していないようです。」

- 今回の展示を準備しながら 難しかったことは?
 「どうしても 実際にそこに住んでいないと体感できないことが とても多いので、そのような困難を インタビューを通じて 多くの助けを得ることができました。 山田先生、イ·ジョンジャ、オ·チュンオク先生にです。」

- また やりがいを感じたことなどは?
 「 そのような インタビューの過程でも やりがいを感じました。 結局は「人」だと思うんですよね。 絵も 人生から出てくるもので、すべての話は結局「人」に帰結するようです。 場所も同じです。 私にとって 山田先生は日本であり また 仁川でもあります。そして オ·チュンオク先生は、私に 済州島を教えてくれた方です。」

海の神_海を渡った神 the god of the sea, god who crossed the sea, 2022, Single-channel, 11分25秒ⓒ 海の神様_海を渡った神 2022

‐今後の計画などについては?
 「 アジアの 歴史性についての 比較研究に拡張していこうと思っています。 2021年、韓国文化芸術委員会 青ら年芸術家海外進出支援選定作《影の川 River of Shadows》で、中国の作家らとの交流を通じて、私たちが 認識していない無意識の中に残存している歴史のイメージを発見する作業を行いました。 地形的観点だけでなく、現在 私たちが直面している 海岸風景の変化を私たち 自ら認識したり、認識できない流れの中で どのように変化してきたのか、また現在の風景を記録しながら絵画的に 展開しようとしました。」

- 展示を訪れる方々に メッセージがあれば…
 「 2018年に 個展を開いた ソウル清渓川・パダ(海)劇場は 依然として閉館状態で、ミリム劇場は オーナーが変わり 来年の状況が不安です。 戦時当時、誰かが 「パダ劇場」を 近代文化遺産に指定すべきではないかと言われ、作家として その仕事の先頭に立つべきか真剣に考えたことがありました。
2019年「沿岸海域」を進行する時は 埋め立てられた浦口を見ながら 環境活動家のように 反対運動をしなければならないのかと考えたりもしました。 「芸術実践」で 芸術の社会的役割に対する省察を続けてみると、このような現実を 展示を通じて知らせることが 私の役割だと考えているところです。

展示リフレットなどを収納できるB5サイズほどのファイル付 ⓒragoyan

 最近、在中韓国人(朝鮮族) 作家たちと作業しながら、中国政府が 少数民族の文化を少しずつ 消去していく現実も発見しました。 実際、数年前から モンゴル族、朝鮮族など 少数民族が通う学校で見る歴史教科書の言語が 中国語に変わっているということです。 朝鮮族も 痕跡もなく、すべて中国人に吸収されれば、朝鮮族文化も 伝説として残るのだろうかという気もしました。 現在、海港都市の あちこちに建てられたモニュメントのように 痕跡だけが残るのではないか、韓国大衆文化で 消費される「朝鮮族」のイメージを見ると 不愉快さが否めないが、私たちが 彼らの文化を理解しようとする 努力不足により 発生した現象ではないか、彼らの無意識にどんな叙事が残るのか 悩みます。 彼らは「西遊記」(中国)、「仙女と木こり」(韓国)、「少年将軍」と「賢い狸」(北朝鮮)などを見て育ちました。 その無意識のうちに積もった文化が 現在韓国社会が直面している葛藤、対立などに どのような影響を与えるのか、多文化社会に 高度化する状況で 共存するための努力は何なのか 談論化できる契機になれば良いのではないかと思います。

  パダ劇場で 展示を開く時、劇場の課長に オープニングパフォーマンスの挨拶をお願いしたことがあります。 その方は 俳優が夢だったので 快く応じてくれましたが、蝶ネクタイに 化粧までしてあげるととても幸せそうでした。 機能を失った 劇場が 私が作った小さな事件によって動いていく様子を見ながら、これから 自身が 芸術家としてどのように生きていくべきか 自分の仕事を見つけた感じでした。 展示場で 作品を発表して終わるのではなく、ずっと続く 生物体のように 自ら その次の物語を展開するかのように、役に立たないものを 役に立てれる人になりたいです。」

<波市Lost village on the sea 2022>展示より ⓒ 波市Lost village on the sea 2022

羅呉美 作家プロフィール
羅呉美は 近現代写真を通じた歴史的事件のイメージ、個人の口述記録や 文献、説話などの文化的資料をもとに 特定の場所の歴史性とアイデンティティを比較研究している。 これらの 収集したイメージが 場所、イデオロギー、時代によってどのように翻案され 消えるかを発見して追跡し、これを 絵画的に場面化したり 空間に設置している。 選択したイメージは 画面でドキュメンタリー的叙事構造を取り併置され、イメージ間の葛藤と衝突が生産した叙事的脈絡を通じて 主題意識を表現する。
最近の個展としては、≪波市_Lost village on the sea≫(2022、保安3)、≪Liberation of coastline landscape≫(2021、魯迅美術学院美術館、中国)、
≪同時上映≫ (2018、海(パダ)劇場/美林(ミリム)劇場)などがある。
≪Summer Love≫(2022、ソン·ウン), ≪生の賛美≫(2022,国立現代美術館果川館), ≪Border Crossingsings-North and South Kollection the Kollection the Kollection(2022, 2021, Kol、 ≪沿岸解放≫(2020、仁川アートプラットフォームC棟)、≪安恩未来≫(2019、ソウル市立美術館)などの企画展に参加した。
(出典: https://beattitude.kr/visual-portfolio/visualportfolio-naomi/)

羅呉美作家 個展《Floating Islands, Day for Night》
日時 | 2023.11.15–2023.11.30
場所 | ディスイズ ナッ チャーチ (TINC)
ソウル特別市 城北区東小門路10キル34-16
時間|10:00–18:00

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?