会いたいけど会えない人へ
会いたいけれど会えない人へ。
*
僕は悪い人だ。
僕を優しいとか温厚だとか
勘違いする人が多数いるが、
僕は決してそんな人間ではない。
たまに見る夢。
「俺を覚えてるか?」と僕に問い、
続けて「お前のことを一生恨む」と言う。
その目は憎しみに満ちているのに、
どこか僕に怯えている様子だ。
僕は悪く恐ろしい人間だ。
過去をいくら後悔しても、
過去をいくら反省しても、
過去を変えることは出来ない。
つまり僕は過去の行為を風化してはいけない。
彼の惨状を考えれば考えるほど、
僕は決して幸せになってはいけない。
因果応報。
僕が会社のパワハラで鬱になったのも、
今思えば過去の清算のような気さえする。
*
彼は僕の仕事のパートナーだった。
それなりに2人期待もされていた。
期待されればされる分だけ、
プレッシャーが重荷に変わる。
その分、彼に対する当たりも強くなった。
「あそこの間が気持ち悪い」
「こういう言い方しろよ」
「何で出来ひんの?」
僕は彼にそんな罵声を浴びせ、
稽古は朝から始まり、
深夜そして朝方まで続く。
そんな日々を何日も繰り返していた。
2人の成果は僕のおかげ。
彼の成果も僕のおかげ。
僕の成果はもちろん僕のおかげ。
幼い分ジャイアンの方がまだ可愛い。
その頃、僕はタバコを吸っていた。
つまり一応成人男性だ。
何日間も彼の時間を奪い、
全ての成果は僕だけのもの。
自分のことはさておき、
彼の小さな失敗を問い詰める。
彼は人として優れていた。
僕よりも遥かに。
そんな彼の時間を人生を潰した。
僕は大人のはずのガキ大将。
改めて救いようがないクズ人間だ。
最近になってテレビでしばしば、
「クズ人間」を耳にするけれど、
本当のクズ人間は自覚がない。
テレビの人たちは、まだ救えるクズだ。
*
ある日を境に彼からの連絡が途絶えた。
仕事が入っていたにも関わらず。
僕は彼に何度も連絡をする。
だけども電源が入らない。
彼の家にも訪れてみたけれど、
音沙汰が全くと言って良いほどない。
仕方がないので1人で仕事をして、
仕事終わりに何度も何日も電話をして、
彼の家の前でじっと待っていたりもした。
だけども、彼を未だに見れずにいる。
*
彼には今でもふと思い出した時に、
メールを送るようにしている。
エラーとして返ってこないので、
メールアドレスは変わっていないはず。
一方通行な文通。
全く意味がないことだ。
むしろ嫌がらせ行為だとさえ思う。
彼は僕の前から居なくなった。
夢や希望をいっぱいに抱えたまま。
僕のせいで、僕のせいで。
謝って許されることでは決してない。
仮に彼に会ったとして、
何て言えば良いのだろうか。
どんな顔をして過ごせば良いのだろうか。
会いたいけれど、決して会えない人へ
共通の友人からあなたが、
会社を立ち上げたと聞いています。
あなたはとても優秀な人です。
どんな人とも、どんな時代でも、
あなたの人当たりなら大丈夫です。
現にあの当時の僕は、
あなたに何度も救われていた。
分かっていた筈なのに、
気付かないフリをしては、
あなたを何度も傷つけて、
あなたの優しさに甘えて。
僕が言えたことではないけれど、
身体にだけは気をつけてください。
あなたは人に合わせて、
つい無理をしてしまうから。
誰よりもそばにいた人より
メガッパ
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