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口のなか色とりどりにならなくちゃ

シリーズ・現代川柳と短文 032
(写真でラジオポトフ川柳120)

 東京の片隅。彼は「なんでやねん」を標準語に置き換えようとしていた。なぜですか。どうしてですか。丁寧語ではうまくグルーヴが出せない。短く言い切りながらも豊かなニュアンスを持つ関西弁に彼は憧れ、やがて関西出身の相方と新しいコンビを組んだ。しかし、自分も相方もボケ志向が強く、どちらともツッコまない日々が続いた。64年後、相方が交通事故に遭ったという知らせを彼は劇場の楽屋で聞いた。出囃子が鳴りはじめたが、彼は病院に向かう。交通事故? まったくもう。彼は「なんでやねん」を標準語に置き換えようとしたが、やはりうまくいかなかった。


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