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EP.41 激変の社会保障制度 未来を見据えた新チャレンジの背景!

いつもお読み頂きありがとうございます。EP.39 保てなくなったNo.2ポジション 大喧嘩の末の代表就任!から続くエピソードです。こちらもご確認ください。

 組織の再構築に向け、代表に就任。時を同じく翌年2015年は介護業界の大転換期となる介護保険法の改正となりました。現在、一般社団法人日本デイサービス協会の理事や一般社団法人全国介護事業者連盟 東京支部幹事などの活動も頼まれて参加しておりますが、ひとえに今後の社会変化に備えての活動と言っても過言はありません。

 シニアマーケティング事業のきっかけとなった入浴特化型短時間デイサービスとして「お客様の声」を形にした私たちの次なる発展型モデルの挑戦背景をご紹介します。

その前に、制度ビジネスとして私たちの事業のベースとしての介護保険制度について知って頂く必要がありますので記載していきます。



◆介護保険制度の創設背景

 25歳で介護業界に飛び込み、無知・未経験のまま突き進んで12年。組織のTOPに立つことになりました。

 2014年度までは13期連続増収、そして単年度決算として倒産の危機を乗り越え収益をしっかり確保し、最高益を記録しました。

しかし、私の心は全く晴れませんでした。なぜならば、2015年4月に介護保険制度改正が目前に迫っていたからです。私が、代表就任を申し出た理由の一つにはこのことも関わっています。

介護保険制度は、2000年にスタート。その目的は、劇的に増えていく高齢者介護の社会的問題解決の施策として始まりました。
 介護保険制度がスタートする前までは、財源は全額税金で賄われていました。さらに病気やケガで入院した高齢者は治療が済んでも在宅も戻れない実情があり、治療が行われないが入院を続ける社会的入院と呼ばれ、高額な医療費により社会保障費をひっ迫していく状態が問題となっていました。

必ずしも要介護高齢者は、回復していくものではありません。
治療をして回復させることを目的とした「医療」と本人の望む生活を続けていく「介護」は役割が異なり、その支援先を自分で選ぶことができる介護保険制制度が創設されました。(これ以前は措置制度と呼ばれ、支援先、入所施設は行政により割り振られ、自分で選択はできない制度でした)

高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み(介護保険)を創設
1997年 介護保険法成立、2000年 介護保険法施行

【基本的な考え方】
○ 自立支援
 単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする。
○ 利用者本位
 利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度
○ 社会保険方式
 給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用


◆民間企業の参入により社会インフラへ発展

こうして始まった介護保険制度は、広く認知して使ってもらうために民間じ事業者にも開放され、様々な企業が参入していきました。
 現在開始から21年経過し、2000年頃とは社会環境が大分かわっていますが、私が介護業界へ転身した2002年では名だたる大手電機メーカーや通信インフラ企業がCSRの名目で介護事業に参入していました。

 政府も強くPRし、社会インフラ整備に向け家政婦紹介所の家政婦さんがヘルパー(訪問介護員)に、そして看護師の一部がケアマネジャーの資格を持ち在宅介護の大きな柱である訪問介護事業者・居宅介護支援事業者として全国に広がっていきます。とにかく有資格者人材も足りていない状況でしたので、頻回にヘルパー養成講座が開講され、ビジネスチャンスと捉えていた多くの方々が業界に足を踏み入れていきました。

 そんな中、私も無資格・未経験で起業参画する為に職業訓練校にてヘルパー2級(現在の初任者研修相当)の資格を受講し訪問介護事業所がスタートさせます。

当時は、広く認知し使ってもらうことを政府も考えていた為、規制も緩かったですが、それが為に不正を行う事業所も多く社会問題にもなっていました。

 最も記憶に残っているのは、2007年に起こったTVCMも頻繁に行っていた在宅介護サービスの業界最大手であるコ〇ス〇事件です。事業展開を優先したために、有資格者の名義貸しによる認可申請等の法令違反や不正請求、かつ指導改善に不誠実対応したことが大きな理由となり、全社的に認可の取り消しとなり事業継続ができなくなり、解体されてしまいました。

まだ、数事業所しかない無名の私達の会社にも電話でTV取材が入る等、本当にし大きな事件でした。

 コ〇ス〇の事業所で働いているスタッフは、お客様に真剣に向き合い一生懸命仕事しているのを知っていたのでこんな形で終わってしまうのは本当に衝撃でした。(最終的には社会的影響を鑑みて事業分割譲渡となる)

 この辺りから激増した介護事業者に対する指導強化および規制強化および報酬見直し(削減)の流れに入っていきました。この流れは、訪問介護への事業参入に大きな影響を及ぼし、民間事業者は、次なるモデルとして通所介護事業(デイサービス)にビジネスモデルを移していきました。


