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#67 ダメだと見捨てない

【私の仕事術:❻部下の育成】
誰にでも必ず良いところはあると考え、ダメだと見捨てない

若い頃の私は、とても負けん気が強く、仕事に対して気持ちが入りすぎるが故に、周囲の人を「この人は仕事ができる人、この人は仕事ができない人」と仕事の成果や働きぶりで決めつけ、さもそれがその人の全てのように見るところがある、とても偉そうな人間でした。

今思えば、どこにそんな自信があったのでしょう。若気の至りと言えば聞こえはいいですが、本当に恥ずかしい限りです。若い時にご迷惑をおかけした皆様にはお詫びをしてもしきれません。

そんな私が、20代後半のソニーファイナンス時代に大変お世話になった部長と出会い、まさに恩師と呼べるその上司の言葉で、考えがガラッと変わりました。

その当時、こんな事がありました。

私は恩師のもとでデータベースマーケティングの仕事をしており、SASやClementine(現IBM SPSS Modeler)を使ってデータマイニングの仕事をしていました。

ある日、中途で一人のおじさんが入社してきました。職務経歴書によるとデータ分析のプロでこれまでの経歴を見ても期待が膨らむような能力の持ち主でした。

最初は、知らない事もあったので「なるほど」と思っていたのですが、時間の経過とともに「あれ?」と思う事が増え、その違和感は日に日に増えていきます。そして、ある日ついにこう思ったのです。

「なーんだ、全然ダメだな・・」

データ分析のプロだと聞いていたので仕事をお願いしたのに、期待していたレベルと全然違っており、まったくビジネスセンスがないなと見てしまいました。

私は、がっかりした事もあり、つい恩師にこう言ったのです。

「あの人、全然ダメですね。ちょっと期待しすぎましたかね・・」

すると恩師は頭の中で言い方を整理するように、言葉を選んで私に諭しました。

「言いたい事はわかる。でも、こいつはダメだと見捨てるのはダメなんだよ。ダメだと見捨てるのは簡単だよ?でも、それは上司の怠慢なんだよね。上司は何か良いところ、得意なところを探してあげないと、上司が見捨てたら、味方もいなくなって、かわいそうじゃない。だから私はもっと彼の良さを探すよ。横田さんも将来偉くなった時、これは忘れちゃダメだ」

もともとその上司が私の恩師となったのも、当時、不遇な扱いを受けていた私を見つけて、「彼はデータベースマーケティングが得意だから」と引っ張ってくれたのがきっかけでした。それなのに・・・、「あの人は全然ダメ」とか言った自分こそダメなやつだなと思いました。

そこから恩師がいうように、このおじさんにもいい所があると思い、仕事っぷりを傍からみていました。

そうすると、細かい作業や確認作業など緻密な作業の正確性が高いとか、SQLのプログラムを黙々と書くような仕事をこなし、精度の高いデータを抽出してくれていました。

データベースマーケティングあるあるですが、ある日、抽出プログラムを間違えてしまい、訴求してはいけないお客様に案内をしてしまうミスをしてしまいました。全体の責任ということでチーム全員が残ってトラブルシューティングとし、そのおじさんはプログラムの間違いを探す作業をしてくれました。終電が無くなるほど遅い時間までかかったのに、嫌な顔ひとつせず一緒に作業してくれました。その人はとても優しい人でした。


■時は流れて、今度は自分が部長に

時代は流れて、2018年に自分も部長になって、コールセンターの事務処理グループの一部を見るようになった時のお話です。

20名弱の部下の中に1人、社内でもよく問題を起こすおじさんがいました。

口を開けば屁理屈だったり、会社や社長の批判をし、周囲にも偉そうにするので周りは怖いから従う人、関わりあいたくないと敬遠する人にわかれ、扱いにくい存在でした。

昔の私なら「なんだこいつ!生意気なおっさんだな」と思って、自分の立場を使って、「いいからいう事を聞け」とばかりに更に偉そうにしていたかもしれません。でも、恩師の言葉があったので、私は「この人にも絶対良いところがあるはずだ」と正面から向き合いました。

そのおじさんはとても口が立つので、他のメンバーがいる前でも平気で上司である私を批判してきます。耳には入ってきませんでしたが、当然陰で私の悪口も言っていたことでしょう。

でもそんな事は気にせず、批判は甘んじてうけて「きっと、いいところがあるはずだ」と逃げちゃダメだと偉ぶる事もなく、冷静に話をききました。言い分に耳を傾け、自分でできる事は約束し、望みをすぐに叶えてあげられなくても何をやっているか、他のメンバーがいる前で、なあなあにせず毅然と話をしてきました。

するとそのおじさんも少しずつ態度が変わってきました。もともと仕事に対するプライドがとても高いので、頼んだ仕事は文句を言いながらもしっかりやってくれていました。

それが彼も彼で「部長があそこまでやっているなら、俺もしっかりやらないとな」と粗削りではあったものの、ちょっとずつ変わってきました。文句だったのが提案になり、ありがとうと御礼を言えば「こんなの余裕ですよ」と軽口をたたきますが、彼らしさを出しつつ、出来る事をしっかりしてくれたと思います。

みんなの前で逃げずに何度も腹を割って話をした結果、なんとも言えない絆というか、私の一方的な思いかもしれませんが、私のいう事は聞いてくれるようになった気がして、距離が縮まったかな?と思います。

結局、その後の組織改編で私は彼の上司ではなくなってしまい、それから数か月後、彼も会社を辞めてしまいましたが、周囲から「横田さんの下についてから、あの人、とても変わった」と言ってもらえたのはとても嬉しかったです。


歯向かう部下や生意気な部下、仕事ができない部下など色々な部下がいると思います。自分の思い通りにならないし、面倒見切れないとか、これ以上関わりたくないな等、人間ですから諦めたくもなります。

でも、必ず良いところ、魅力的な所があると考え、その良さ1つでも見つけてあげる事ができれば、部下も変わっていき、良さを伸ばし成長するかもしれないので簡単には見捨てない事を上司は頑張りましょう。

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