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コアラ型ケーキを焼いて街へ出る
シリーズ・現代川柳と短文 054
(写真でラジオポトフ川柳142)
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加藤さんは動物園のコアラがしゃべるのを聞いたことがあるという。こどもの頃だ。動物園のコアラが、木につかまって眠っていたかと思うと突然目を開け、はっきりこちらを見て「眠い」と言った。当然まともに取り合ってくれる大人はおらず、当時入院していたおばあさんだけが話を聞いてくれた。そのころおばあさんはほとんど寝たきりの状態で、元気になったら動物園に行こうねと言っていたが、残念ながらその約束が果たされることはなかった。最期はおだやかに眠りながら息を引き取ったとされるが、加藤さんは亡くなる直前のおばあさんが突然目を開け、はっきりこちらを見て「眠いよ」と言ったのを憶えているらしい。この話をできる相手はもう誰もいませんよ、と加藤さんは言う。最近見る夢では、おばあさんが木につかまっていたり、コアラが病院のベッドに寝ていたりするそうだ。
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