「地域の元気は、サッカーチーム次第」松本山雅の“裏”新体制発表会の仕掛け人が語る、真の狙いとは?
長野県松本市、塩尻市などをホームタウンに活動するJリーグチーム・松本山雅FC(J2所属)。quod,LLCは同チームの事業PRパートナーを務め、地域やサポーターを盛り上げるさまざまなプロジェクトを展開している。
2021年1月11日、「2021松本山雅FC新体制発表会」をリモート開催した後に、初の試みとして「“裏”新体制発表会」が行われた。
松本市内の喫茶店から生まれ、地域とともに成長してきた同チームだからこそ、ホームタウンのためにできることがある。Jリーグの風物詩ともなっている新体制発表会の“裏”では、2021シーズンの地域との取り組みや、クラブが目指す地域とのこれからの関係性などが発表された。
この取り組みの根幹にあるのは、「スポーツと地域の可能性」。中川が“裏”新体制発表会を手掛けた狙いと、松本山雅×quodの強みやこれからの展望を聞いた。
(写真左)松本山雅FC代表取締役社長・神田氏、(写真右)quod共同代表中川【以下、中川談】
「裏」新体制発表会の狙い
チームが今年の方針を発信する「新体制発表会」は、Jリーグの中の恒例行事であり一大イベントです。
年間を通して最もサポーターやメディアの注目が集まるこのタイミングで、松本山雅は何かメッセージ性のあることをやりたいと考えました。「新体制発表会の存在自体を生かす」ことで注目も集まると思い、あえてその「裏」バージョンを開催しました。
“表”ではサッカークラブとしての体制発表をし、“裏”では地域の一員として取り組んでいる活動を報告するという試み。「サッカーと地域」という今年の方針を伝えるときに、面白くコンテンツ化すれば、協力したいと思ってくれる人も増えるのではと考えました。ただの活動報告では、地域の皆さんも自分ゴトにしづらいですよね。
地域と一緒にやっている、それが上手くいっている、だから今後はこうしていきたい、ということを「新体制」に仕立てて発信することで、地域の皆さんのエネルギーも集まりやすいんじゃないかな。そして、Jリーグの他チームの参考になれば、という願いも込めて。
純粋に、「ネタ」として面白いんじゃないかなと思ったのもあります。
最近のJリーグでは各チーム、運営側もサポーターもさまざまな仕掛けにトライしています。広告代理店やPR会社が真似しようとしてもできないようなことが、チーム発で次々と起きているんです。
サッカークラブだからこそ企業が思いつかないようなことで成功している秘訣は「真面目になりすぎないこと」だというのが、僕なりの分析です。この「“裏”体制発表会」は、僕たちquodも松本山雅のメンバーとして、いかにサポーターや地域の皆さんに面白がってもらえるか、という視点で楽しみながら作り上げたイベントです。
サッカーチームだからこそ、スポーツだからこそ、地域にできることがある。僕たちquodが松本山雅の事業パートナーをさせてもらっているのは、そうした考えからでもあります。
なぜスポーツなのか、サッカーなのか
自分も学生時代にスポーツをやってきたため、スポーツの可能性、エネルギーを感じてきました。試合会場やスタジアムって、多くの人たちがエネルギーを集中させる場だと思うんです。
大きな声を出して応援して、勝ったら自分のことのように嬉しいし、負けたらすごく悔しいし…。見ている側もプレイヤーと同じくらい熱量をもって、これだけ感情移入できるコンテンツって素晴らしいと思います。チームの関係者やサポーターなど多くの人を巻き込んで、心をひとつにするハブになることができるスポーツには、大きな可能性があると考えています。
「心をひとつにする」というのは、ITやデジタルだけでは作れない部分だと思うんです。心を動かされると、身体も動いて行動につながる。何かを作り上げたり変えたりするには、一人ひとりのパワーを集めることが必要です。それができるスポーツには可能性を感じています。
人を突き動かすものって「お金」だけじゃなくなっているなと、若い世代を見ていると一層感じます。夢中になれること、感情的に動ける場所、心から応援したくなる人……。そのすべての源泉になれるのが、スポーツなのかもしれません。
