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【グロとグレ】 #995


僕は子供の頃から皆んなに気持ち悪がられて「グロ」と言うあだ名で呼ばれていた

出産の時に鼻が圧迫されていたようで
鼻が押しつぶされたようになっていて
しかも右の頬には赤いアザがあった
だからグロい「グロ」と呼ばれた

小学生の時はイジメられたけど
中学に上がった時
僕はイジメられなくなった

それは僕のお友達が強かったからだ
彼は転校生でうちの学校に来るなりケンカばかりして
最後には3年生の番長も倒しちゃった
だから彼に逆らう者は居なかった

彼が引っ越して来た時に僕は彼に出会った
隣の家の子になった
その家は以前おじいさんが住んでたんだけど亡くなって
その娘さん家族が越して来た

隣同士なので親が挨拶をした

僕はまだその時は彼がそんな強い人だって思ってなかった
だから何となく
「僕の部屋に来る?」
そう誘った
そしたら
「うん」と言ってついて来てくれた

彼は僕の部屋に入るなり「うわっ!」そう言った
「あっビックリした?」

「うんビックリしたさ
僕も宇宙が大好きなんだ
大きくなったら宇宙に関わる仕事がしたいって思っているんだ」

「へぇ〜凄いねぇ
僕はそこまでは思って無いけど
宇宙は大好きで

ほらっこれ見せてあげるよ」

「うわっこれ限定発売されてた奴じゃん」

「そーなんだよ
たまたま抽選で当たって貰っちゃったんだ」

「へぇ〜良いなぁ
じゃさぁ俺の部屋片付いたら
お前…名前なんてんだ?」

「僕はヤスシ」

「ヤスシかぁ
じゃあヤスだな

俺はショウゴってんだ
だからショウで良いよ」

「そーなんだね
じゃあショウちゃんだね」

「良いよショウで」

「そー?
じゃあショウ」

「おうっ」


これが後に「グロ」を助ける怖い奴だからグレてる「グレ」と呼ばれる男だ


奇しくも僕たちは同じクラスになった
そして僕がイジメられているのを目の当たりにした

ショウはすかさず走り寄りイジメた3人組をわずか数秒でやっつけてしまった

そしたら今度はショウがいない時を狙ってイジメられたけど
学校から帰るといつもどちらかの部屋に居たのでスグにバレてしまう

そして次の日にはショウの鉄拳が飛んだ
そんな事をしていたら不良たちの目に止まったようで
ショウは校舎裏に連れて行かれたけど
全員片付けて戻ってきた

次の週には一年生の番長がやって来た
番長はタイマンで負け知らずだったが
1分と持たなかった

そして更に次の週には二年生の番長ともタイマンを張ったがこれまた1分と持たなかった

多分天性の強さなんだと思う
武道とかやってないって言ってたし

そしてとうとう三年生の番長
よーするに学校で一番強い男が現れた

そして開口一番
「俺はお前如きとタイマンなんてしない
だけど聞いとけ
下手な真似したら一瞬でのすからな」

ショウは何も言わずに総番長に近付いて行き腕をねじ上げた

「イテテテェ
てめぇ何すんだ
下手に出たらちょーしこきやがって」

そう言ってショウの腕をはらい
突進して来た所を右ストレート一発で終わった

総番長はアゴの骨を折ったらしい

コレでもうショウにケンカを打ってくる奴は校内では居なくなった
そして仲良しの僕のことをイジメる奴も誰も居なくなった

そして陰で僕たちのことを
「グロとグレ」と呼んだ

完全に「グリとグラ」のパクリだ

でもショウは別に不良じゃないし自分から悪ぶる事も無いし威圧感で皆んなを圧迫する事もない
普段は普通の生徒だし普通の子だった
メチャクチャ勉強できる訳でも無いし
スポーツもずば抜けてというほどでは無い
程々に上位に居る
そういう感じだった

だから次第に他のクラスメイトとも打ち解け仲良くなったし
僕とも他のクラスメイトは仲良くしてくれるようになった

だから自分の鼻の事も正直に打ち明けられた

今はまだ成長期なので大人になったら鼻を治そうと思っている
出来たらこのアザも何とかしたい

初めて皆んなちゃんと聞いてくれた

そして仲良くなって初めて
「グロとグレ」の話も教えてくれた

そしたらなんだかおかしくなって
ショウと僕は笑い転げてしまったし
グロとかって嫌だったのに
二つくっ付いたらなんだか素敵な響きに感じた
それはショウも同じだったようで
それ以来僕たちコンビは
「グロとグレ」という名がオフィシャルになった


ショウはその後もウワサが流れて
他校の不良たちがケンカしに来た
でもやっぱりショウは瞬殺だった

そして不思議なのがその後はその不良たちと仲良くなるし
何だか僕も混ぜてもらえる

その時にいつもショウは言ってくれた

「こいつ俺の親友のヤスって言うんだ
見た目がこれだから嫌な思いして来てるんだ
だからもし街中で変な奴に絡まれてたら助けてやってほしい」

皆んな快く承諾してくれた

だから僕は堂々と街中も歩けるようになったし
何となくだけど変な目で見る人が減った気がする


最高の3年間だった

ショウとは別の高校になっちゃったけど
家が隣なので夜はだいたい一緒に過ごした

飽きないのかってくらい一緒に居る


しかし別れは突然やって来る
ショウのお父さんはアメリカで仕事をしており
ショウの夢でもある宇宙に関係する仕事をしたいって言ってたのもお父さんの影響だった
お父さんはNASAの職員でお父さんはショウの夢を叶える為にも
一旦は日本に帰ったものの将来の事を考えてアメリカに呼び戻す事になった

ショウは半分は日本に残りたい気持ちだったんだけど
やっぱり自分の夢があるしお父さんと暮らしたいからアメリカに帰る事を選んだ


5年間だったけど
とっても充実した日々をショウは僕に与えてくれた

大人になったらお金を貯めてショウに会いに行こう
そう決心した




ほな!

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