神経質がゆえの悲劇

現代において、「鈍感力」を要求される局面は少なくない。 何事にも鈍感であれば、悩むこと…

神経質がゆえの悲劇

現代において、「鈍感力」を要求される局面は少なくない。 何事にも鈍感であれば、悩むことも少ない。 誰に何を言われても堪えない、感じない、考えない人間は強く動じず壊れない。 それでも、敏感さを捨てたくないと日々悩み苦しんでいる。

最近の記事

映画の感想 - 映画 ◯月◯日、区長になる女。

ずっと観る機会を伺っていた「映画 ◯月◯日、区長になる女。」、ようやく観了(造語)。 本作を通じて初めて知ったのだが、2022 年の杉並区区長選挙で当選したのは、3 期 12 年続いた現職を打ち破った、新人候補者だった。 新人がどうやってそんな偉業を・・・書くと、ネタバレどころの騒ぎではないので伏せておくが、本作はこれまでありそうでなかった選挙もの、それも事前準備に焦点を当てたドキュメンタリー映画である。 ドキュメンタリーなので、作品を通して語りかける力は強い。杉並区は

    • ドラマ感想 - グレイトギフト

      波瑠ちゃんが出ているという理由だけで観はじめたドラマ、「グレイトギフト」。初めはあまり期待していなかったのだが、気がつけば平日夕方のダイジェスト再放送まで録画予約して観るほどにハマっていた。 一見、テレ朝が得意とする医療ドラマのようだが、本筋は推理ものである。物語は、反町隆史が演じる主人公、藤巻が勤める病院に検査入院していた元首相が急死するところから始まる。 病理医である藤巻は、原因究明のための司法解剖の結果、未知の球菌を発見する。その球菌は一定時間が経過すると自然消滅す

      • ドラマ感想 - 居酒屋新幹線 2

        3 月になったと思ったら、大好きなドラマ「居酒屋新幹線 2」が終わってしまった。今期、最も楽しみに観ていたドラマだった。 「俺の仕事は内部監査。真面目にやればやるほど嫌われる、辛い役回りだ。」 眞島秀和が演じる主人公、高宮進のそんな呟きが入る物語の冒頭は、大抵いつも出張先である。進は、出張先でその土地ならではの酒や酒肴を買い揃え、帰りの新幹線で飲み食いすることを「居酒屋新幹線」と呼んでいるのだ。 この手のグルメ系ドラマの例に漏れず、物語は概ね主人公の呟きで展開する。あの

        • ドラマ感想 - おっさんのパンツが何だっていいじゃないか!

          「変わった題名で気になる」 「原田泰造の主役、久しぶり」 それだけで観る気になったドラマ、「おっさんのパンツが何だっていいじゃないか!」略して「おっパン」。 本作は、下着会社が舞台になっているわけではない。また、コメディではあるが社会問題に真剣に向き合う、挑戦的なドラマである。 原田泰造が演じる主人公の沖田誠は、古い価値観に囚われた、所謂「昭和男」の典型である。それゆえ会社では部長職に就いているが部下からの信頼は薄く、家族からも白けられており、息子は長いこと引きこもってし

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          ドラマ感想 - さよならマエストロ 〜父と私のアパッシオナート〜

          久しぶりに芦田愛菜が演技し、主題がクラシックだからというだけで観はじめたドラマ、「さよならマエストロ 〜父と私のアパッシオナート〜」。 正直な感想から言うと、凄まじく酷いドラマだった。 日曜劇場だから、ドラマとしての完成度は高い。主演の西島秀俊を筆頭に宮沢氷魚や新木優子などの人気俳優が脇を固め、石田ゆり子や玉山鉄二、西田敏行といった大物が集い、りんくまちゃん (久間田琳加) や當真あみといった話題性にも事欠かない。 海外帰りの指揮者が解散寸前の地元オーケストラを救うとい

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          映画の感想 - 一月の声に喜びを刻め

          ポスタービジュアルの、あっさん (前田敦子) の美しい横顔が目に止まり、チケットをジャケ買いした。 あっさん主演かと思いきや、四部構成の映画。それぞれに物語が違えば主人公も違う。あっさんは第三部の主人公役で、第四部にも登場した。 物語の展開は、概ねゆっくりで静かだ。 もし円盤化または配信化されたなら、ほとんどのイマドキ消費者は倍速再生を始め、自らのスマホを取り出し弄りたおし、作品をほとんど観ることなく「駄作」とこき下ろすだろう。 だが、登場人物の表情や声量そして間、ちょ

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          漫画の感想 - MF ゴースト

          社会現象すら巻き起こした大ヒット走り屋漫画、「頭文字 D」。 その流れを汲む、同じ作者による「MF ゴースト」。 何話かは逃しているが、第一話から継続して読んでいる。 結論から言うと、残念ながらあまり面白くない。 「頭文字 D」の次回作だから、という過度な期待をいったん捨て去っても面白くない。いや、面白くないだけならまだしも、漫画としてちゃんと描かれていない。 個人的に最も違和感を覚えるのは、この作品における設定や世界観だ。どんな作品でも世界観の構築は大変だが、これさえ

