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【未熟者】 #980


束縛が強くもの凄く依存が強いタイプだった
こういう人って自分が相手を好きだというパワーで成り立っているので
あまり相手から好きだ好きだと言われたり
愛され過ぎると逆に重荷になるのか
どうだか分からないけれも冷めてしまうようだ

相手を好きな状態の自分が好き

お互いに育むとはちょっと違う


僕の元彼女もそうだったんだろうなと
別れてからだいぶ経つけど
今頃になって思う

お互い大学を出て就職したんだけど
僕は地元の企業だったんだけど
彼女の方は地元に本社かあったのに
東京にある支社に勤務となった
普通は東京の方が本社のような気がするがここの会社はこっちが本社たった

当然彼女も此処で働けるとと思っていたが辞令がそれだったので従わざるを得なかった

という事で僕たちは遠距離恋愛になった

こっちに居てる時は完全に向こうの好き好きに押され気味だったのだけれど
いざ離れてみると寂しくなってきた
あの当時はまだ携帯電話も無くポケットベルが流行り出した頃だ

彼女の家には電話が無い
だいたい向こうから電話がかかってぬる
公衆電話を使ってかけてくる
だからそんなに長くは話せない

僕は毎月給料が出たらテレフォンカードを郵送か休みを利用して遊びに行った時に渡していた


離れ離れになって僕の方が変化が出だして先にも言ったがもう寂しくて寂しくて
僕の方が好きだの愛しているだのウザくなって行った


こんな事が2年ほど続いた辺りから彼女からの電話の頻度が落ちた
そして僕が東京に行く頻度が増えた

何か壁がある
何処と無く冷たさを感じた
後それからちょっとした事でもキレられるようになった
エッチをすると敵と戦っているかのような感じになった

更に1年過ぎると彼女の家には電話がひかれた
それはそれで良いのだけど
電話をかけてもだいたい話し中だった


東京に泊まりに行きたいのに仕事だとか色々口実をつけられなかなか日が合わなくなり出した

僕はさすがにこれはおかしいと思った

だから週末に新幹線で東京に向い
彼女の家では無くビジネスホテルを取った

そっと彼女の家へ行ってみた
金曜日の夜遅くだったが部屋から知らない男が出て行くのを
見張ってから数十分後に見てしまった

なんだあの男は
なんかとってもチャラチャラした感じの男だった

この日は突撃はしなかったが
ホテルに戻ったがあらぬ妄想ばかりしてしまい怒り狂いなかなか寝付けなかった
だが自分としてのミッションがあったので早起きしてまた彼女のマンション近くで張り込んだ
この週末は仕事と言っていた

待つ事1時間近く
やっと出てきた
仕事にして遅いじゃないか

恐らく駅に向かうであろう
そう思い先回りしてまた隠れた

すると駅に現れたのだが駅のロータリーに停まっていた一台の車に乗り込んで行ってしまった
昨日の男か?

まさか仕事?

分からないし電車に乗ると思っていたから油断していた
テレビドラマみたいなタクシーを拾って「運転手さんあの車を追って下さい」みたいな機転は効かなかったし
実際この時間のロータリーにはタクシーは一台も停まっていなかった

ポッカリと空いてしまった土曜日
どうするか
そうだ彼女の会社に行ってみよう
この頃はまだ週休2日の会社は少ない
なので通常であれば会社は休みでは無い

電車と徒歩で30分程度
何度か迎えに行ってたので場所は知っている

会社は外から見ても分かった
窓は真っ暗で閉まっていた

休みやん

じゃあアレはやっぱり遊びに行ってるんだ


もう家に帰るか…
でもホテルは明日まで取ってあるしなぁ

肩を落としつつ僕は何を思ったのか
そのやるせない思いを爆発させる為に
五反田まで出て土曜日の昼間でもやっている風俗店に行った

生まれて初めてだった

なんだかよく分からない感情のまま無我夢中でサービスを受けた
その最中は多少紛れたが終わってみると来る前よりも虚しさが増した

もういいやっ
電車で戻り駅前のコンビニで酒とつまみを買いまくりホテルに戻り
酒をあおった

今だったらスマホで電話とかLINEとかでいくらでも連絡が取れるのに
それが当たり前だったけれども面倒くさい時代だった


頭痛を伴って目覚めた
急いで準備してなんとかチェックアウト時間に間に合った


どうしようか迷ったけど
帰る前に彼女のマンションに行った

どうしようか迷ったけど部屋まで行ってピンポンを押してみた

「はぁーい」という声が聞こえてドアが開いた
そして僕の顔を見てそうとうビックリしていた

足元を見ると男物の靴があった

僕はスゥーっと気持ちが冷めてしまった
一気に

そのまま何も言わず帰って行った
向こうも家の中に男が居るからか
僕を呼ぶ事も無くドアを閉めた

これが彼女と会った最後の日だった

電話は何度か家にかかってきた
一応話はしたが
向こうが何を言ってるのか意味が分からなかった
支離滅裂といった感じだった
酔ってるのとはまたちょっと感じが違った

もう電話はかかって来なくなった
そしてその年末に覚醒剤で数人の男女が逮捕され起訴された

その中にあの元彼女も含まれていた


東京は怖いと思った思い出だ



今だから思うんだけど
きっと向こうも寂しかったんだろう
ただ僕の好き好きビームがウザくなって出会いを別に求めた結果
変な男とくっ付いてしまったんだろう


今はどうされてるのかしらね




ほな!

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