都会にある峡谷

金曜日の、珍しく出社の日。

キッチンカーの出店情報を知らせてくれるアプリ、SHOP STOP が教えてくれたのは、職場から 10 分ほど歩いた場所にある「ヒビコクテラス」。

この日に利用したのは、アジアンごはんのキッチンカー、「es.tokyo」。ナシゴレン、アジアンミートライス、ガパオライスの三種類から選べる。ナシゴレンかガパオか悩んだ末に、その 2 つのハーフ & ハーフにした。どちらかを売るキッチンカーの数あれど、両方となると、過去に経験がない。

ありそうでなかった、インドネシア料理ととタイ料理の組み合わせは大正解。風味は異なるのに全く喧嘩しないどころか、とても合う。これはおそらくアレンジャーたる、キッチンカーの店主の手腕だろう。4 種類から 2 つ選べる前菜の、コンポートと生春巻(ベトナム料理)も実によく調和していた。

はたらき方改革が叫ばれて 8 年ほど経っただろうか。自分の職場では、いまだに昼休みにコンビニ弁当を自席で食べながら仕事をしている人が三割ほどいる。

誰が何を食べようが自由だが、昼休み中の仕事はサビ残そのものであり、実に納得いかない。悪貨は良貨を駆逐するのとおり、上司がやっているから部下もそれに倣い、声の小さい立場の弱い人たちもそれに従わざるを得ない。みんなで我慢しよう頑張ろうで不幸になる、この国の縮図がそこにある。

そもそも、人間の集中力がそんなに長く続かないことはとっくに分かっている。そして、新しい考え、画期的な案、解決策というものは仕事をしていない時にこそ閃き、練られ、確立されるものだ。脳に同じことを長時間やらせず、休ませ緩ませ切り替えることが重要なのだ。

冷たい風が吹いていたが、まるで初春のように暖かい陽射しの日だった。冬のどこまでも澄んだ青空に、一年で最も遠くから届き磨かれ研ぎ澄まされた眩しい光線。光そのものは夏よりも弱いのに、はるかに眩しくて上手に目が開かない。

そして、コンクリートとガラスでできた峡谷がそんな冬の光線をいっぱいに浴び反射させ、谷底にいる小さな人間に眩しさを届かせるのだ。

平日の昼間に外に出なければ、本当には感じられないこと。それが、季節の移り変わりなのである。

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