◆増えすぎた通所介護事業所

 訪問介護事業所は横ばいが続く中、通所介護事業所の開設が急加速していきます。2009年の介護保険改正頃より利用者(お客様)へのケアを手厚く行う目的や間接コストの負担が大きい小規模事業所の報酬が引き上げられていきました。全体の介護報酬としてもプラス3.0%と大幅に引き上げがされました。

※介護保険制度については、3年ごとの報酬改定が行われ、6年毎に大幅な制度の見直しが入ります。2000年に施行された介護保険制度は、2003年、2006年、2009年、2012年、2015年(本エピソード付近)、2018年、2021年と7回の改正が行われています。

 人材のスキルに大きく依存する訪問介護事業と異なり、通所介護事業については施設設備により事業モデルの差別化が図られて行きました。ここまでは1日滞在型デイサービスが主流であった中、お泊り型デイサービス、機能訓練型デイサービス、短時間リハビリ型デイサービスが全国的に展開していきます。私の知る中では、レストランデイサービスと言う、昼食を1流シェフや料理人が振舞うモデルもありました。

 私たちは、こういった流行と言うよりはお客様のニーズから入浴特化型短時間デイサービスを見つけたのですが、ちょうど流行期が重なった為同じような差別化モデルと認識されていきました。

 モデルとしては全国に最大40店舗程度しか作れませんでしたが、他のモデルは、1運営本部で数百店舗なんてのもザラにあり、チェーン本部以外にも独立開業して介護事業に参入する方々も増えまさに開業ラッシュです。

 気が付けば、デイサービス事業所は全国で40,000事業所を超え、介護給付の中でも在宅介護サービスの中でトップ額を占めるようになっていました。

グラフィックス7

この急激な開設で、一部粗雑なサービスによる質の問題やコンプライアンス違反なども比例して増えていき、再び社会問題になっていきます。


◆‐9%、通所介護最大の下げ幅2015年制度改正

 この流れから、自ずと利益が出過ぎていると目をつけられたのが通所介護事業です。その中でも小規模型という定員10名/日の報酬区分については、介護報酬で‐8~9%、介護予防報酬に至っては‐21~22%の大幅な下げ幅となりました・・・。

 利用者の介護度によって収支の影響はわかりますが、私たちのモデルでは最大‐13%程度となり、大打撃を受けることになりました。3月31日と4月1日でお客様数もサービス内容も何も変わらないのに売上-13%!!!
 利益率を考えると一夜で赤字に転落です。もちろん、そんな杜撰な経営はしていませんが、準備できていなかった介護事業者はこの後、撤退していくことになったのは言うまでもありません。

 介護保険改正については、改正の約1年前から本格的な改正検討を行う為に厚生労働省内にて社会保障審議会、介護給付費分科会など有識者による前回改定の検証・検討が話し合われていきます。都度、その内容は開示されていきますのでしっかり情報を掴んでいれば自ずと方向性は見えてきます。

 改正までの3か年だけでなく、政府や厚生労働省、財政面で行けば財務省の方針の確認や各種会議の資料を確認していくと方向性はある程度読み解いていくことが出来ます。制度ビジネスである介護事業において、経営者にとって外せない情報源です。

 財務省は、膨らむ社会保障費の増加幅をコントロールすべく介護報酬の抑制策を常に議論しています。ちょうど2015年改正頃より、要介護1,2の訪問介護サービス(生活援助)と通所介護サービスを総合事業に移行して報酬抑制を図ろうとする議論が継続的にされています。影響が大きすぎると言うことで、現在は見送りが続いていますが決して話として無くなったわけではありません。

 この件については、日本デイサービス協会と調査機関で実態調査が行われております。

 報酬だけではありません。社会インフラを担っている介護事業者に急激な体制変化がおこれば高齢者とそれを支える家族の生活に大きな影響を及ぼすことになります。コロナ禍において、社会全体が体感したであろうその重要性は増すばかりです。

 事業活動とは別に介護現場の声をしっかりと政治に反映させ、現場との乖離を少なくすることを目的に業界団体の仕事にも関わらせてもらっています。劇的に変わることはなくても、少しでも流れを変えられるようにできる活動を続けています。


 こう言った背景から、中長期的に取り組むべきデイサービスモデルの開発に動くことになります。それは、店舗展開を急ぐあまりペンディングしていたニーズに対する新型モデルであり政府の方針にマッチングするデイサービスのカタチとしてプロジェクトを組むことにしました。

中重度者対応入浴特化型短時間デイサービスの誕生については、次のエピソードでご紹介します。

さて、今回の話からどんな気づきがありましたでしょうか?先を見据えて取組をしていくことは、企業にとって最重要取組です。その為の情報収集は欠かせない活動であることは間違いありません。


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