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          ドラマ感想 - ミエリーノ柏木

          ついに入手、「ミエリーノ柏木」Blu-ray BOX。 この 5 年ほどずっと、Amazon のほしい物リストに入っていたこの商品。新品の価格下落にともない中古の値も下がり、ようやく手が出た。 柏木由紀が主演というだけで観はじめたドラマだったが、それまでのドラマのどれにも似ていない新しさと独特の空気感があり、あっという間に魅せられてしまった。 主人公の柏木 (柏木由紀) は、手に触れるとその人の恋愛に関する未来が見える能力の持ち主だ。柏木が従業員として働くカフェは、裏稼

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          都会にある峡谷

          金曜日の、珍しく出社の日。 キッチンカーの出店情報を知らせてくれるアプリ、SHOP STOP が教えてくれたのは、職場から 10 分ほど歩いた場所にある「ヒビコクテラス」。 この日に利用したのは、アジアンごはんのキッチンカー、「es.tokyo」。ナシゴレン、アジアンミートライス、ガパオライスの三種類から選べる。ナシゴレンかガパオか悩んだ末に、その 2 つのハーフ & ハーフにした。どちらかを売るキッチンカーの数あれど、両方となると、過去に経験がない。 ありそうでなかっ

          映画の感想 - ゴールデンカムイ

          本作には正直、あまり期待していなかった。 全話を読了した原作ファンからすれば、山崎賢人が杉元役という違和感は大きかったし、劇場版になると原作の良い場面や展開がバッサリ切られてしまうなんてのは、ほかの作品でさんざん味わってきたからだ。 だからアシリパ役の、青い瞳の山田杏奈ちゃんが見られるだけでいいや、という気持ちで映画館へ向かった。 結論から言うと、かなり良く出来ていて面白かった。原作単行本の第 3 巻までの 20 話を 2 時間に短縮した割には、無理がなかった。日露戦争

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          旅情の泉

          東京駅八重洲口のバスターミナルほど、旅情感に満ちた空間はそうそうない。 たとえば新宿のバスタは、あの建物に入らなければバスや待っている乗客が見えない。だが、ここ八重洲口は東京駅に向かって傍を歩くだけで、旅情感に包まれる。 それは、バス待ちの乗客が抱く、旅へのワクワク感や緊張感のおこぼれなのだ。疲弊した仕事終わりでも、ここを歩くだけでなんとも豊かな気持ちになる。そして、八重洲口を歩く度に「ここからバスに乗って、どこかへ行きたい」と思うようになった。 だから高速バスのチケッ

          映画の感想 - 彼方の閃光

          キービジュアルだけで観ようと決意し、ムビチケをジャケ買いした、「彼方の閃光」。例によって、物語の筋は公式サイトに書かれている範囲に留めておく。 第一部は、視力を失った主人公の光が、自分には見えない世界や色に想いを馳せるところから始まる。光は手術によって視力を取り戻すのだが、その目が色を認識することはなかった。 第二部。美大に入った光は、ふとしたことから東松照明の写真集に感銘を受ける。そして吸い寄せられるように訪れた長崎で出会った人物に共感し、ともに戦争を題材にした映画制作

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          映画の感想 - 正欲

          またも事前情報なしでチケットをジャケ買いした映画、「正欲」。 原作は朝井リョウの大ベストセラー作品らしいが、もちろん読んだことはなく映画の予告編すら観ていない。しかし、大当たりの大満足だった。 誰にも言えない性的指向を持ち、一般人に紛れようと必死で毎日を生きる者、性的なトラウマを抱える者、「普通」からはみ出ることを嫌悪する主人公の検事が関わりあい、これまで見たこともない物語が紡がれていく。 主題がなぜ「性欲」ではなく「正欲」なのか、その理由は登場人物の台詞によってではな

          ドラマ感想 - 泥濘の食卓

          きょんこ(齊藤京子)となのかちゃん(原菜乃華)が出てるだとお!?だったら観るしかないじゃないか! そんな些細なきっかけだったが、なかなかの傑作だった。20 代そこそこの女の子が、妻子持ちの初老オッサンに恋して不倫に浸かるという、ドラマではよくある内容。しかし、物語はむしろ斬新で、ありがちな展開を予想させながら裏切るという、実にニヤリとさせる構成で、その速度は二次関数的に跳ね上がり、一気に最終回まで駆け抜けた。 きょんこの演技力は、これまでのドラマで理解していたつもりだった

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          ドラマ感想 - 何曜日に生まれたの

          今期 (2023 年夏)、最も熱中したドラマ「何曜日に生まれたの」が、ついに最終回を迎えた。 観たら終わってしまう、そんなの嫌だ。だけど、観ないのはもっと嫌なんだ。同枠の前期ドラマ「日曜日の夜ぐらいは...」に続いて、そんな気持ちにさせてくれる、稀有な傑作だった。 正直、ここまで観てきて主人公すいの感情をほぼ理解した自負のある自分は、最終話の開始 10 分ほどで、結末はなんとなく予想できていた。 こう来てこうなってこう見えるけど、実はこうだった。そんでもって、こう来ると

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          映画の感想 - 山女

          山田杏奈ちゃん主演というだけで観に行った、「山女」。 販促の類いは YouTube の予告編と、Twitter のお知らせくらいのもの。だったら、徹底して事前情報を遮断した方が良いと、予告編すら観ずに映画館に向かった。 物語の舞台は、冷害が二年続いた 18 世紀の東北地方。江戸時代は、天明の大飢饉の頃である。 山田杏奈が演じる主人公は、曽祖父が起こした火事のせいで田畑を取り上げられ、汚れ仕事を押し付けられた家に生まれた娘。理由は語られないが母親はおらず、父親と、盲目の弟