映画の感想 - ゴールデンカムイ

本作には正直、あまり期待していなかった。

全話を読了した原作ファンからすれば、山崎賢人が杉元役という違和感は大きかったし、劇場版になると原作の良い場面や展開がバッサリ切られてしまうなんてのは、ほかの作品でさんざん味わってきたからだ。

だからアシリパ役の、青い瞳の山田杏奈ちゃんが見られるだけでいいや、という気持ちで映画館へ向かった。

結論から言うと、かなり良く出来ていて面白かった。原作単行本の第 3 巻までの 20 話を 2 時間に短縮した割には、無理がなかった。日露戦争や第七師団との戦闘も、CG とはいえ迫力があった。

そして、なんといっても青い瞳の杏奈ちゃんに触れないわけにはいかない。

原作のアシリパは 12 歳だから、22 歳の杏奈ちゃんが演じるにはあまりにも無理がある。幼い顔立ちの彼女だが、159cm と意外に高い身長だから、161cm の矢本悠馬が演じる白石と並ぶと、あきらかにデカい。

それでも観終わってみれば、やはり杏奈ちゃんしかいないと確信した。アシリパのおかれた境遇や信念、使命感といった雰囲気を纏うのは、おそらく子役では不可能だ。自分の知っている中では、志田未来ちゃんくらいしか思い当たらない。

また、原作と同じくアイヌの文化や生活を作中で伝えることも怠っていない。そのものをどうにか描けば良いアニメと違い、実写はどこかから借りてくるか、作るしかない。作品のために造ったコタン(村)の建物や小道具を大胆な接写で捉えた画角から、制作者の自信が伝わってくる。特に、衣装の本物感は素晴らしい。

かなりの日数をかけたであろう、北海道ロケの成果も出ている。まだ舗装路も除雪車もなかった時代の、雪が積もった小樽の街の様子は、現代では決して観られぬもの。CG の功労もあろうが、冬ならではの画作りの難しさを感じた。

物語は、原作から大きく逸脱していない、肝心な箇所を割愛していないだけで及第点だろう。ただし、一作目でまだ原作の 3 巻しか消化しておらず、続編が何作まで作られるのか、成長や加齢に伴う俳優の交代はあるのかなど、悩みは尽きない。

それにしても、舘ひろしの存在感と表現力には恐れ入った。スタッフロールを見るまで、舘ひろしだと分からないほどに別人だった。

杏奈ちゃんと舘ひろしのため、そしてちょっと山崎賢人にも期待して次回作を観よう。

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