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ていねいな執事が上に乗ってくる

シリーズ・現代川柳と短文 006
(写真でラジオポトフ川柳094)

 昔観た映画に18世紀くらいのヨーロッパの貴族階級の人々を描いたものががあった。3時間を超える大作で登場人物も多い。貴族たちだけでなく、執事や召使いといった労働者階級の人々も大量に出てくる。上下構造は上階と下階に視覚化され、映画は二層のドラマが重なり合う超巨大群像会話劇の味わいを増していくが進んでいく。作り手もキャラクターひとりひとりを描くというより「群」のありようを描くことを志向していたと思う。そのせいだったのだろう。けっきょく、名前も顔も、誰ひとりとして覚えられなかった。3時間、顔も名前もわからないたくさんの人々がなにか揉めていた。それを眺めていた。ほんとうに揉めていたのかどうかすらわからない。わたしはただ眺めていた。それは、秋の夕暮れにすすきが風に揺れているのを見ているような気分だった。

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