#79 何を伝えるのか、どのように伝えるのか
新卒採用や若い方の中途採用の時に、履歴書や職務経歴書を見ると、
「この暗い世の中を照らす希望の光になり、人々の心に満開の花を咲かせるような働き方をしていきたい。」
「私は『未来への翼』活動を提唱したいです。明るい未来に向かって、みんなが羽ばたけるような社会を目指します。」
というような比喩に満ちたロマンチックな表現、まるでポエムのような文章を書いてくる人がいます。
入社したい気持ちが強くなればなるほど、気持ちが高まってしまい、ついこのような表現をしたくなる気持ちは、とてもわかります。
でも有名なコピーライターやクリエイターで独自の世界観を作り上げた人以外、ビジネスシーンで使うのは難易度が非常に高いので、おすすめしません。
こういう文章を面接官目線で見ると、確実に「人々の心に満開の花を咲かせるような働き方とは、具体的にはどういう事ですか?」と質問します。そして、私の経験上、このように質問をして明確に納得できる回答をした人には残念ながら会ったことがありません。
ロマンチックな表現やポエムのような表現を使う事を否定しているわけではありません。そのような表現を使う人は、その表現に陶酔している事が多く、具体的に何を伝えたいのかが曖昧な事が多いのが問題なのです。
では、どのようにしたらいいのかを紹介します。
■まず「何を伝えるのか」が大事
企業やサービスのブランドをどうするか考える仕事の1つに、魅力的なキャッチフレーズを作る仕事があります。
皆さん、頭に思い浮かぶキャッチフレーズ、どんなものがあるでしょうか?そんなキャッチフレーズ、どんな風に作っていくかご存じですか?
魅力的なキャッチフレーズを作る手順はまず「What to say(何を伝えるのか)」を決めてから「How to say(どのように伝えるのか)」を考えるという順番で作っていきます。
「What to say(何を伝えるのか)」を決めるというのは、すなわち普遍的(=いつでもどこでも誰にでも当てはまる事)に伝えたい事を決めます。
例えば、これから寒くなる時期、おでんがおいしくなる季節が来ますよね?コンビニ各社がおでんのCMのキャッチフレーズを作ろうと考えたとします。まずは普遍的に伝えたい事を決めないといけません。
今年の売りは「おでんがおいしいという事」なのか、「具沢山のおでんを食べる事が楽しい」という事なのか、「ヘルシーな食べ物という事」なのか色々考えられますよね?その中から、まず、ブレない軸となる事、いつでもどこでも誰にでも当てはまる事を決めます。
それが商品開発ではお客様への提供価値になりますし、冒頭の面接のケースで言えば、自分自身の一番の強みやポリシー等、大切にしている事になります。
ですから「何を伝えたいのか」というのは、しっかり考える必要があります。
■次に「どのように伝えるか」を考える
「何を伝えたいのか」が決まってはじめて、次の「How to say(どのように伝えるのか)」という事を考えます。
例えば、先ほどのおでんのケースですが各社「おでんがおいしいという事」を言いたい事の軸にしたとします。
どのようにおいしい事を伝えるか?ちょっと想像してみましょう。
A社は「料理の鉄人、〇〇が監修したおいしいおでんをA社で」
B社は「素材にこだわった、あたたかいおでんをB社で」
C社は「京都の料亭の味を再現!京風おでんはC社で」
というように、どこかで聞いたような感じがしませんか?
このように各社様々な表現を使っていますが、言いたい事は「おでんがおいしい事」なんです。そこはブレてないです。それを興味をもってもらえるようにメッセージを工夫してアピールします。
逆にこの順番を間違えると、ある場面では「健康にいいおでん」とか「業界最安値のおでん」とか言い出して、結局、この商品の良さが何かわからない、コロコロいう事が変わって胡散臭いという事になります。
商品であればお客様に一番売りにしたいポイント、大事にしている事が。面接ならば、面接官に自分の一番の長所や信念が、伝わらないという事になってしまいます。
「何を伝えたいのか」という事を考えてから「どのように伝えるのか」という事を考える理由は、ご理解いただけたでしょうか?
冒頭のようなロマンチックな表現や、ポエムみたいな表現はビジネスシーンで使うのはおすすめしませんと書きましたが、もし使う場合は、必ずその前に「自分が普遍的に伝えたい事、大事にしている信念はこれ!」というのを書く事をおすすめします。