スポーツの中でも特に日本国内のサッカーは、Jリーグ自体が「地域密着」の理念を掲げていることもあり、地域住民の皆さんとのつながりが深いことが特徴です。地域に愛され、地域に根付き、地域とともに成長するチーム運営が目指されています。だからこそ、サッカーには地域や地方都市を元気にしていく大きな可能性があると考えています。
なぜ松本山雅なのか
数あるJリーグチームの中から「松本山雅FC」というチームに出会えたのは、個人的なつながりがきっかけです。実は、松本山雅の監督を務めるのは、quodメンバーである柴田のお父さんなんです。
柴田から柴田峡監督の想いを聞いて、すごく素敵なお父さんだなと思って松本に会いに行きました。そのときに初めて松本山雅の試合を観戦して、quodとしてぜひサポートがしたい!と思うほど心を動かされました。
スタジアムには2万人のサポーター。審判のミスジャッジがあったときに、おじいちゃんもおばあちゃんも、子どもも、障がいのある方も、一斉にブーイングをし始めたシーンが忘れられません。「このエネルギーはすごい」と感じて鳥肌が立ちました。 スポーツが地域に貢献できる可能性はもともと感じていましたが、それを強烈に実感したのはこの瞬間でしたね。
国内のサッカーチームの中でも、松本山雅は地域とチームがすごく近いんです。チームが発足した起源も、松本市内の小さな喫茶店の常連客たちでクラブを結成したことでした。地元のサポーター6人の応援を受けながらJリーグ加入を目指してきた過程があり、地域のサポートを受けながら地域と共に成長してきたチームなんです。
これが「“裏”新体制発表会」にもつながった理由で、チームと地域の距離が近いことが大きな特徴であり、他にない強みだと考えています。選手とチームの存在は、地元の人にとってアイデンティティにもなっているなと感じています。
だからこそ、応援のエネルギーが半端じゃないし、負けたときには地域みんなで自分のことのように落ち込む。地域を元気にするのもヘコませるのも、松本山雅次第なんですよね(笑)。
松本山雅 ✕ quodのタッグ、これからの展望は?
(写真)松本山雅 ✕ quodのチームで
・地域経済への貢献
松本山雅というチームは、地域住民のモチベーションも作れる存在だと思っています。このエネルギーを循環させ、経済に落とし込むことが次のフェーズです。
サッカーチームがきっかけとなり、地元の生産物が地域外でも売れたとか、このお店が有名になったとか……。サッカーに限らず、スポーツクラブが地元経済を元気にしていける可能性は大きいと思っています。他の地域にも参考にしてもらえるような実績をつくっていきたいです。
・強い地域を作る
住民の元気も、経済の活性化も、場所としての魅力も。いろいろなことを松本山雅を起点に生み出し、地域ににスポーツチームが貢献しているという状況を作っていきたいです。
サッカーの場合、自チームの本拠地で行うホームゲームには相手チームのサポーターがたくさんやってきます。サッカーに限って言えば「敵」ですが、地域にとってはありがたい観光客でもあります。そういう存在も、地域のマーケティング、コミュニティの中に入れていきたいと考えています。
(画像)松本山雅 ✕ quodで考える、スポーツチームが地域でつくる循環
スポーツチームが、地域の希望でありながら、地域の循環を作り出していく。
quodとしては、そういうチームの「相棒」でいたいと思っています。僕たちができるのは「発信」していくこと。松本山雅と一緒に企画、発信していくことで「こういうやり方あるんだ」と、日本全国にあるスポーツチームにもヒントにしてほしい。
たくさんのチームが、それぞれの強みを生かした取り組みをしていければ、「スポーツっていいね」「地方って面白いね」となっていけるのではないでしょうか。
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さまざまな企画や発信を通して、quodは地方とスポーツチームのあり方を模索していきます。
現在、松本山雅はシーズン真っ最中。選手の活躍にも、ぜひ注目です。
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