ドラマ感想 - グレイトギフト

波瑠ちゃんが出ているという理由だけで観はじめたドラマ、「グレイトギフト」。初めはあまり期待していなかったのだが、気がつけば平日夕方のダイジェスト再放送まで録画予約して観るほどにハマっていた。

一見、テレ朝が得意とする医療ドラマのようだが、本筋は推理ものである。物語は、反町隆史が演じる主人公、藤巻が勤める病院に検査入院していた元首相が急死するところから始まる。

病理医である藤巻は、原因究明のための司法解剖の結果、未知の球菌を発見する。その球菌は一定時間が経過すると自然消滅する、新しい「殺人球菌」であることが判明し、球菌をめぐって様々な人物の欲望と思惑によって、院の内外で殺人の連鎖が始まってしまう。

本作は「相棒」や「科捜研の女」のような一話完結型ではなく、最終回まで黒幕が分からない作りになっている。もちろん、そのヒントは毎話に散りばめられているので、観察力や推理力のある視聴者であれば、途中で黒幕を割り出すことは可能だ。

個人的には、黒幕が誰かよりも、登場人物の心情や行動の変化に注視した。推理ものだけあって、人物ごとの描写はきめ細かく行われていたし、裏切りや騙し合いもしばしば起こるため、物語の途中で人物がどんなに善人に見えても、最終回までにひっくり返される可能性は大いにあったからだ。

そして、黒幕はともかく終わり方は、なんとなく予想していた。いったんは解決するものの含みを持たせた、しかも続編を匂わせた終わり方だろうと。

結果、黒幕の裏に真の黒幕がちらっと見え、続編も作れそうな終わり方だった。しかしながら、キャストの再集結という理由で非常に困難と予想する。

波瑠ちゃんの役どころは、2020 年「リモラブ」、2021 年「ナイト・ドクター」に続く医師を期待していたが、検査技師だった。しかし彼女には、やはり医療現場がよく似合う。

政治力を遺憾なく発揮する理事長役の佐々木蔵之介、事務長役の筒井道隆ともに、相変わらず唸るほどの演技力そして存在感だった。それに引き換え、第二話まで登場した見取り図・盛山晋太郎の演技はひどく、観ていらなかった。話題作りなのだろうが、演技のド素人を出していい作品じゃあない。

細かい不満はあるものの、別撮りの違和感も他のドラマほど気にならなかったし、事前の期待を超える良作であった。

今期の冬ドラマは豊作だったが、今後は不安要素だらけだ。

ドラマ離れテレビ離れはもちろんのこと、集中力や鑑賞力を持った視聴者の激減に、コロナ禍で醸成された別撮り CG 合成技術が、エンタメ崩壊に拍車をかける。毎週ドラマを楽しみにする習慣も、先細るしかない。

この国の文化は、ほかの誰でもないこの国の消費者と制作者によって、崩壊の一途を辿っている。

木曜ドラマ『グレイトギフト』
https://www.tv-asahi.co.jp/greatgift/

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